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第4章 Eucalanus californicus の季節的鉛直移動による炭素輸送

4.4 考察

84

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る.カリフォルニア沖では,沖合にむかうジェット(流れ)や沿岸にむかう渦などにより,

E. californicus

が,水平的にも運ばれていくことが分かっている(

Smith & Lane, 1991

).

2

世 代目が

7

月以前に深層へと移動・拡散したとすると,本研究の休眠個体の初期値は過小評価 であったと考えられる.本種の越冬期間中の自然死亡係数は,

0.009

0.013 day

1であり,

E. bungii

0.001

0.0096day

1

Tsuda et al., 2004

)と比べると若干高かったが,

7

月以前に

C5

期まで成長した個体の数が入っていないとすれば死亡係数は変わることが考えられる.

同様に,

7

月以前に移動・拡散した個体の死亡による炭素輸送が欠落していたと考えると,

本研究の炭素輸送量の年変動は,ここで算出された値よりも差が大きいと考えられる.より 正確な炭素輸送量の把握のためには,今後,本研究での採集層である

600

m~

650

mよりも さらに深い層での調査を行う,あるいは,再生産期に出現した

C5

期の体長を測定して世代 を確認し,鉛直移動した個体数を正確に把握することが必要であろう.

4.4.3 E. californicus

による中・深層への炭素輸送量と気候調整サービスとの比較

相模湾の

E. californicus

一種による炭素輸送の価値は

16

万円~

27

万円であり,第

2

章で

得た相模湾の

CO

2吸収量に対する本種の

CO

2輸送量はわずかに

0.07

0.08

%であることが 明らかとなった.ただし,

4.4.2

で述べたように,本研究が過小評価であったことを考慮す ると,実際にはもう少し高い割合になると考えられる.

親潮域の大型

Copepoda

(カイアシ類)

Neocalanus

3

種および

E. bungii

により輸送され る炭素は年間

0.12G

C

で百年程度海中に封じ込められるとされる.この輸送量は大気から 海洋へのネットの輸送量である

2.0G

C y

1

6

%に値し,生物活動による表層から中深層 への輸送量である

1.1G

C y

1

1.1

%にあたり(斎藤,

2007

),

Neocalanus

属の輸送によっ て北太平洋全体で吸収される

CO

2は

2004

年度の日本の

CO

2排出量の

46

%であるとされる

87

(斎藤ほか,

2003

2007

).このように,個々の種の分布が広く,輸送水深が深ければ,単 種でも輸送量は大きな値になる.

E. californicus

の分布も太平洋の東西に広く分布しており,相模湾での炭素輸送量が過小

評価であったことも加味すると日本周辺での経済評価をすれば,

E. californicus

の炭素輸送 による気候調整サービスの評価は高いものと推察される.

暖海域には,

E. californicus

と同じ

Eucalanidae

科に属し生殖活動に伴う季節的な鉛直移動

OVM

)を行う

Rhincalanus nasutusRhincalanus rostrifrons

などが生息しているが(

Shimode

et al., 2012b

),これらの種については,ようやくその生態が明らかになってきたところであ

り,体の大きさや休眠水深を考慮すると,本種と同様に炭素輸送の役割を十分に果たしてい ると考えられ,今後これらの種についても評価が必要であろう.

群集の種が多様であれば,多様な生活史をもつ種が存在し,それらの種の中に本種のよう な中・深層へ移動し広範囲に分布する種がいれば,その種は地球規模での炭素輸送の大きな 役割を果たしている可能性がある.また,本種のように出現個体数の年変動が大きい場合,

炭素輸送量も各年で大きく変化するものと考えられる.したがって,気候調整サービスに対 する種の多様性の貢献は大きいものと考えられた.

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