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2. 葉片前処理法の開発と測定条件の決定
多点数の材料を扱うという前提条件を満たすために測定前日に葉身を園場か ら採取し、 葉片を作成した後に一定の環境条件下で1日間保存するという前処
理方法を考えた。 すなわち、 葉身を採取後ただちに葉片を打ちぬいてシ ャーレ 内の蒸留水に浮かべ、 光照度4万ル yクス、 照明が午前6時から午後8時、 思 温が280Cで夜温が220Cの人工気象室で24時間インキュベートする葉片前処理方 法は、 午前9時から午後5時までの長い時聞にわたり安定して高い酸素放出量 をもたらすことがわかった。 また、 この前処理を行ったほうが当日葉身を採取 し葉片を作成するよりも高く安定した放出量になることを明らかにした。 1日 間の測定値の変動係数の変異は12.6 %から23.7 %であり、 この値は他の農業形 質の変動係数の大きさ( 1穂籾数: 15.4% ; 8.5%、 穏数: 23.8% ; 14.4%、 穂重
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15. 0 % など)と比べるとほぼ同程度の大きさであり、 酸素電極法による酸素 放出量は光合成能力の遺伝分析に十分に適用できる精度であるといえる。 これ までの酸素電極法によるイネ光合成能力の測定では本論文のような葉片前処理 方法は行われていない。 この前処理方法の開発こそ実験精度を向上させ、 多点 数測定を可能とする重要な点であった。 これにより以下の遺伝変異の探索および遺伝様式の解明の実験に進むことができた。
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光合成能力のイネ種内変異について光合成能力を改良するためには、 イネ種内における光合成能力の遺伝変異を 明らかにすることがまず重要である。
すでに炭酸ガス交換速度でみたイネの光合成能力の最高値/最低値比として
1. 61 (村田1957)、 1.70 (秋田1980)、 1. 80 (Anonymous 1968)が報告され ているが、 今回、 酸素放出量で光合成能力の種内変異を調べたところ、 アジア 栽培イネには最高値/最低値比が1.7 9という大きな変異があることが明らかに なった。 この変異の大きさは、 本実験で供試した材料がアジア各地から広く収 集された品種であり、 供試数も多く、 アジア栽培イネの遺伝的多様性を網羅し て選ばれたためであろう。 この最高値/最低値比はアジア栽培イネにおける光 合成能力の遺伝的変異の程度を示すと考えてよいであろう。 この変異の大きさ
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から考えてイネ種内の高放出量品種を利用して高能率光合成系統を作出できる 可能性があると判断した。 また、 突然、変異処理によって原品種の酸素放出量よ り150%も増加した放出量を持つ系統が得られており、 在来品種のみでなく突然、
変異系統を高能率光合成系統作出のための遺伝資源として利用できると考えら れる。
4. イネ光合成能力の遺伝的分化につい て
栽培イネの大 多数を構成するアジア栽培イネ(立工正三豆s a t i v a L.) ,こはイン ディ力、 ジャポニカという亜種レベルでの分化があり、 各地にさ まざまな品種 が存在する。 これまで、 光合成能力のイネ品種群における変異を研究した例は 少ない。 鮫島(1985)は炭素同位体分別能を測定し、 ジャポニ力、 ジャパニカ 品種群がインディ力、 シニカ品種群より分別能が弱いことを報告した。 また、
Cook and Evans (1983)はジャパニカ品種群が炭酸ガス交換速度が他の品種群 より低いことを報告した。 異なる光合成測定装置を用い たものの、 本実験結果 は、 ジャパニカ品種群の光合成能力が4品種群の中でもっとも低い点で、 Cook and Evans (1983)の結果と一致した。 鮫島(1985)の実験でも光合成能力の 品種群間差異は観察されてい る。
以上から、 アジア栽培イネの光合成能力には品種群でも差があることが明ら かになり、 今後、 高能率光合成能力イネ系統の作出にあたってその遺伝資源と して有用な品種群を特定することができた。
5. 多収性イネ育種の方向
イネの多収性品種の開発は育種目標の大きな柱であり、 これまで日本、 1RR 1、
韓国などでは草型育種 (角田1964)といわれる群落構造の改善により多収化 が追及されてきた。 その改善にあたって半倭性遺伝子をもっ日本の在来品種十
石や中国の在来品種低脚烏尖が果たした役割は大きいとされる(菊池ら 1985)。
十石の半媛性遺伝子を導入して育成されたホウ ヨ夕 、 シラヌイ、 コクマサリが 短稗で耐倒伏性をもち九州の収量水準をひき上げた例 (岡田ら1967)、 低脚 烏尖のもつ半綾性遺伝子を導入して育成された1RR 1の品種 1R 8が東南アジア各 国の収量を飛躍的に向上させた例(吉田1976)、 韓国での統一系品種による 収量性の顕著な増大(金1979、 Chung and Heu 1980)は有名である。
わが国のイネ育種では穂数型品種の育成によってシンク容量を増やしたが、
これを一層増加させるため現在わが国ではインディカ品種から大きなシンク容 量(総籾数x 1籾重〉を日本品種にとり入れようとしている。 穂重型で半媛性 の品種が育成された場合lこはソース量(葉面積×葉の光合成能力)の不足が問
題となり、 質的な改良、 すなわち、 単位葉面積あたり光合成能力を遺伝的に向 上させる必要がでてくると考える。 今後さらに多収性育種を推進するためには、
群落構造の改善による群落光合成能力の改良のみならず、 光合成能力の向上に も重点がおかれるべきである。 その理由は、 韓国で育成された多収品種密陽23 守、 水原258号などは極短稗で幅の広い直立葉が空間的に効率よく配置され、
多収のための理想、草型を有しており(武田ら1984)、 草型改良の点では限界 に来ていると考えるからである。