• 検索結果がありません。

4. 耐震診断・改修工事実施の多変量解析

4.3. 都道府県集計データを用いた分析

4.3.2. 耐震化関連指標の関係性

70

71

図 36 耐震診断耐震性能未確保率と耐震改修工事実施率の関係

図 37 貯蓄現在高と耐震改修実施率の関係

72

意であった.ここでも,静岡県と宮城県は特徴的な県としてプロットされる.それ以外を 見ると,概ね現在貯蓄高と耐震改修実施率は線型の関係にあり,貯蓄が多いと耐震改修工 事の実施に繋がる傾向が見受けられる.

次に,耐震改修工事への行政支援が,実際の改修工事の実施に寄与しているかを見るため に,国土交通省HPより,平成18年7月時点で,都道府県ごとに各都道府県内での耐震改 修補助制度を有する市区町村の比率を得て,図 38にプロットした.大きく耐震改修補助制 度があまり整備されていない都道府県と,かなり整備されている都道府県に分かれるが,

耐震改修実施率が高い静岡県や宮城県,耐震改修実施率が低い沖縄県などを除くと,補助 制が改修工事実施率にあまり寄与していない傾向が見受けられる.補助制度が普及してい る最中であるので,明確な効果を判断する段階でないとも考えられる.

図 38 耐震改修補助実施率と耐震改修実施率

目的変数を耐震改修工事実施率として,説明変数に耐震診断実施率,耐震診断結果耐震 性能未確保率,現在貯蓄高,耐震化率,住宅新設着工比率を投入し,ステップワイズ法で 回帰分析を行い,抽出されたモデルを表 45に示す.現在貯蓄高,耐震化率,着工新設住宅 比率は除外され,耐震診断実施率と耐震診断結果性能未確保率が,耐震改修工事実施率を 説明する変数として残された.耐震診断実施率に係る標準化係数が0.455,耐震性能未確保 率に係る標準化係数は0.382と推定され,耐震診断実施率および耐震診断結果と耐震改修 工事実施率との関係性が明示的に示された.

73

表 45 耐震改修工事実施率の回帰分析モデル

ここで,都道府県ごとに試算した耐震化率と,耐震改修工事実施率や新設住宅比率との 関係性を見ておきたい.図 39に耐震化率と耐震改修工事実施率の関係を示す.耐震改修工 事実施率が必ずしも耐震化率に直接関係するわけではなく,耐震改修実施率が低くても耐 震化率が高い都道府県もあれば,耐震改修実施率が高くても耐震化率がそれほど高くない 都道府県もある.

図 39 耐震改修工事実施率と耐震化率 標準化

係数

B 標準誤差 ベータ

耐震診断実施率 0.118 0.030 0.455 3.895 0.000 耐震性能未確保率 0.035 0.011 0.382 3.272 0.002

(定数) 0.021 0.003 7.557 0.000

R 0.653

R2 乗 0.427

調整済み R2 乗 0.401

有意 t 値 確率

標準化されて いない係数

74

図 40に新設住宅比率と耐震化率の関係を示す.新設住宅比率は,建設時期が平成16年 以降の住宅数が居住世帯のある住宅数に占める比率として,都道府県ごとに計算したもの である.都道府県単位で集計すると,特段の関係性は見出されなかった.

図 40 新設住宅比率と耐震化率