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光合成能力の遺伝子解析について

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6. 光合成能力の遺伝子解析について

十石の半媛性遺伝子を導入して育成されたホウ ヨ夕 、 シラヌイ、 コクマサリが 短稗で耐倒伏性をもち九州の収量水準をひき上げた例 (岡田ら1967)、 低脚 烏尖のもつ半綾性遺伝子を導入して育成された1RR 1の品種 1R 8が東南アジア各 国の収量を飛躍的に向上させた例(吉田1976)、 韓国での統一系品種による 収量性の顕著な増大(金1979、 Chung and Heu 1980)は有名である。

わが国のイネ育種では穂数型品種の育成によってシンク容量を増やしたが、

これを一層増加させるため現在わが国ではインディカ品種から大きなシンク容 量(総籾数x 1籾重〉を日本品種にとり入れようとしている。 穂重型で半媛性 の品種が育成された場合lこはソース量(葉面積×葉の光合成能力)の不足が問

題となり、 質的な改良、 すなわち、 単位葉面積あたり光合成能力を遺伝的に向 上させる必要がでてくると考える。 今後さらに多収性育種を推進するためには、

群落構造の改善による群落光合成能力の改良のみならず、 光合成能力の向上に も重点がおかれるべきである。 その理由は、 韓国で育成された多収品種密陽23 守、 水原258号などは極短稗で幅の広い直立葉が空間的に効率よく配置され、

多収のための理想、草型を有しており(武田ら1984)、 草型改良の点では限界 に来ていると考えるからである。

結論した。 さらに、 F2個体の酸素放出量とその個体に由来するF3系統の系統内 平均酸素放出量との聞には正の相関があり、 遺伝力が高かった。 このことはF2

雑種集団において高放出量個体を選抜して後代に高放出量系統を作出できるこ とを示す。 また、 高放出量は劣性遺伝子で支配されるので短期間に固定系統を

確立できると考える。

以上の結果は品種閣の組合せを用いて得たものであるが、 遠縁な両親から養 成した雑種集団はそれを構成する個体の生育時期や諸形質の分散が大きく光合 成能力の遺伝解析は容易でない。 そこで本実験で行ったような個体の生育時期 を揃えるなどの処理が必要になる。 高放出量は劣性と考えられるので、 実際の 育種場面では酸素放出量の高い個体をF2世代で選抜し、 以降の系統で高放出量 を繰り返し選抜すれば比較的容易に高放出量後代系統を作出できょう。

光合成能力の遺伝分析を今後詳細に行うためには遺伝的背景が同一で酸素放 出量や炭酸ガス交換速度が異なる遺伝的変異系統を作出する必要がある。 第6

章における選抜実験は光合成能力lこ関する遺伝解析の材料を作出できる可能性 を示したものであり、 酸素電極法による葉身酸素放出量の測定で高能率光合成 能力をもっ系統の選抜

育成が可能なことを示すものである。

摘要

イネの多収性品種育成を目的として、 単位葉面積あたりの光合成能力の種内 変異、 遺伝様式および高能率系統選抜の可能性を酸素電極法を用いて研究した。

以下にその概要を述べる。

1 )イネの個葉光合成能力の種内変異と遺伝分析を行うため、 酸素電極法を用 いた多点式光合成測定装置を新しく設計

開発した。

2 )酸素放出量は葉身の採取時刻の経過にしたがって減少した。 そのため、 採 取時刻に関わりなく品種の遺伝的能力を反映した酸素放出量となる試料の前 処理方法が必要であった。

3 )葉身採取後ただちに葉片を打ち抜き、 蒸留水を入れたシ ャーレに浮かべ、

光照度4万ル yクス、 照明が午前6時から午後8時、 昼温が280Cで夜温が2 2 OCの人工気象室で 24時間インキュベー卜する葉片前処理方法を考案した。

4 )この前処理法は測定材料を栽培する圃場の気象条件にかかわらず安定した 値をもたらし、 測定日ごとの酸素放出量の変動係数は、 他の農業形質とほぼ

同じ程度であった。

5 )イネ葉身酸素放出量の最適測定条件は照射光照度7万ル ックス、 温度目。C、

HEPES緩衝液のpH 7. 2であった。 葉身中央部の葉片の表側を測定lこ用いること にした。 また、 主稗の最上位完全展開葉を用いることにした。

6 )酸素放出量は葉令が増加するにつれて低下した。

7 )新しく開発した多点式酸素放出量測定装置2台と葉片の前処理方法とを用 いて少なくとも1日 150点の酸素放出量の測定が可能となった。 従来の測定 方法では困難であった短時間における多点数測定を達成し、 光合成能力の遺 伝的変異や雑種集団を用いる遺伝分析を容易にした。

