第 7 章 薄翼理論 81
7.7 薄翼の空力特性
以上述べた結果を加え合わせることにより、任意形状の薄翼の空力特性を計算することができる。
dη± dx = dηc
dx ±dηt
dx (7.149)
変数θを使う。
dη
dx(θ) = dηc
dx(θ)±dηt
dx(θ) 0≤θ≤π (7.150)
ここで、符号±は、上面および下面を表す。
フーリエ級数で展開すると dη
dx(θ) =B0 2 +
∑∞ n=1
Bncosnθ±∑∞
n=1
Ansinnθ (7.151)
7.7. 薄翼の空力特性 99 ここで、係数An, Bnはそれぞれ
An = π 2
∫ π 0
dη
dx(θ) sinnθdθ (n= 1,2,· · ·) (7.152) Bn = π
2
∫ π 0
dη
dx(θ) cosnθdθ (n= 0,1,2,· · ·) (7.153) 翼面上の圧力分布は、迎角αを持つ平板の場合を加えて、
Cp=∓2 [(
α−B0 2
) tanθ
2−∑∞
n=1
Bnsinnθ±∑∞
n=1
Ancosnθ ]
(7.154) となる。ここでは、0≤θ ≤πだけを考えている。従って、上の符号は上面を、下の符号は下面を 表す。
揚力係数は
CL= 2πα−(B0+B1)π= 2π (
α−B0+B1 2
)
(7.155) 揚力傾斜(lift slope)は
dCL
dα = 2π (7.156)
一定値となる。
ここで、重要なことは
1. 厚みは何ら揚力には寄与しない(係数Anが入って来ない)。
2. キャンバーが迎角0での揚力や、揚力0での迎角を決定する。ちなみに、揚力0での迎角は α0= B0+B1
2 (7.157)
である。
一方、前縁を基準にしたモーメント係数(頭上げを正とする)は CM =−[2πα−(B0+B1)π]1
4+π
4(B1+B2) =−CL 4 +π
4(B1+B2) (7.158) となる。また、ここでのCLは、平板と反り翼の揚力係数の和である。
このことから
• 厚みは何らモーメントには作用しない。
• モーメントは、1/4弦長に掛かる力と、その点まわりのモーメントから出来ている。
• 1/4弦長は空力中心となり、その点まわりのモーメントは、
CM =π
4(B1+B2) (7.159)
である。
100 第7章 薄翼理論 参考:飛行機の縦安定 飛行機の縦安定とは、重心周りのピッチングモーメントCMの迎角αによ る変化が、ピッチングモーメントの定義として頭上げを正とした場合、
dCM
dα <0 (7.160)
となるように設計することである。第7.6図から、CM = 0になる点(α=αe)をトリム点と呼ぶ。
飛行機はこの状態で安定に飛行することができる。このトリム点は安定平衡点で、例えば、α > αe
になると(ピッチアップ)、CM <0になって、頭下げになり(ピッチダウン)、もとの姿勢に戻る。
逆に、α < αeになると(ピッチダウン)、CM >0になって、頭上げになり(ピッチアップ)、やは りもとの平衡点に戻る。
α
C
Mtrim point
α
e図 7.6: 縦安定
ちなみに、通常、揚力係数CLは、迎角αが大きくなると線形的に大きくなるので、式(7.160)は、
以下のようにも書くことができる。
δCL∼δα → dCM dCL
<0 (7.161)
参考: 3次元翼における揚力傾斜(CLα)
航空機の設計(飛行制御)においては、CLα=dCL/dαは大事な特性量である。つまり、揚力係数そ のものではなく、迎角を少し変えたときに揚力係数がどれだけ変化するかが分かれば、飛行制御の設 計に使用できる。
2次元翼では、理想的には、CLα= 2πであるが、3次元翼になると、この値より、小さくなる。3 次元翼における、CLαの経験式は、例えば、以下のようなものがある。
CLα= 2πAR
2 +
√
4 + (AR)η22β2
(
1 + tan2Λβ2max,t
) (7.162)
ここで、ARはアスペクト比、β=√
1−M2である。また、Λmax,tは、最大厚み位置に関する後退 角である。さらに、ηは翼の効率を表し、
η= Clα
2π/β (7.163)
7.7. 薄翼の空力特性 101 で定義される。Clαは、2次元翼での揚力傾斜である。このηの値は、通常、η= 0.95∼1.0で近似 される。
なお、このような揚力傾斜(lift slope)CLαは空力微係数(aerodynamic derivatives)と呼ばれる。3 次元の場合、横すべり角βに関するヨーイングモーメント傾斜Cnβは、横方向の安定性には重要な 役割を演じる。Cnβ >0の場合、横すべり角βが大きくなると、その角度を益々大きくする方向の モーメントが発生し不安定になる。その意味では、Cnβ<0となるように設計すべきである。
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