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2.10

3歳児における父子と母子の遊びタイプの比較 41

Highタイプは,H−H−Hタイプと同様に養育態度が柔軟 であったことと比較すると,同じLimitHighタイプと いっても,母親と父親とでは日常の養育態度との関連に おいても違いが明らかであった。

5.父親と母親のタイプの組み合わせによる子どもの 感情統制の違い

父親と母親のタイプの組み合わせについて以上の結果 を総合すると,父親のL−L−Lタイプと母親のLimitHigh タイプの組み合わせでは,父親から子どもへの育児への コ ミ ッ ト メ ン ト が 消 極 的 で , さ ら に 柔 軟 な 対 応 が 少 な く,母親は養育態度の硬さが顕著であり,子どもへの影 響が懸念されたが,父親・母親のH−H−Hタイプ同士の 組み合わせは,いずれも日常の養育態度が良好であると 考えられた。そこでL−L−Lタイプの父親とLimitHigh タイプの母親をもつ子どもW=7)とどちらもH−H−H タイプの子どもW=13)について,42ケ月(3歳半)時 の集団場面での情緒発達に関する評定値を用いて比較し た。その結果,他児とのトラブル時に自分で立ち直るこ とができる程度,つまりトラブル時の感情の統制につい て,中央値によるメディアン検定を行った。L−L−Lタ イプとLimitHighタイプの父母の組み合わせ(平均2.43

〔SD0.53〕)は,どちらもH−H−Hタイプの組み合わせ (平均3.00〔SD0.58〕)よりも有意に中央値よりも低得点 を示した対象児が多かった(X2(1,jV=20)=4.03,

'<、05)。つまり,親子遊びにおいて父親が「子どもの自

発 性の尊重」「親の適切な構造化と限界設定」「敏感性」

の3尺度とも低くかつ母親が「親の適切な構造化と限界 設定」のみ高いタイプの組み合わせの場合,集団場面に おいてトラブルが起こったときに子どもの感 情の統制が 低くなるという関連が示唆された。

考 察

本研究では,親子遊びの観察において,「子どもの自 発性の尊重」「親の適切な構造化と限界設定」「敏感性」

(Sensitivity)を指標として用い,母子だけでなく,父子

も対象として遊びの文脈に合わせて行動評定を行った。

各評定値を単独で比較したところ,いずれにも父母によ る違いがみられなかったことは,本研究のような遊び場 面を設定する場合に,子どもとの相互作用を観察する適

切な指標であったことが示されたものと考えられる。

さらに評定尺度の高低の組み合わせにより,遊びタイ

プを仮定し,父母を比較してみたところ,タイプの度数

分布,養育態度との関連において父母の違いが明らかに なった。つまり,各評定値を単独で用いるよりも,評定 尺度の組み合わせによる遊びタイプを設定することで,

父母の子どもへの働きかけの違い,遊び行動と養育態度 との関連'性の違いが見えやすくなった。さらに,父母の 遊びタイプを組み合わせて3歳児の感情の統制について

比較したところ,両親が「子どもの自発性の尊重」「親の 適切な構造化と限界設定」「敏感性」の3尺度とも高いタ

イプの子どもは,L−L−Lタイプの父親とLimitHighタ

イプの母親をもつ子どもより,トラブル時の感,情の統制 が相対的に高いことが示唆された。したがって親子遊び における行動の観察評定をアセスメントとして用いるこ とによって,父母の養育態度のあり方や3歳児の感情の 統制の程度について,なんらかの支援につながっていく 可能性が示唆される。

