採点には,「A」と「B」の二つの得点があり,また特別要求点により加点される.特別 要求点は,特別要求技を1つ満たすことにより0.5加点され,また終末技に関しては,そ の技の難易度により加点される.
中級選手,初級選手の演技に対して本研究の提案手法により採点を行ったそれぞれの 結果を図8.18,図8.19に示す.図8.18と図8.19では,選手が行った各技に対して技の キーポーズマッチングを行うことにより採点された「A」得点と,動画像での選手の姿勢 を解析し上級選手の姿勢を正解姿勢として比較を行うことにより採点された「B」得点の 結果が示されている.また,特別要求点の採点を行った.本研究での選手の演技では,技 のグループ (0.5加点),グループ (0.5加点),グループ (0.1加点)が満たされてい ることから,1.1点得られている.最後に,本研究と審判により採点した中級・初級選手 の得点結果を図8.20に示して比較を行った.
そこで技の判定により算出される「A採点」においては,審判と同等な採点結果が得ら れた.また,選手の姿勢分析により算出される「B採点」においても,審判とほぼ同等な 採点結果が得られたが,画像処理により選手の姿勢を正確に分析できれば,審判の目視に よる採点より客観的,かつ正確に減点処理を行うことが可能となると考えられる.
第8章 動画像処理によるスポーツ動作解析
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図8.18: 中級選手の演技採点結果
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図8.19: 初級選手の演技採点結果
第8章 動画像処理によるスポーツ動作解析
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図8.20: 本研究と審判による採点結果の比較
第8章 動画像処理によるスポーツ動作解析
8.6 8 章の総括
本研究は鉄棒競技において動画像処理による自動採点システムを構築することを目的と した.まず技の判定を行うため,選手のシルエット画像と採点基準であるルールブックで のキーポーズとのマッチングを行い技の判定を行った.また姿勢を解析するために,各フ レームから選手の関節位置と関節角度を算出し関節の変位グラフを作成した.
今回は,レベルが異なる3人の選手の姿勢を解析し比較することができ,本研究により 鉄棒競技をコンピュータにより自動採点が可能になると考えられる.また本研究の結果 は,実際の審判員の採点を正解と見做して,システムの評価が可能であり,システムの性 能が十分であれば審判員の評価に用いることも可能となるなど,有用性が大いに期待でき る.今後は,ひねりなどより複雑な技に対する判定が可能となるように正面から得られる 選手の演技画像を用いて採点の実験を行いたい.また試合会場という選手領域の抽出が困 難な背景のもとでより正確な選手のシルエット,さらには技のセグメンテーションを自動 化する.さらに行われた「技」美しく行われたかを検出するためにも新たな枠組みが必要 である.
第 9 章
結論
第9章 結論 本論文ではアパレル関連の分野において,これまでマルチン計測法等器具を用いて手動 で行った人体計測を,衣服の製作に必要な最小限の数である23個の人体の計測点を選び,
それに対応する特徴点を人体の3次元スキャンデータから自動抽出する手法を提案した.
すなわち,ランドマークを利用せず,体型の変化が様々な人体のスキャンデータから23 個の特徴点を安定に,かつ,自動的に抽出する新たな手法を提案した.
人体の特徴点を3次元スキャンデータから抽出するために提案する手法は,(1)特徴点 が既知の標準的な人体のスキャンデータを,対象人体のスキャンデータにマッチングさ せ,特徴点の位置の推定を行う手法,(2)衣服製作のために必要な計測点の定義基準によ り特徴点の種類を二つに分類し,それぞれに適した対応点の探索を行う手法,二つであ る.この二つの提案手法をそれぞれ実装して様々な体型の対象人体に対して実験を行い, 提案した手法が有効であることを確認するために,あらかじめ専門家により得られた正確 な特徴点の位置であるランドマークに基づいて評価を行った.また二つの提案手法による 特徴点抽出の精度を比較検討した.
まず,(1)の手法により,抽出された特徴点の位置と真の特徴点の位置との平均誤差は 3cm以下の結果が得られた.これは衣服のサイズが3cmで変化するので良い結果である と考えられる.しかし標準人体の真の特徴点における距離画像と対象人体の仮特徴点にお ける距離画像とのマッチングを行う際に,対象人体の真の特徴点が得られていないため仮 特徴点における距離画像を用いたのが誤差の原因の一つであると考えられる.また抽出し た各特徴点の誤差は部位ごとにばらつきが大きかった. これは対象人体の部位の異なる特 徴により標準人体の体型とマッチしないためであると考えられるので,これに関しては改 善が必要とされる.
