第9章 中小企業コンサルタントの国家資格制度を確立するための実施計画
9.3 職務能力技術基準改定と評価ツール開発の方針
本節では、職務能力要件をNTCLに反映するための技術的な側面について提案する。
アクションプラン 4-3
アクションプラン 5-1
調査終了後3年目 調査終了後7年目以降
アクションプラン 3-1
アクションプラン 4-1
アクションプラン 4-2
調査終了後4~6年目
第9章 中小企業コンサルタントの国家資格制度を確立するための実施計画
9.3.1 NTCLの構成
• 中小企業コンサルタント NTCL では、中小企業経営の総体を対象としてコンサルティ ングサービスを行う職務能力を規定する。
• 必要に応じて、特定の経営機能に関する専門コンサルタントのNTCLを制定する。
改定 NTCL では、経営機能ごとにユニットを分けずに、企業経営の総体を対象範囲とし てユニットを定義すべきであろう。さらに、必要に応じて経営機能ごとに専門コンサルタン トのNTCLを別途作成することも考えられる。現行NTCLから改定NTCLへの移行イメー ジを図9-7に示す。
図9-7 中小企業コンサルタントNTCLの移行イメージ
出所:調査団作成
以降は、対象を中小企業コンサルタントNTCLに絞って提案を詳細化していく。
9.3.2 ユニットとエレメントの構成
• 中小企業コンサルタントNTCLのユニットまたはエレメントに次の2つの要素を追加する。
(1) 政府・公的機関および民間の中小企業支援施策を活用する。
現行中小企業コンサルタントNTCL 改定中小企業コンサルタントNTCL
(必要に応じて) 経営機能別 専門コンサルタントNTCL 開始
開始 (例)生産管理に関する
高度な診断・助言 終了 終了
開始 (例)人的資源に関する
高度な診断・助言 終了 開始 企業経営全般に関する
診断・助言
財務に関する 診断・助言
終了 戦略的経営に関する
診断・助言
人的資源に関する 診断・助言
マーケティングと販売 に関する診断・助言
オペレーションに関する 診断・助言
第9章 中小企業コンサルタントの国家資格制度を確立するための実施計画
(2) 中小企業経営に関連する領域の専門家と連携する。
大企業に比べ不利な競争条件の下にある中小企業にとって、政府・公的機関および民間の 支援施策は、悪循環を脱するための足がかりとなることが期待される。また、中小企業コン サルタントの専門性は中小企業経営への全体論的なアプローチにあり、特定分野の高度な課 題への対応力は必ずしも持ち得ないことから、クライアント企業の課題解決に適切な専門家 を引き込むことは三方に好ましい態勢と言えよう。
9.3.3 評価基準
• 中小企業コンサルタント NTCL の評価基準には、中小企業の特殊事情を反映して、中小企 業を対象とするがゆえに特別に求められる能力要件を盛り込む。
• 製造業、商業、サービス業の各セクターにおける個別事情がコンサルティングへ顕著に影響 するエレメントにクラス36を設定する。
• パフォーマンスの観察による評価を充実させる。
• 態度の評価基準を重視する方針を継続する。
経営改善活動への資源的制約――知識や能力がある人材の不足、資金の不足、マネジメン ト能力の不足――を前提に中小企業の体力に見合う実現可能な改善計画を提案するには、大 企業へのコンサルティングとは異なる思考様式が必要とされる。計画立案に際して外部資源 の活用により制約を緩和する可能性を探ることも、対象が中小企業であるがゆえに必須の要 素である。
調査団が提案する「どのセクターのどのような業種・業態の中小企業に対しても、全ての 経営機能について少なくとも経営上の問題を感知することができるレベル」を保証するため には、製造業、商業、サービス業の各セクターについて、中小企業の一般的な経営動向、経 営診断における重要な着眼点および典型的な経営課題に関してひと通りの理解があること を確かめるべきであろう。
36 状況により異なる対応が求められる職務をより厳密に規定するためには、エレメントに対してクラスと呼ばれる変 数を設定することができる。(第5章5.2.3参照)
第9章 中小企業コンサルタントの国家資格制度を確立するための実施計画
診断報告書を論理的に構成する能力は、中小企業経営者に対し明快で説得力ある診断報告 を口頭で行えることに直結しない。中小企業コンサルタントは、信頼性の高い文書化情報に 乏しく、フォーマルな書面に基づく経営管理が確立していないことが多い中小企業を相手に するのであるから、その職務能力の評価においては実際の場面で効果的な言動ができること こそ重視されるべきである。
中小企業コンサルタントは、クライアント企業へ1人で赴いてコンサルティングサービス を提供するのが普通である。上位者の監督がなくとも、指導者としての責任を持って常に質 の高いサービスを提供するためには、高い志で自らを律する基本姿勢が備わっていなければ ならない。
9.3.4 評価ツール
• 知識を問う試験問題を一定期間ごとに差し替える。
• 管理委員会37が適格と認めた養成カリキュラムを修了した場合、申請により評価の一部 に代えることができるものとする。
中小企業コンサルタントに求められる職務能力を明らかにした NTCL が発行されれば、
養成カリキュラムは NTCL の基準を満たすことを目的に編成されるはずである。すると、
養成カリキュラムを一定以上の成績で修了することと、認証取得に際しカリキュラムに反映 された職務能力要件について評価を受けることとは、本質的にほぼ同一の機能とみなすこと ができる。重複は排除すべきであろう。
すなわち、NTCLに則っていることが確認された養成カリキュラムに対し、そのカリキュ ラムの修了により認証取得において評価の一部が免除される特権を付与するのである。