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年齢別の移動率について検討した第

II

章でみたとおり、進学や就職、結婚といったライフイベン トが集中して起こる

10

代後半から

30

代は、生涯でもっとも活発に移動する期間である。一方で、

近年の若者を取り巻く社会・経済環境の変化は、こうしたライフイベントを通過するライフコース の変化と相互に関連しあいながら、この年齢期における移動のパターンやその範囲にも影響を与え ていると考えられる。そこで本章では、

10

代後半から

30

代までの年齢層における移動経験およびそ の関連要因について、人口移動調査における過去の調査結果と比較しながら検討する。

本章における分析対象は、

15

歳から

39

歳までの男女である。分析で用いる移動経験の範囲の計測 については、第

IV

章において用いられた方法と同様に、過去の移動歴を把握する目的で設けられて いる出生、卒業、就職、結婚といったライフイベント時の居住地および

5

年前居住地、

1

年前居住地、

直近の引っ越し前の居住地といった移動ポイントに関する回答にもとづいているが、集計の際の分 類は、①ずっと同じ(移動経験なし)、②都道府県内に留まる人(県内移動経験者)、③他の都道府 県(外国を含む)での居住経験がある人(県外移動経験者)の三分類となっている1。また、第

IX

章における

U

ターン者の集計と同様に、出生地が日本国外(外国出生者)の人については、集計対 象には含まない。今回の第

7

回人口移動調査と過去の調査結果との比較に際しては、ライフイベン トにおける居住地についての設問が統一されている第

4

回調査以降の結果における推移をみる。

XIV-1

移動経験の範囲別割合(男女別、

15

歳~

39

歳)

1すなわち、「県外移動経験者」は、出生時、中学校卒業時、最後の中学校卒業時、はじめて仕事をもった時、はじめて結婚した直 前・直後および5年前、1年前、いちばん最近の引っ越し前の時点(以下、「各時点」とする)のいずれかの居住地が「他の都道府 県」あるいは「外国」であった人、「県内移動経験者」は県外移動者以外で各時点のいずれかの居住地が「現在と同じ区市町村」あ るいは「現在と同じ都道府県の他の区市町村」であった人、「移動経験なし」は、県外移動および県内移動がなく、各時点の居住地 のいずれもが現在と同じ、もしくはまだそれらのライフイベントを経験していない人である。なお、本章における移動範囲の計測 に際しては、第6回調査と第7回調査において全世帯員を対象に設置された「3カ月以上の居住経験のある都道府県(および外国) に関する回答結果については算入していないので、第Ⅲ章における「移動経験の範囲」についての集計結果とは値が異なる。

18.1%

15.8%

14.9%

14.6%

13.8%

15.1%

13.4%

12.3%

12.2%

11.7%

38.1%

42.5%

45.5%

45.6%

44.6%

45.8%

48.9%

50.3%

50.4%

48.7%

43.8%

41.6%

39.6%

39.8%

41.5%

39.1%

37.7%

37.4%

37.4%

39.6%

男性 第4回調査 第5回調査 第6回調査(全県)

第6回調査(3県除く)

第7回調査 女性 第4回調査 第5回調査 第6回調査(全県)

第6回調査(3県除く)

第7回調査

移動経験なし 県内移動 県外移動

-119-

XIV-1

に示したとおり、第

4

回調査から第

7

回調査にかけて

10

代後半から

30

代における移動

未経験者の割合は男女ともに減少しているが、移動経験者の内訳でみると、県外移動経験者の割合 については第

4

回調査から第

7

回調査において顕著な変化はなく、県内移動経験者の割合の拡大に とどまっていることがわかる。また、男女別でみると、移動未経験者の割合は女性のほうが低いが、

県外移動経験者の割合でみると、男性のほうが高く、移動経験の範囲が広いという傾向が一貫して 確認できる。ただし、近年の調査では、県外移動経験者の割合における男女差は縮小傾向にある。

以下では、さらに細かい年齢層別でみた移動経験の範囲の変化を、第

4

回以降の調査結果にもとづ いて検討する。

(1)15歳から

19

歳における移動経験

15

歳から

19

歳の年齢層は、移動経験の範囲が最も狭く、移動未経験者の割合が高い時期であるが、

前述の若年層における全体的な傾向と同様に、この年齢層においても移動未経験者の割合は男女と もに第

4

回調査以降継続的に減少しており、移動経験の若年化がうかがえる。移動未経験者の割合 の減少はおもに県内移動経験者の割合の上昇によるものであり、県外移動経験者の割合は第

4

回調 査と第

7

回調査の結果を比較しても、顕著に増加しているとはいえない。ただし、第

6

回から第

7

回にかけて移動未経験者の割合が大幅に減少した女性では、県外移動経験者の割合がはじめて

20%

を超えて男性における割合よりも高くなっており、10代後半の女性では移動経験の範囲が拡大して いるといえる。

図 XIV-2 移動経験の範囲別割合(男女別、15歳~19歳)

