第 5 章 ブラシウスの力およびモーメントの公式 65
5.3 クッタ・ジューコフスキーの定理
つまり、Fx−iFyのところに、前述の力に関するBlasiusの式を用いれば、
M =Re [
i×iρ 2 I
Γ
(dW dz
)2
zdz ]
(5.25) 係数部分を外に出すと
M =−ρ 2Re
[I
Γ
(dW dz
)2
zdz ]
(5.26) 原点回りではなく、z0回りのモーメントであれば
M =−ρ 2Re
[I
Γ
(dW dz
)2
(z−z0)dz ]
(5.27) となる。
(参考2) モーメント式の別の誘導法(2)
より直接的には、モーメントの腕の長さ×力を計算してみる。
δM˜ ={(x−x0) +i(y−y0)} × {δFx−iδFy} (5.28) この式を展開すると、
δM˜ = (x−x0)δFx+ (y−y0)δFy+i{−(x−x0)δFy+ (y−y0)δFx} (5.29) となる。これを見ると、この虚部がまさに、式(5.15)に対応している。より厳密に言えば、モーメ ントδMは、
δM=−Im {
δM˜ }
=Re {
i×δM˜ }
(5.30) である。この関係の基づいて、上述の力δFのところに、式(5.12)から得られる以下の式を代入すれ ば、モーメントの式が得られる。
δFx−iδFy =iρ 2
(dW dz
)2
dz (5.31)
5.3 クッタ・ジューコフスキーの定理
これは一様流中に置かれた物体周りに働く力(例えば空気力)を求める公式で、大変重要である。
共役複素速度dW/dzを以下のように展開する。
dW
dz =a0+a1
z +a2
z2 +a3
z3 +· · · (5.32) (参考) ローラン展開(Laurent expansion)とは、テーラー展開の特異性(singular)を含んだ場合へ の拡張(一般化)である。関数f(z)を点aのまわりに展開すると
f(z) =
∑∞ n=−∞
cn(z−a)n (5.33)
70 第5章 ブラシウスの力およびモーメントの公式 ここで、係数cnは
cn = 1 2πi
∫
c
f(ζ)
(ζ−1)n+1dζ (5.34)
(了)
式(5.32)を見ると、無限遠方で、つまり、z→ ∞で、一定値a0になることが分かる。それは、取
りも直さず、一様流であるので、
a0=U∞e−iα (5.35)
次に、物体を取り囲む任意の閉曲線Γに沿う積分を実行する。
I
Γ
dW dz dz=
I
(u−iv)(dx+idy) = I
(udx+vdy) +i I
(udy−vdx) (5.36) この右辺第2項は、物体表面から検査面内に流体が噴出することがなければ、任意の経路で
I
udy−vdx= I
V⃗ ·⃗nds= 0 (5.37)
となる。ここで、V⃗ = (u, v)、また⃗nは経路に垂直方向の単位ベクトルである。これは、この閉じた 経路に入ってきた流れは、必ず出て行くことを意味している(流量の保存)。出入りのトータルはゼ ロになる。当然の事ながら、この積分経路は、物体表面に沿う経路でも成立する。その時は、その経 路のどの点でも流れの出入りはない。
以上のことより、左辺の積分値は、循環Γの定義式そのものである。式(5.36)および式(5.37)
より I
dW dz dz=
I
(udx+vdy) = I
V⃗ ·d⃗s= Γ (5.38)
(参考)
udy−vdx=V⃗ ·⃗nds=V⃗ ·(d⃗s×⃗k) ここで、⃗kは、紙面に垂直方向(手前方向)の単位ベクトルである。(了)
一方、複素積分の留数定理(Residue Theorem)より、式(5.32)を一周積分すると、
I dW
dz dz= 2πia1 (5.39)
となる(ここで、a1は関数dW/dzのz= 0における留数である)。
従って、係数a1が以下のように決定される。
2πia1= Γ → a1=−i Γ
2π (5.40)
次に、式(5.32)に対してBlasiusの力の公式を適用する。
Fx−iFy=|F|e−iβ = iρ 2
I (dW dz
)2
dz
5.3. クッタ・ジューコフスキーの定理 71
= iρ 2
I ( a0+a1
z +a2
z2 +· · ·)2
dz
= 2πi(2a0a1)
= −2ρπU∞e−iα (
−i Γ 2π
)
(5.41) 従って
Fx−iFy=|F|e−iβ=−ρU∞Γe−i(α+π/2) (5.42) ここで通常はΓ<0である。この式をクッタ・ジューコフスキー(Kutta-Joukovski)の定理と呼ぶ。
Kutta(Germany)が1902年に、Joukovski(Russia)が1906年にそれぞれ別々に誘導した。
以上まとめると、作用する力の絶対値|F|と、その角度βは
|F|=−ρU∞Γ, β=α+π
2 (5.43)
となる。
7п ǩ
ǩ (
図 5.4: 翼に発生する力
つまり、物体に作用する力は、
|F|=−ρU∞Γ (5.44)
で、その方向は、一様流に直交する。つまり、この力は揚力に相当し、揚力Lが発生することにな る(揚力の定義は一様流に垂直な力)。その結果、抗力Dは0となる(抗力の定義は一様流の方向の 力)。つまり、
L=−ρU∞Γ, D= 0 (5.45)
である。
(注意)揚力(lift)とは一様流に垂直方向の力であり、抗力(drag)とは一様流に垂直方向の力である。
一様流の方向の力の成分は生じないこと、つまり、抗力が0であることは、現実の世界の話と異な る。これをダランベールの背理(d’Alembert’s paradox)と呼ぶ。
式(5.32)の係数a0, a1にそれぞれ式(5.35)と式(5.40)を代入すると dW
dz =U∞e−iα−iΓ 2π
1
z (5.46)
これを積分すると
W =U∞e−iαz−iΓ
2πlnz (5.47)
72 第5章 ブラシウスの力およびモーメントの公式
Γ
α U
図5.5: 翼を一本の渦で近似
この式の右辺第1項は一様流(uniform flow)で、第2項は渦(vortex)である。この式の解釈は、遠 くから見ると、翼の影響は1本の渦で表すことができる、あるいは置き換えられるということであ る。この渦は翼に固定されているので、固定渦(bound vortex)と呼ばれる。
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