1.親子遊び場面の行動評定と他の変数との関連性 遊び場面では,子どもの月齢が高いほど,きょうだい 順 位 が 第 2 子 , 第 3 子 で あ る ほ ど 母 親 は 子 ど も の 自 発 性 を尊重することが示され,子どもの属 性によって母親の かかわり方は異なるという結果であったが,今回の場面 設定は,初めての場所であまり日常的に見慣れないおも ちゃを使っての遊びであったために,子どもの月齢が低 いほど,きょうだい順位が高いほど,子ども自身の動機 や遊びの意図を尊重する,といったかかわりよりも,母 親の方から遊びの方向づけをすることが多かったものと 考えられる。日常的に子どもとかかわることが多い養育 者の場合,子どもの月齢や体験の蓄積が小さいと,初め ての場所で緊張をほぐすための働きかけとして,「…が あるよ」「…してみようよ」といった母親主導のはたらき かけが多くなることも考えられる。父親の場合は,同じ ように緊張する場面であったと考えられるものの,子ど もの属 性,自身の勤務時間,子どもと一緒にとる夕食の

回数との相関はみられなかった。したがって父親の遊び 行動は,子どもの属性や日常かかわっている時間などに

よる影響'性はきわめて小さいと推測される。

2.父子遊びと母子遊びタイプの違い

父子,母子遊びの各評定値の平均値には有意差はな かったが,行動評定を高低群にわけその組み合わせに

よって,①H−H−H,②L‑L‑L,③LimitHigh,④

LimitLowの4タイプに分類すると,父子,母子遊びの

分布には統計的に有意な差がみられ,父親では,子ども

の反応を見ながら親主導・子どもの自発 性のバランスを うまく保ちながら,適切にかかわるような遊びを展開し ているH−H−Hタイプが多かった。母親では,子どもの 自発性や反応よりも母親主導の遊びを展開していく,

LimitHighタイプが多くなっていた。

親子遊びは実験室で行われ,しかも一般的な家庭には ないおもちゃを使って遊ぶ場面であった。親子2人だけ で,初めての場所で遊ぶという非日常的なものであり,

各親子にとって緊張が高い状態であったと推測される が,父子と母子遊びにみられたタイプの分布の違いは,

このような初めての場面における対応が父親と母親とで は異なることを反映している。母親は場面に対する子ど もの緊張をほぐすために主導権をもつ働きかけが多くな

42 発 達 心 理 学 研 究 第 1 8 巻 第 1 号

るのではないかと推察される。Clarke‑Stewart(1980/

1986)は,自然場面の観察において,遊びのスタイルに 父母の違いがみられたとしているが,本研究では親子遊 びタイプの分布に違いがみられ,今後さらに父母の遊び スタイルについて研究する必要性を示唆したものといえ よう。父親は,このような親子遊びの機会があれば,よ り積極的に子どもとかかわっていくものと考えられる。

3.父子・母子遊びタイプによる養育態度の特徴

「子どもの自発性の尊重」「親の適切な構造化と限界設 定」「敏感 性」の評定がいずれも低いL−L−Lタイプの父 親は,子どもの行動やコミュニケーションに応答するか かわりが低く,子どもの自発性を尊重する程度や場面の 構造化がうまくいかない遊びを展開している。さらに,

養育態度に関しては消極的にかかわり,子どもに合わせ た柔軟なかかわりがとれないと答えられており,子ども にかかわることに苦手意識をもってしまっているのでは ないかと推測される。対照的にいずれも高いH−H−Hタ イプの父親は,子どもに積極的にかかわり,状況に合わ せて柔軟に対応していると自己評価し,子どもへの働き

かけに効力感をもっている父親と言えよう。LimitHigh

とLimitLowタイプの父親は,「子どもの自発性の尊重」

「親の適切な構造化と限界設定」「敏感性」の3側面のう ちいずれかが高く,日常の養育態度において子どもの状 況に合わせて柔軟に対応できていると答えている。

本研究では,父子遊びを観察する際に,「子どもの自 発性の尊重」「親の適切な構造化と限界設定」「敏感性」

との組み合わせと養育態度の自己評価とが関連性をもつ ことが示された。

一方母親の場合は,LimitHighタイプは,H−H−Hタ イプよりも養育行動の硬さが有意に高かった。母親の場 合,「親の適切な構造化と限界設定」が,「子どもの自発 性の尊重」「敏感性」とバランスが保てない時には,日常 の養育態度で硬さが顕著になると推測される。つまり,