(2)20代における移動経験

20

代では、移動経験において男性と女性で異なった変化のパターンがみられる。まず男性では、

移動未経験者の割合に大きな変化はないものの、移動経験者のうち第

4

回調査において

43%だった

県外移動経験者の割合が、第

5

回調査(2001年)から第

6

回調査(2006年)にかけて減少し、第

7

回調査では

39%となる一方、県内移動経験者の割合は第 4

回調査の

40.4%から第 7

回調査では

44.8%

に上昇しており、男性においては

20

代における移動経験の範囲の縮小がみられる。

39.4%

34.9%

30.4%

30.1%

27.2%

39.2%

37.4%

32.3%

31.6%

24.5%

38.4%

45.3%

47.8%

48.1%

51.1%

41.1%

43.9%

49.5%

50.1%

52.8%

22.3%

19.8%

21.8%

21.9%

21.7%

19.7%

18.7%

18.2%

18.4%

22.7%

男性 第4回調査 第5回調査 第6回調査(全県)

第6回調査(3県除く)

第7回調査 女性 第4回調査 第5回調査 第6回調査(全県)

第6回調査(3県除く)

第7回調査

移動経験なし 県内移動 県外移動

-120-

図 XIV-3 移動経験の範囲別割合(男女別、20歳~29歳)

一方、女性では、

20

代における移動未経験者の割合に大きな変化はないが、前述の

10

代後半にお いてみられた移動経験の範囲の拡大が引きつづき確認される。すなわち、県外移動経験者の割合が、

5

回調査から第

6

回調査において一旦低下したものの、第

7

回調査では再び上昇し、男性におけ る県外移動経験者の割合を上回った。

10

代後半から

20

代にかけては、県外移動経験者の割合という点でみると、女性の移動範囲が男性 の移動範囲を上回っており、県外移動経験者の割合は男性のほうが高いというこれまでの人口移動 調査におけるパターンが逆転していることがうかがえる。こうした女性における移動経験の拡大の 背景としては、「第

VIII

章 現住地への移動理由」においても指摘しているとおり、継続的な進学率 の上昇によりこの年齢期に県を超えて移動する人が増えたことが考えられる。

(3)30代における移動経験

20

代において確認された男性における移動経験の範囲の縮小と、女性における移動経験の範囲の 拡大については、30代において若干異なったパターンが確認される。まず、基本的な傾向として、

男女ともに上述の

20~29

歳では

15%近傍にあった移動未経験者の割合が、30

歳~39歳ではとりわ け女性において顕著に低下する。女性の

30

代における移動未経験者の割合は

4~5%で推移しており、

男性における移動未経験者の割合よりも一貫して低いことがわかる。これは、

20

代後半から

30

代に かけての女性のライフステージにおいては、それまで移動を経験しなかった人でも、結婚というラ イフイベントにより、移動性向が高まることが背景にあると考えられる。ただし、30代女性におけ る移動範囲のパターンに関しては、第

4

回調査以降大きな変化はなく、県外移動者の割合について

も、第

4

回調査の

49.2%から第 5

回調査の

44.0%に減少した後は、45%近傍で安定している。

男性においても、移動未経験者の割合は

20

代から

30

代にかけて低下しており、たとえば、第

7

回調査の結果によると、20~29歳の年齢階層で

16.1%だった移動未経験者の割合は、30~39

歳の年 齢層になると

7.5%にまで低下する。上述のとおり、この 30

歳から

39

歳の男性における移動未経験 者の割合は、女性よりも高い値であるが、第

4

回調査からの変化をみると、女性においてその値は ほとんど変化していないのに対して、男性では低下傾向にあり、とくに第

5

回調査(2001年)と第

6

回調査(2006年)の間で変化がみられる。移動未経験者の割合は第

6

回調査から第

7

回調査にか けて微増しているが、20代と

30

代を比較した移動未経験者の割合の差は第

5

回調査の

5.42

ポイン

16.5%

15.0%

17.4%

17.0%

16.1%

15.6%

14.7%

14.7%

14.8%

15.0%

40.4%

42.2%

44.0%

43.9%

44.8%

47.1%

47.6%

49.6%

49.4%

45.7%

43.0%

42.8%

38.7%

39.1%

39.0%

37.4%

37.8%

35.7%

35.8%

39.3%

男性 第4回調査 第5回調査 第6回調査(全県)

第6回調査(3県除く)

第7回調査 女性 第4回調査 第5回調査 第6回調査(全県)

第6回調査(3県除く)

第7回調査

移動経験なし 県内移動 県外移動

-121-

ト(20代:15.0% → 30代:9.6%)から、第

6

回調査では

10

ポイント、第

7

回調査では

8.6

ポイン トと拡大している。これは、20代の終わりまでに移動を経験しなかった人でも、30代になって新た に移動を経験する傾向が強くなっていることを示唆している。また、県外移動経験者の割合も、男 性においては第

6

回調査から第

7

回調査にかけての上昇が確認でき、20代では停滞がみられた男性 の移動経験が、30代において再び拡大していることがわかる。

図 XIV-4 移動経験の範囲別割合(男女別、30歳~39歳)