臓器移植法12条は、「業として行う臓器のあっせんの許可」と題し、その⚑
497) 「臓器提供手続に係る質疑応答集」(平成27年⚖月改訂)「⚔」⚘頁参照。
項では、「業として移植術に使用されるための臓器(死体から摘出されるもの又は 摘出されたものに限る。)を提供すること又はその提供を受けることのあっせん
(以下「業として行う臓器のあっせん」という。)をしようとする者は、厚生労働省 令で定めるところにより、臓器の別ごとに、厚生労働大臣の許可を受けなけれ ばならない」と定め、その⚒項では、「厚生労働大臣は、前項の許可の申請を した者が次の各号のいずれかに該当する場合には、同項の許可をしてはならな い。
一 営利を目的とするおそれがあると認められる者
二 業として行う臓器のあっせんに当たって当該臓器を使用した移植術を 受ける者の選択を公平かつ適正に行わないおそれがあると認められる 者」とする。
12条⚑項の許可を受けた「臓器あっせん機関」(施行規則⚘条参照)とは、具 体的には、(公益社団法人)日本臓器移植ネットワーク498)(Japan Organ Trans-plant Network=JOT)である499)。臓器のあっせんを一元的に臓器移植ネット ワークによって行うのは、「公平・公正な臓器移植の実施」のためである。「移 植機会の公平性の担保」と「最も効果的な移植の実施」という要請に応えた臓 器の配分が要請される。したがって、これを介さない臓器の移植は禁止される
(ガイドライン第12―⚑)。
コーディネーター500)は、医師から連絡を受けた場合、「臓器移植ネット
498) 臓器移植における日本唯一の斡旋機関である。1995年⚔月に『日本腎臓移植ネッ トワーク』として設立され、1997年10月16日、臓器の移植に関する法律施行に合わ せ、『日本臓器移植ネットワーク』に改組された。その業務としては、レシピエン トの登録を行い、臓器提供の意思を表示した患者等が、脳死とされうる状態になっ たとき、所属のまたは委託の移植コーディネーターが、患者の家族に説明し、法的 脳死判定を確認し、また、臓器提供の確認を行う。
499) この機関の活動については、小中節子・前掲ジュリスト1264号(2004年)28頁以 下、芦刈淳太郎「移植ネットワーク」前掲『脳死・移植医療』156頁以下、161頁参 照。後者の文献では、欧州、英国、北欧、米国などの諸外国のネットワークについ ても簡単に紹介する。
500) 移植コーディネーターについても、芦刈・前掲168頁以下参照。
ワークにおいては、直ちにコーディネーターを派遣する」(ガイドライン第⚖―
⚒)。「派遣されたコーディネーターは、主治医から説明者として家族に紹介を 受けた後に、家族に対して、脳死判定の概要、臓器移植を前提として法に規定 する脳死判定により脳死と判定された場合には、……次のいずれかに該当する ときに、脳死した本人から臓器を摘出することができること等について必要な 説明を行うこと」とされ、臓器移植法⚖条⚑項⚑号および⚒号の(ア)本人の
「承諾」があり、家族が拒否しない場合、または、(イ)本人の意思表示がなく、
家族の「承諾」の「意思表示」がある場合に該当することを確認する。コー ディネーターは、「説明にあたっては、……臓器を摘出することに関する家族 の承諾の任意性の担保に配慮し、承諾を強要するような言動があってはならず、
説明の途中で家族が説明の継続を拒んだ場合は、その意思を尊重すること」な どが記されている501)(ガイドライン第⚖―⚒(5))。
4.記録・閲覧・帳簿・秘密保持
⒜ 記録の作成・保存・閲覧
臓器移植法10条は、「記録の作成、保存及び閲覧」と題する条項を置いてい る。その⚑項は、「医師は、第⚖条第⚒項の判定(脳死判定)、同条の規定によ る臓器の摘出又は当該臓器を使用した移植術(……)を行った場合には、厚生 労働省令で定めるところにより、判定等に関する記録を作成しなければならな い」とする。その⚒項は、「前項の記録は、病院又は診療所に勤務する医師が 作成した場合にあっては当該病院又は診療所の管理者が、病院又は診療所に勤 務する医師以外の医師が作成した場合にあっては当該医師が、⚕年間保存しな ければならない」とし、さらに、⚓項は、「前項の規定により第一項の記録を 保存する者は、移植術に使用されるための臓器を提供した遺族、その他の厚生 労働省令で定める者から当該記録の閲覧の請求があった場合には、厚生労働省 501) この具体的運用の問題点等について詳しくは、有賀徹「臓器移植法改正――救急 医療の現場から」ジュリスト1393号(2010年)48頁以下、芦刈淳太郎「臓器移植法 改正――コーディネーターの現場から」ジュリスト1393号61頁以下参照。
