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英語活動では、得意の釣りゲームで意欲的に活動に参加できた。

②「リコーダーサポートシール」を使って、『オーラリー』を最後まで演奏することが できるようになり、学年集会でもクラスのみんなと合奏ができた。

③「一行スリット」を繰り返し使い音読することによって、参観日の『わらぐつの中の 神様』の音読発表会では、自信を持って発表することができた。

④スリーヒントは最後まで聞き、意欲的に答えられた。朝の会・終わりの会での自分 勝手な発言が少なくなった。

⑤ヒントカードや3ステップ学習プリントは自分で選んで取り、問題に取り組むこと ができた。

⑥「みんな遊び」でのトラブルが少なくなり、友だちからも認めてもらえる場面が 見られた。A 児の日記にも「みんなあそび、たのしかった。」と書かれていた。

⑦学年だよりと学級だよりを家に持ち帰り、母親に見せることができた。

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A君の「困り感」への手立て

• 学習に対する苦手意識から、意欲が乏しい。

「 絵入り 単語カ ード 」 で釣り ゲームを 取り 入 れる 。

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英語学習

• リコーダーの演奏に躓きがある。

「 リ コ ーダーサポート シ ール」

と 「 カ ラ フ ル・ 運指表」 を

使い、 リ コ ーダーの練習を する 。

・リ コ ーダーのそれぞれの穴の 周り に、 ク ッ シ ョ ン 性のある 素 材で 作っ たド ーナツ 型のシ ール を 貼り 、 指で 穴を ふさ ぎ やすく する 。

・ それぞれの「 リ コ ーダー・ サ ポート シ ール」 に色を つけて お き 、 運指表を シ ールの色に対応 さ せて 作り 、 運指を わかり やす く する 。

2

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• 読むことに著しい困難がある。

「一行スリット」を使って、

音読の練習をする。

一行ずつを ク ロ ーズア ッ プ し て、 読み 取り やすく す

る 。

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・聞くことに著しい困難がある。

見える部分では 答えがわかりに くいように穴を 空ける。

動物の名前 漢字カード を示す。

授業の中でスリ ーヒ ン ト ク イ ズを 取り 入れる 。

4

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• 幼い自己中心的な言動が目立ち、先生の話 や友達の発表を聞くことができない。

ク ラ スで話を 聞く 時のルールを 明 記し たカ ード を 掲示し たり 、

「 気づき カ ード 」 を そっ と 見せる 。

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活動中、 個別に A 君を 注意する と き は、 こ れら の小さ な

「 気づきカード」 を 、 そっ と 見せる な ど し て 、 気づき を 促すこ と も 効果的だっ た。

聞こう しずかに 目を見て

6

手のひらサイズ

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・課題への集中時間が短い。

「 ら く ら く 図形セッ ト 」 を 使っ て、

面積の簡単な求め方を 考える 。

A A

B

B

C C

D

D

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①多数決 ②あみだくじ ③じゃんけん ④ゆずりあう

みんなで決めよう

決まった意見には、したがう。

みんなで決めたことで、楽しく遊ぼう!

サッカーがやり た か っ た け ど 、 まあいいか

私 は ト ラ ン プ の 方 が い い な・・・

ドッチボールが したかったんだ

~!

え~おにごっこが いいのに・・・

「みんな遊び」

のルール その1

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・友達と仲良く したいという 思いはあるが、

友人関係をう まく築けない。

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• 自分の持ち物の整理整頓ができない。

「整頓ボックス」を机の横に置き、終わりの 会の前に、自分の荷物をランドセルに入れ る習慣をつける。

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6.考察

通常の学級で学ぶ A 児への特別な配慮・支援

A 児を含めた学級全体のインクリュージョンに向けた取り組みという視点に 立った支援の方法を考察する。

学校教育法の一部改正( 2007 年 4 月施行)に伴い、特別支援教育が法的な根 拠を持って開始された。 「指導についての計画又は家庭や医療、福祉などの業務 を行う関係機関と連携した支援のための計画」であり、児童のニーズによる「個 別の指導計画」 ・ 「個別の教育支援計画」の作成により、通常の学級における「困 り感」のある児童生徒に対して、特別支援教育と発達障害の問題が位置づいた。

本事例の「グレーゾーン」とは「医師による診断や専門家による判断をされ ていないが,行動観察やチェックリスト等の間接的アセスメントにおいて困難 が見られる児童の状態像」と定義する。