そこで,ユークリッド変換に不変な特徴量であるスピンイメージを作成することにより 距離画像作成に関する問題点を解決し,より安定に正確な特徴点を抽出する(2)の手法を 提案した.体型の変化が様々な人体のスキャンデータからすべての計測点を安定に自動抽 出するため,衣服製作に重要な23個の人体の計測点を局所特徴点と大域特徴点に分類し,
それぞれに適した対応点探索手法を様々な体型の人体のスキャンデータに適用することに より,精度良く抽出する手法を提案し,提案した手法が有効であることを確認した.
また提案手法により自動抽出した人体の特徴点と人体の3次元スキャンデータを用いて 衣服を製作するために必要な寸法を自動算出できる可能性について述べた.寸法は人体の サイズから算出でき,算出された寸法を用いて型紙を作成し衣服を製作することが可能と なる.今までは寸法を算出するために測定専門家が人体のサイズを手動で直接測り,寸法 を算出した.しかし近年,算出した寸法を入力するだけで型紙を自動作成するソフトウェ アが開発されている.そこで本研究により自動算出される寸法を用いることによって型紙
第9章 結論 が生成でき,今までより効率で衣服を製作することが可能となったと考えられる.
さらに提案手法により自動抽出された人体の特徴点と3次元スキャンデータを用いて人 体の3次元骨格モデルを生成することにより,画像での人物の姿勢を推定および評価する ことが可能となった.横方向から撮影した画像から歩行する対象人物の姿勢を推定し,推 定した姿勢を3次元骨格モデルに与えることにより人物の3次元動作を表示することが 可能となった.さらには任意の視点から見た画像も生成できた.特に,画像から人物の姿 勢を推定するために,人体の特徴点周辺の形状から特徴を抽出するために適用した領域木 アルゴリズムを利用した.画像での人物領域から特異点を抽出し,その特異点を統合する ことにより対象人物の骨格を生成した.今後は,前後フレームでの人物の姿勢の変化を考 察することにより部位におけるオークルージョンの問題を解決し,3次元人体の骨格モデ ルを用いた運動学によってより自由度の高い複雑な動作の人物を対象として人物の3次元 姿勢を推定したい.
また鉄棒競技において動画像処理による自動採点システムを構築する研究分野へ応用し た.鉄棒競技を行う選手の演技を側面のカメラから撮影を行い,提案手法により自動抽出 された人体の特徴点と3次元スキャンデータを用いて生成した人体の3次元骨格モデルを 用いて技のデータベースを生成した.そして生成した技のデータベースに基づいて選手が 行った技の種類を判定し,またその技での姿勢が正しく行われたかを評価した.今回は,
レベルが異なる3人の選手の演技を解析し比較することにより,コンピュータによる鉄棒 競技の自動採点システムの構築への可能性を示した.本研究の結果は,実際の審判員の採 点を正解と見做して,システムの評価が可能であり,システムの性能が十分であれば審判 員の評価に用いることも可能となるなど,有用性が大いに期待できる.今後は,試合会場 という選手領域の抽出が困難な背景のもとでより正確な選手のシルエット,さらには技の セグメンテーションを自動化する.また行われた「技」が美しく行われたかを検出するた めに新たな枠組みが必要である.
以上のように,人体形状計測機器を用いた人間の身体をデジタルモデル化する技術に関 する研究が盛んに行われ,その分野へのニーズに従って,解剖学的特徴点を自動抽出し自 動的に寸法を算出する技術,画像から人物の姿勢を推定および評価する技術に関する研究 を行った.
応用分野において,アパレル分野では,ファッションスタイルの多様化や生産の海外シ フトの影響で,ユーザはより容易に自分のライフスタイルに合う衣服を求めている.すな わち,現在は個人の好みや体型が反映された固有のファッションを求めているために,個 人が求めているファッションをデザインし,提供できる仕組みが必要となってきた.いつ でも試着し,購入を決定できるようなデジタル仮想試着シミュレーションの発展が今後期