令で定めるところにより、閲覧を拒むことについて正当な理由がある場合を除 き、当該記録のうち個人の権利利益を不当に侵害するおそれがないものとして 厚生労働省令で定めるものを閲覧に供するものとする」定める。
第⚑項の脳死「判定に関する記録」については、施行規則⚕条で詳細な要件 を定める。判定を行った医師は、特定の事項について「記載し、記名押印又は 署名しなければならない」(⚑項)。その事項とは、判定を受けた者の住所、氏 名、性別及び生年月日」(⚑号)、「……医療機関の所在地及び名称」、「判定を 受けた者の原疾患」(⚔号)など13項目が掲げられている。⚒項では、「脳波の 記録」(⚑号)等の添付すべき書面も列挙されている。
「施行規則」⚖条では、「臓器の摘出に関する記録」に記載すべき事項を定め ている。「臓器の摘出を受けた者の住所、氏名、性別及び生年月日」(⚑号)、 その者の「死亡の日時」(⚒号)、その者の「死亡の原因となった傷病及びそれ に伴う合併症」(⚓号)「主な既往症」(⚔号)、「摘出した臓器の別(当該臓器の左 右の別予備部位の別を含む。)」(⚗号)などの項目である。なお、「臓器の摘出を 受けた者が生存中に親族に対し臓器を優先的に提供する意思を書面により表示 していたときは、その旨」(13条の⚒)も記載する。この記録には、「摘出した 臓器のあっせんを行った者の住所、氏名」(⚒項⚑号)などの書面を添付しなけ ればならない(⚒項)。
第⚑項の「摘出記録の保存」については、「摘出を行った医師が所属する医 療機関の管理者が保存すること」とされている。それ以外の医療機関において 臓器の摘出が行われた場合には、その「記録の写し」を当該摘出が行われた医 療機関の管理者において保存する」(ガイドライン第12―⚔)。
臓器移植法10条⚓項の「記録の閲覧」については、当該項にいう「厚生労働 省で定めるもの」とは、「移植術に使用されるための臓器を提供した遺族、移 植術を受けた者又はその者の家族及び法第12条第⚑項の許可を受けた者
(……)とする」(施行規則⚘条)。
なお、「移植術に関する説明の記録」についても作成義務等が定められてい る(施行規則16条)。「医師は、移植術を受ける者又はその者の家族に対して、
移植術の前に、当該移植術について説明を行った場合は、〔「説明した事項」〈⚕
号〉等について〕……記録を作成し、記名押印又は署名しなければならない」
(⚑項)。
⒝ 臓器あっせん機関の帳簿の備付け等
臓器移植法14条は、「臓器あっせん機関は、厚生労働省令で定めるところに より、帳簿を備え、その業務に関する事項を記載しなければならない」(⚑項)、
「臓器あっせん機関は、前項の帳簿を、最終の記載の日から五年間保存しなけ ればならない」(⚒項)と定める。
ここにいう「臓器あっせんの帳簿」については、施行規則13条で、「臓器の あっせんの行なう事務所に帳簿を備え、あっせんを行った臓器ごとに次の各号 に掲げる事項を当該帳簿に記載しなければならない」とする(⚑項)。それは、
「臓器のあっせんを行った相手方の住所および氏名(……)」(⚑号)、「臓器の あっせんを行った年月日」(⚒号)等である。
⒞ 秘密保持義務
臓器移植法13条は、「前条第一項の許可を受けた者(……「臓器あっせん機関」
……)若しくはその役員若しくは職員又はこれらの者であった者は、正当な理 由がなく、業として行う臓器のあっせんに関して職務上知り得た人の秘密を漏 らしてはならない」とする。
Ⅻ.ドイツにおける臓器移植システムの問題点 1.ゲッティンゲン大学待機リスト操作事件
2006年から2012年の間に、ゲッティンゲン大学の大学病院で、医師によって 患者の書類上のデータを操作され、その患者が提供にかかる肝臓の仲介におい て、その他の患者に優先するようにされたという事件が発覚したのを皮切りに、
ライプツィッヒ、ミュンヘンのイザール河右岸、ミュンスター、レーゲンスブ ルク大学病院でも同様の事件が生じた502)。これがいわゆる「移植スキャンダ 502) この事件の後に、臓器の公正な配分について論じた、2017年にハレ大学に提出さ れた博士論文として、vgl. Wedlich, Sven, Zuteilung von Lebenschancen. Zur