「勉強ができるようになりたい」「わるいことをしないようにしたい」「友達 と楽しく遊びたい」という A 児の願いを踏まえ、今後は知能検査の個人内差等 により科学的に考察していきたいが、今回は間接的なアセスメントから本児の 自尊感情を高める支援を考えた。

まず、 ICF による実態分析から困難の発生要因が見えてきた。心身機能、身 体構造として、注意機能の問題、情動機能の問題、言語受容と表出に困難を抱 えていることが気になった。個人因子では、自尊感情が低く、学習意欲が乏し いこと、学習面でのアンバランス、人を求めているが人との関係をうまく築け ないことなどが挙げられた。環境因子としては、適切な学習支援の必要性や校 内体制の機能がうまく行われていないこと、家庭での両親との関わり方の問題 が浮かび上がった。

文部科学省のチェックリストでは LD 傾向( 「聞く」 「読む」 )に著しい困難が あり、 ADHD (不注意優勢)傾向という結果が出た。 LDI-R でも LD の可能性 が高いという判定が出た。

TRF の結果は、社会性・思考・注意の問題、非行的行動、攻撃的行動が臨床 域に達し、不安や抑うつは境界域にあることから、早期支援が必要とされる。

これらを総合的に判断すると、「問題の発生と悪化の予防」(武田モデル)の 二次予防の段階と考えられる。

A 児は運動能力に優れるという良い面も持ち合わせているにもかかわらず、

それが自己肯定感に繋がっていない。そこで、学習面においても「できた」 「わ かった」という成功体験を味わい、自尊感情を高めるための教材・教具の開発

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に取り組んだ。これは A 児だけでなく、クラスのすべての児童の視点に立つユ ニバーサルなものである。

さらに、 A 児が安心して学校生活を過ごすためには、リソースルームの設置 と A 児の関係性に配慮できる人的資源を確保し、個別学習も考慮することが望 まれる。

また、保護者との対話と共同も重要である。学校での困難な状態だけでなく、

運動など得意な面も活かしていくことも伝えるなど、保護者との共感を目指し ていきたい。 A 児の多動性・衝動性は学年が上がるにつれて低下しており、家 庭での困難さは少なくなってきているが、集団の中で個別の指導計画に基づい た適切な支援を行うために、関係機関との連携も必要である。

しかし、教育現場では通常の学級に在籍する本児のような「グレーゾーン」

の児童のケースでは、知能検査実施に至らず、家庭が関係機関と繋がらないこ とも多いと思われる。そのような場合は、クラス全員で行う読み書きスクリー ニングテストや児童のノートや作文、テストの誤り等を丁寧に分析し、認知特 性を明らかにすることも有効である。これは「グレーゾーン」の児童だけでは なく、クラス全員への支援にも繋がる。

これからの支援として、まず早急にケース会議を開き、担任だけでなく学校 全体の包括的な支援体制に切り替え、 A 児の「困り感」を共有することが挙げ られる。そして、 ICF モデルからクラスや家庭の環境の調節を図るとともに、

WISC- Ⅲを実施・解釈し、より得意分野を伸ばす方法を考えていかなければな

らない。 TRF では支援の早期介入の段階に入っていることから二次予防に努め、

学校全体の「開かれた問題」として共通理解を深めることが大切である。担任 や保護者に加え、クラスの仲間の協力体制の下で、 A 児の希望や意見を尊重し ながら、社会性の向上とソーシャルサポートによる対人ストレスの軽減を図っ ていきたい。

学校側には A 児の事例を含め、特別なニーズに合った支援の教育的なプログ ラムの構築に努めることが求められる。 「グレーゾーン」の A 児の支援を考えて いくことは、すべての児童の学習やソーシャルスキルの獲得に向けたユニバー サルな配慮・支援にリンクするという今後の方向性が見えてきた。

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事例3

中学校で通常学級に在籍する

ADHD と診断され、 LD( 読み書き ) の疑いのある生徒の指導事例

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1.実 態

・ 対 象 児

中 学 校 で 通 常 学 級 に 在 籍 す る 1 年 生 男 児

・ 主 訴

医 療 機 関 で ADHD(不 注 意 優 勢 型)、LD(読 み 書 き)の 疑 い が あ る と 指 摘 さ れ た 。 別 の 医 療 機 関 で 行 っ た WISC-Ⅲ の 結 果 は 、FIQ が 90 で 視 覚 優 位 。 自 己 肯 定 感 が 低 く 、 感 情 の コ ン ト ロ ー ル に 問 題 が 見 受 け ら れ る 。

