第 3 章 円柱周りの流れ 37
3.4 一様中に置かれた円柱周りの流れ
U
図3.2: 物体の運動により誘起される周りの流れ
めると、2重吹出し(2重吹き出しの軸はx軸の負の方向)が作り出す流れと同じになる。円柱の進 む側の物体表面付近では、流れは進行方向に押しやられ、逆に、後ろ側では、円柱を追いかけるよう
に流れる(図(3.2)参照)。秋や冬に落ち葉の広がった道路の上を自動車が走るときに、落ち葉が自動
車と一緒にその後を追って行くのが観察されるのはまさにこの現象の現れである。
2重吹出しの作る複素速度ポテンシャルは、一般的には式(2.39)より W =µ
π 1
z (3.30)
と書ける。したがって、式(3.29)と式(3.30)を比較すると µ
π =a2U (3.31)
となる。つまり、円柱流れの場合、二重吹出しの強さは
µ=πa2U (3.32)
に相当する。
3.4 一様中に置かれた円柱周りの流れ
今までは、円柱が動くのを外から見ていた。ここでは、円柱に乗って周りの流れを見ることを考え る。これは、風洞試験のように、円柱が静止していて、それに一様流が当たるのと同じ流れになる。
ψ
= 0ψ
= 0ψ
= 0図 3.3: 一様流中にある円柱周りの流れの流線
42 第3章 円柱周りの流れ 複素速度ポテンシャルW を用いると、この流れは簡単に表すことができる。つまり、先ほど求め
た、式(3.29)に一様流の複素速度ポテンシャル(U z)を加えるだけでよい。
W =U z+a2U
z (3.33)
この式に、z=reiθを代入して、W =ϕ+iψを考慮すると、一様流中に置かれた円柱周りの流れに 対する、ψおよびϕは
ϕ=U (
r+a2 r
)
cosθ, ψ=U (
r−a2 r
)
sinθ (3.34)
となる。
式(3.34)を見ると、ψ= 0となる流線は、
r=a および θ= 0, π (3.35)
であることが分かる。
円柱表面での流れの速度は、円柱自体は動いていないので、円柱に接する方向の成分しか存在し ない。
(vθ)r=a= (1
r
∂ϕ
∂θ )
r=a
=−2Usinθ (3.36)
ここで、注意することは最後の式においてマイナス符号がついていることである。この理由は、偏角
(argument)θを後縁からの角度として定義しているため(極座標ではこの取り方が普通)、θの増え
る方向と流れの速度の向きが逆になっているからである。
v
θθ x
r
0
図 3.4: 偏角θの定義
この式から、θ=π/2で、つまり、一様流に対して物体が一番張り出したところで、速度は一様流 の速度の2倍になる。ちなみに、球の場合には、3/2倍である。3次元物体では周方向に流体エレメ ントが変形できるために、速度増加は少なくなる。
圧力係数cpは、局所の圧力pと一様流の圧力p∞との差を動圧で無次元化し、ベルヌーイの関係 式を使うと得られる。
cp≡ p−p∞
1
2ρU2 = 1−(vθ U
)2
= 1−4 sin2θ (3.37)
3.4. 一様中に置かれた円柱周りの流れ 43 となる。
この式から、澱み点のθ= 0(後縁)およびθ=π(前縁)で、cp= 1となり、θ=π/2あるいは、
θ= 3π/2で、−3の負圧となる。この圧力分布を図(3.5)に示す。この分布は、テキスト「粘性流体
力学」の第3章3.6.3項の「円柱周りの剥離」においても参照されている。
1.0
1.0
0.5 2.0 2.5 3.0
-2.0 -1.0
1.5 -3.0
0.0
0.0
θ Cp
図 3.5: 一様流中の円柱周りの圧力分布
補足: 球まわりの流れ
球まわりの流れは、球座標(r, θ, ϕ)で書かれたラプラス方程式(ポテンシャル流)
∆Φ = 0 (3.38)
を満たし、ここで、微分演算子∆は、
∆ =∇2= 1 r2
∂
∂r (
r2 ∂
∂r )
+ 1
r2sinθ
∂
∂θ (
sinθ ∂
∂θ )
+ 1
r2sin2θ
∂2
∂ϕ2 (3.39)
と表せる。速度ポテンシャルΦは
Φ(r, θ) =U (
x+ a3 2r2cosθ
)
(3.40) となる。ここで、xは、一様流Uの吹く方向である。一様流を含む子午面を考えると
Φ(r, θ) =U (
1 + a3 2r3
)
rcosθ (3.41)
となる。この子午面(r, θ)は、円柱周りの流れの場合(第3.1図)と同じである。
速度成分は
vr = ∂Φ
∂r =U (
1−a3 r3
)
cosθ (3.42)
vθ = 1 r
∂Φ
∂θ =−U (
1 + a3 2r3
)
sinθ (3.43)
従って、球の表面での速度は
(vθ)r=a =−3
2Usinθ (3.44)
44 第3章 円柱周りの流れ となる。この速度を使って、圧力係数は
cp= 1−9
4sin2θ (3.45)
となる。つまり、最小圧力は、Cp=−5/4である。円柱の場合のCp=−3ほどは下がらない。
(問題)式(1.78)を用いて、3次元の場合の2重吹き出しが作る速度ポテンシャルを誘導しなさい。
(ヒント)(x, y, z) = (−a,0,0)に吹き出しが、(a,0,0)に吸い込みがあるとした場合の速度ポテンシャ ルにおいてa→0にする。
ψ= 0
ψ= 0
bÝ_
Γ= 0 Ìê
ψ= 0
ψ= 0
bÝ_
Γ< 4ÎaU Ìê
-図 3.6: 円柱周りに循環が作用する場合(循環が小さい場合)