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第 3 章 hiPSC 由来血管内皮前駆細胞の効率的な分化誘導および拡大培養法の検討

3.4 考察

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2次元分化誘導法では簡便な方法で高純度なiEPCsを作製し、かつ拡大培養す ることに成功した。本法の特筆すべき点として、抗原抗体反応を利用した純化工 程を経ることなく細胞の純化が可能なことが挙げられる。セルソーターを用い た純化によってストレスが生じ、細胞の性質が変化することが知られているが

40)、本研究で見出した純化法によって回避することが可能である。分化が進むに

つれて、iEPCsを含む2種類以上の細胞が出現した。これは、分化前のiPSCsの

状態・性質が不均一であることや41)、未分化なiPSCs の中にVEGF刺激に応答 しない細胞が存在すること 42)などが要因であると考えられる。本分化誘導法お よび純化法は 3 種類の hiPSC 株で可能であったため、再現性のあるプロトコー ルであることが示唆された。Late EPC(別名: outgrowth endothelial cells)はearly EPCs と異なり、成熟マーカーであるPECAM1 とCDH5 を発現することが特徴 である。さらにHUVECsと比較して、CD34とKDRの発現量が高いことが知ら

れている43–45)。本法により作出されたiEPCsは、PECAM1とCDH5の遺伝子お

よびタンパク質発現が確認され、かつHUVECsと比較して、CD34 およびKDR の遺伝子発現量が高値を示し、CD34のタンパク質発現も確認された。また、以

前の報告31,46)と一致して、iEPCs は HUVECsと比較して vWFの発現量が低く、

細胞が未成熟であることが示唆された。これらの特徴はsac-iEPCsと酷似してい た。 さらに本法により作出されたiEPCs は sac-iEPCsと同様に Ac-LDLの取り 込み能および管状構造形成能を有していたことから、本法によって作出された

iEPCsおよびsac-iEPCsは似た性質を持っており、両者ともlate EPCsに類似した

細胞であることが示唆された。

YAC は hiPSC 由来の posterior gut progenitor cells、rat hepatocytes および trophoblast stem cellsなどの細胞増殖を亢進させる効果を持っている35,47,48)。本研 究では新たに YAC が iEPCs の増殖能を増強することを実証した。培地へ YAC

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を添加するだけで、細胞数を拡大培養前と比較して約1000倍弱増加させること が出来るため、有用性は非常に高いと考えられる。一般に ECs の拡大培養に用 いられるVEGF はhPSC 由来 ECsを静脈内皮細胞もしくは動脈内皮際細胞へと 分化誘導する性質を持つ30)。驚くべきことに、YACを添加することによって、

iEPCs を VEGF 非存在下において、性質を変化させることなく増殖させること

に成功した。また、KEGG解析およびGO解析により、YACはiEPCsのribosome

やtranslation initiationなど、タンパク質合成に関与する経路を刺激することが示

された。実際にタンパク質合成および細胞増殖、細胞生存、DNA修復などの基 本的な細胞機能を調節するribosomal protein49)は、YACを処理したiEPCsにおい て発現が上昇していた。また、YAC は細胞の生存と増殖に密接に関連する eukaryotic initiation factor などの翻訳開始に関連する遺伝子群の発現を上昇させ た 50)。さらに、puromycin 取り込み試験の結果より、実際にタンパク質合成が YAC 処理によって活性化されることが明らかとなった。これらの結果は、YAC がタンパク質合成の活性化を通じて iEPCs の増殖能力を高めることを示唆して いる51)

本研究ではいくつかの課題が残った。第一に、iEPCsの増殖能はFGF2および EGF が添加された EPC 培地(HE-SFMを改変した培地)に YAC を加えた条件 においても分化後30日から40日程度で減少した。この問題点はYACを加える 培地を他の培地に変更することで解決され得る。第二に、本研究においては、

YAC がどのシグナル経路を介してタンパク質合成経路を刺激するかを同定する ことが出来なかった。Y-27632 は ET-1 を阻害することにより心筋細胞の増殖を 誘導することが報告されている52)。実際にRNA-seqencing解析によってET-1の 遺伝子発現量が YAC 処理により低下していた (データ未収載)。また、

CHIR-99021は、mTORおよびS6Kの活性化を介して、HSCsのタンパク質合成経路を

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活性化することが示されている 53)。したがって、これらの経路は iEPCs のタン パク質合成に関与している可能性がある。YACが iEPCs を増殖させるシグナル 経路をより詳細に解析することによって、iEPCsの拡大培養がさらに効率化され ることが期待される。

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