・ 概 要

小 学 校 で の 様 子

小 学 校 入 学 ま で 健 診 で は 発 達 に つ い て 問 題 は な く 、小 学 生 で は 通 常 学 級 に 在 籍 し て い た 。 し か し 、 5 年 生 頃 、 学 習 の 遅 れ が 目 立 ち は じ め 個 別 指 導 を 担 任 か ら 提 案 さ れ た が 、 本 人 は 拒 否 し 、 教 師 に 反 抗 的 な 態 度 を と り だ し た 。

中 学 校 で の 現 状

A は 通 常 学 級 に 在 籍 し て い る 。 ク ラ ス の 子 ど も た ち か ら は 好 か れ 、 休 憩 時 間 に は 友 だ ち と 一 緒 に 遊 ん で い る 。 ま た 、 ス ポ ー ツ 系 の 部 活 に 所 属 し て い た が 、 行 か な く な っ た 。 家 庭 よ り も 学 校 に い る と き の 方 が 落 ち 着 い て い る 。 最 近 は 深 夜 ま で ゲ ー ム に 熱 中 し 、 登 校 日 数 が 減 少 傾 向 に あ り 、 遅 刻 も 多 い 。

学 習 面 に 関 し て は 、 読 み 書 き が 苦 手 で 学 習 意 欲 が 低 い 。 学 習 の 遅 れ が 目 立 つ た め 、 学 校 か ら は 特 別 支 援 学 級 へ の 入 級 を 進 め ら れ 、 母 親 は 入 級 に 同 意 し て い る 。 し か し 、A は 障 害 者 に 対 す る 偏 見 が 強 く 、 特 別 支 援 学 級 へ の 入 級 や 個 別 指 導 を 受 け 入 れ る こ と が で き な い 。

・ 家 庭 環 境

家 族 構 成 は 、 父 ・ 母 ・ 妹 ・A の 4人 家 族 。

父 親 は 、 こ れ ま で 子 ど も の 養 育 に 関 し て 無 関 心 で あ っ た 。 し か し 最 近 、A の ソ ー シ ャ ル ス キ ル ト レ ー ニ ン グ(以 下 SST)に 付 き 添 っ て 行 っ た り 、 子 ど も の 養 育 に 関 し て 関 心 を 持 ち だ し た 。

母 親 は 、A と ど の よ う に 関 わ っ て い け ば よ い の か 不 安 に 思 い 、A は 母 親 に 対 し て 反 抗 的 で あ る 。

妹 は 小 学 校 3 年 生 で 、 自 閉 症 で 特 別 支 援 学 級 に 入 級 し て い る 。 よ く 兄 (A) と け ん か を す る 。A は 、 障 害 の あ る 妹 と 自 分 と を 区 別 し 、 差 別 的 な 態 度 を と る 。

・ 今 後 の 見 通 し

A へ の 今 後 の 支 援 の 見 通 し と し て 以 下 の 6点 が 考 え ら れ る 。

① 基 本 的 な 生 活 習 慣 を 確 立 し 、 遅 刻 ・ 欠 席 日 数 を 減 ら す

②A の 認 知 特 性 に 合 わ せ た 指 導 方 法 を 分 析 す る

③ 自 ら 興 味 ・ 関 心 を 持 て る 科 目 を 見 つ け る

④ 実 態 に 合 わ せ た 個 別 課 題 プ リ ン ト 学 習 等 を 行 う

⑤ 自 尊 感 情 を 高 め 、A の 興 味 ・ 関 心 の 幅 を 広 げ る

⑥ 学 年 全 体 で A の 情 報 を 共 有 し 、 共 通 理 解 を 深 め る 保 護 者 へ の 支 援 と し て 以 下 の 3 点 が 考 え ら れ る 。

① 様 々 な 機 関 に 相 談 し 支 援 の 方 向 性 が 見 え な い の で 、 相 談 す る 機 関 を 整 理 す る

② 家 庭 と の 連 絡 を 密 に し 、 学 校 で の 状 況 を 保 護 者 に 伝 え る

③ 家 庭 で の 取 り 組 み ( ト ー ク ン 、 子 ど も の 良 さ を 認 め る ) を サ ポ ー ト す る

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