8 )アジア栽培イネの酸素放出量の変異の大きさを最高値/最低値比で表すと

1. 79となり、 光合成能力に大きな種内変異が存在した。

9 )アジア栽培イネの4品種群間の中で、 ジャポニカ品種群の酸素放出量はも

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っとも高く

一方、 ジャパニカ品種群の平均値はもっとも低かった。 光合成 能力に関する品種群間変異が存在した。

10)中国雲南省およびラオスの在来品種において、 ジャポニカ品種群に多くみ られるエステラーゼ同位酵素の遺伝子型6型( E st-11、 E st-20、 E st-31 )の 品種は酸素放出量がもっとも高く、 一方、 ジャパニカ品種群に多くみられる 遺伝子型8型( E st-10、 E st-21、 E st-31 )、 12型( E st-10、 E st-20、 E st-31 ) の品種は酸素放出量が低かった。 すなわち、 中国雲南省やラオスという限ら れた地域に存在する品種に焦点をあてた場合も光合成能力についてアジア栽 培イネの分化に一致する遺伝的分化を認めた。

11)日本の改良品種は在来品種より酸素放出量が高かった。 コシヒカリの系譜 の酸素放出量から、 育種の過程で光合成能力がおおむね向上したことがわか った。

12)人為突然変異処理によって酸素放出量に大きな変異を作出できた。 最高値 /最低値比は8. 41であり、 この値は在来品種を用いて得られた値(1.79)に 比べではるかに大きかった。 光合成能力lこ関する高能率系統の給源を人為突 然変異処理にも期待できると結論した。

13)酸素放出量の高い品種と低い品種の2組合せの正逆F2雑種集団および2組 合せのB1Fl集団を用いて特定の一時期における酸素放出量を測定して遺伝分 析を行なった。 F1の酸素放出量は低放出量親の値に近かった。 F2雑種集団の 中には両親の値より超越した個体があり、 その分布型は正規分布に似ていたo B1F1雑種集団においても酸素放出量の分布型は正規分布に近かった。 すなわ ち、 F2集団やB1F1集団を用いである特定のー測定時期の値から酸素放出量の 遺伝様式をとらえることは困難であった。

14 )窄葉青8号(高放出量) x玉錦(低放出量)のF2雑種集団の酸素放出量を 3時期測定し、 出穂期をもとにF2個体の生育時期を揃えて酸素放出量の変異 の解析を行なった。 修正した酸素放出量は明らかな二頂分布となり、 低放出

量が優性、 高放出量が劣性の単遺伝子分離であった。

15)窄葉青8号×信州金子(低放出量)の組合せにおいて、 F2世代で高放出量 であった個体に由来するF3系統の系統内平均酸素放出量は高かった。 F2世代 で低放出量と判定した個体から由来するF3系統の中には、 高放出量群と同程 度の高い値となる系統が出現したので、 F3世代で低放出量と高放出量が分離 したと結論した。 F2個体の酸素放出量とその個体に由来するF3系統の系統内 平均酸素放出量との聞には r=0.646**の正の相関があり、 酸素放出量は遺伝 力が高い形質であると結論した。

1 6 )農林8号に放射線を照射して得られた突然、変異系統聞の交雑組合せから酸 素放出量で438μmol 02/dm2/hrの差があるが、 農業形質がよく類似した高酸 素放出量F6系統と低放出量F6系統が得られた。 この結果は酸素電極法による 葉身酸素放出量の測定で高能率光合成能力をもっ系統の選抜が可能なことを

示すものである。

以上の結果にもとづき、 酸素電極法による単位葉面積あたりの光合成能力を 改良する立場から、 多収性イネ品種育成の可能性を論じた。

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謝辞

本論文をまとめるにあたり、 原稿校閲の労をとっていただきました九州大学

農学部教授岩田伸夫博士、 同学部教授豚和一博士ならびに同学部教授奥達雄 博士の諸先生がたに対しまして厚く感謝いたします。

この研究を行うにあたり、 終始あらゆる面でご指導くださいました農業生物 資源研究所

遺伝資源第一部

前植物探索導入研究チーム長、 現遺伝資源第一 部長中川原捷洋博士に心から感謝の意を表します。 酸素電極法についてご指導 くださいました元農業技術研究所遺伝第七研究室長川上潤一郎博士、 同研究室 元主任研究官、 現植物探索導入研究チーム長奥野員敏博士ならびに同研究室元 任研究官、 現宮崎県総合農業試験場育種科長滝田 正博士に厚くお礼申しあ

げます。 また、 植物探索導入研究チームの同僚、 河瀬真琴博士、 江川宜伸博士、

勝田真澄主任研究官ならびに非常勤職員、 浅野文子さん、 片倉和枝さん、 真中 明美さんのかたがたには実験の遂行にあたり多大な協力と助言をいただきまし た。 ここに記して深く感謝いたします。

引用文献

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