母子遊び場面で「親の適切な構造化と限界設定」が強く,

「子どもの自発性の尊重」「敏感性」が相対的に弱くなっ てしまう傾向がみられるケースでは,子どもに対する許

容範囲の狭さや硬さが日常の養育態度においてもみられ ることが推測される。

全体の中でLimitHighタイプの占める割合は,母親の 方が高かったので,母親に特徴的なタイプと捉えられ

る。母親は父親よりも,実験室での新奇の遊びにおいて

は,親の限界設定や親主導が目立つスタイルをとり,責 任を果たそうとしがちなのかもしれない。したがって,

LimitHighタイプの母親の場合には,遊びの楽しさや子 どもの自発'性の尊重や子どもの意思,感情,表情を読み とることなど,子どもに視点をおいた介入が必要になる と考えられる。

4.父子遊びと母子遊びタイプの比較

これまで述べてきたことから,本研究では,父子遊び と母子遊びの違いは,LimitHighタイプに特徴的にあら われ,父親では養育態度が柔軟であり,母親では養育態 度が硬いことが明らかになった。つまり,親子遊びにお ける「親の適切な構造化と限界設定」は,子どもとの遊 びをリードし,親からのはたらきかけが子どもに効果を 持っているかどうかを評定する観点であるが,父親と母 親の日常の養育態度が逆の機能を示していることがほぼ 明らかにされ.母親の場合は「子どもの自発性の尊重」

「敏感性」とのバランスを高く維持することが重要であ ることが明らかになった。

5.父母のタイプの組み合わせによる子どもの発達 本研究で得られた結果を父母の相補性の視点から捉え てみると,父親のL−L−Lと母親のLimitHighタイプの 組み合わせは,親子遊び,日常の養育態度において子ど もに及ぼす影響が懸念される組み合わせである。どちら もH−H−Hタイプの組み合わせと比較してみると,42ケ 月時点の集団場面において,L−L−Lタイプの父親と LimitHighタイプの母親の組み合わせである3歳児の方 が,トラブル時の感情の統制がより低くなる傾向が見出 された。Sroufe(1996)は,この時期の子どもの課題は,

感情を直接的に表出すること,必要なときに自分でコン トロールし調整することであり,そのために親には,子

どもの状況に応じた役割が求められると述べている。両 親どちらもH−H−H,父親が母親を補完するタイプ,母 親が父親を補完するタイプであれば,感情を直接的に表

出したり,必要なときに自分でコントロールし調整する ような幼児期の課題をうまく達成することが可能になる であろう。親子遊びやコミュニケーションが豊かである

ことは発達にとって大切なことと考えられるが,父親 は。母親を間接的に支えるばかりでなく,3歳児に直接

的にかかわる必要が示された。

6.今後の課題

本研究では,父子,母子の遊びを観察し行動評定を行 い,組み合わせによる4タイプを導き出した。観察手続

きでは,父親と母親を同じように評定するために,実験 室に遊び場面を設定し,問題解決にいたる場面として全

体のストーリーから解釈することにした。考察5.で述

べたようにこの3尺度は,Sroufe(1996)のいう感情を 直接的に表出すること,必要なときに自分でコントロー ルし調整するという幼児期の課題を達成するために,親 の役割を捉えるのに適していると考えられる。観察評定 の精度を上げるためのトレーニングに時間は要するが,

遊び過程をこの3尺度で評定しタイプにわけることで,

親のかかわりがわかりやすく,養育態度についてのアド バイスにつなげることが可能になる。両親どちらもH−

H−Hタイプであれば,子どもの感情表出や,必要なと

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