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中学生用学校ストレッサー尺度についての考察

 予備的調査において,中学生用学校ストレッサー尺度の信頼性及び正規性に ついて検討した。

 まず,中学生用学校ストレッサー尺度の信頼性について述べる。この尺度は

従来,「教師との関係」,「友人関係」,「部活動」,「学業」,「規則」,「委員会活動」

の6因子から構成されている。しかしながら,学校側の要望で「教師との関係」

の因子は用いず,「規則」と「委員会活動」の因子も信頼性の観点から分析に用 いなかった。「教師との関係」はさておき,「規則」,「委員会活動」の2つの因 子について信頼性が検出されなかったのはなぜだろう。データを処理する際,

この2つの因子についてはほとんどの生徒が0と回答していた。「規則」につ いては「校則をやぶってしかられた」や「服装や髪型について注意された」な

どの3つの質問から構成されており,学校が風紀に力を入れているのであれば,

先生から注意されなくても生徒は理解しているであろうし,風紀を守ってもい くだろう。「委員会活動」については「嫌な仕事や苦手な仕事をやらされた」や

「委員の仕事をやらなければならなかった」などの4つの質問から構成されて いる。「規則」,「委員会活動」は他の因子に比べ質問数が比較的に少ない。この

ことも得点が算出されなかった要因と考えられる。

 次に,正規性の問題について述べる。DSRS−C得点, CCES−R得点について は正規分布していたものの,学校ストレッサー全般については,その正規性が 否定された。そのため,学校ストレッサー得点については,その全てを開平変 換し数値を調整した後,ヒストグラムやコルモゴロフースミルノブの検定を用 い正規性の確認をした。結果として,「友人関係」と「部活動」についてはその 正規性が否定された。このような結果となった原因としてこの尺度への回答の 方法の要因が考えられる。中学生用学校ストレッサー尺度はDSRS−Cや

CCES−Rのようにリッカー一一一Lト方式の質問紙とは異なっている。まず,ストレッ サーをどの程度経験したかという頻度の得点(全然なかった=0,たまにあった

=1,時々あった=2,よくあつた=3)とそのストレッサーを経験した時の嫌悪度 の得点(全然いやでなかった=0,少しいやであった=1,かなりいやであった=2,

とてもいやであった=3)をかけあわせたものを1っの質問の得点としている。

例えば,あるストレッサーがよくあつても(=3),その嫌悪度が全然いやでな かった(=0)であったならば得点は0なのである。この方式で回答するのであ れば0と得点化される確率の方が多いはずである。そのため,正規分布するこ

となく,oの方へ人数が偏ったのだと考えることができる(Fig.6, Fig.7)。

 この尺度を作成した岡安ら(1992)のデータと本研究の学校ストレッサーの データを比較してみた(Table 6, Table 7)。やはり,「規則」と「委員会活動」

についてはサンプル数の問題もあるが,t検定の分析の結果では,2つに有意 な差は見られなかったことから先行研究と似通ったデータであったと言える。

この尺度の正規性については0が最頻値となることが予想されるため,0を基 準に分布は下降をたどるのではないだろうか。この見解については,今後のさ

らなる研究が望まれるところである。

 分散分析,相関分析,共分散構造分析によって示された知見を以下に記述す

る。

DSRS−Cの分散:分析による考察

 現在まで,DSRS−Cを用いた抑うっに対する研究は数多く行われている。佐 藤ら(2010)におけるDSRS−Cのデータを本研究のものとt検定を用いて比較

してみると(Table 4, Table 5),有意な差はみられなかったことからDSRS−C においても先行研究と本研究のデータは似通ったものと言えることができる。

 また,DSRS−Cの分散分析の結果から,女子は男子よりも抑うつが有意に高 い傾向にあることが示唆された。これは,これまで行われてきた研究と一致す る。例えば,Nolen−Hoeksema&Girgus(1994)は,思春期の抑うつは児童期 までとは異なり,女子の方が男子よりも抑うつの出現が多くなり,成人と同様 の傾向を示すようになる。と述べている。さらに,田中(2006)は,女子では 身体発達が進んでいるほど,抑うっを高めてしまうという傾向を明らかにして

いる。これに関連して,Ge,Kim,Brody, Conger, Simons, Gibbons,&Cutorona

(2003)では,早熟の女子は抑うつ傾向の高いこということを明らかにしてい る。このように,発育タイミングが抑うつに直接関連する可能性が示されてい る(上長,2007)。加えて,晩熟の男子は抑うつが高いことも示されている

(Kaltiala−Heino et al,2003)。また, Mccabe et al(2001)も,女子は思春

期の身体発育の後に,身体満足度が低下(体重など)することで抑うつが高ま り,男子は身体発育の後に身体的満足度が高まり抑うつが低下するということ を示している。これらの見解を総合すると,1年生よりも2年生,2年生より も3年生の方が抑うつが高いという結果が得られるはずである。佐藤ら(2010)

は中学生を対象に抑うっに関する調査を行っており,その中で学年が上がれば 上がるほど抑うつ得点は上昇するという結果を示している。さらに,最も抑う つ得点が高かったのは,3年生女子であり,これは上述したことと一致してい

る。上述したこと以外にも,学年が上がるにつれて,高校受験という大きなイ ベントを意識し始めることや,部活動における自分の責任や重要性といったも のも増えていくだろう。また,自分自身のアイデンティティ・の確立,それに伴

う周囲の友達,教師との考え方の不一致ということも多くなっていくだろうと

考えることができる。辻井ら(1990)は小学生,中学生,高校生を対象に子ど も用抑うつ尺度(Children s Depression lnventory;以下CDI)を用いた抑う つの調査を行っており,そこでも,年齢があがるにつれて,抑うつ得点が高く なるという傾向が示されている。

 しかしながら,本研究においては認められたのは性別においてDSRS−C得点 に有意な差のある傾向がみられたに留まった。この原因としては,先行研究と の分析の対象者数の差が挙げられる。本研究では,91名を対象に分析を行った。

佐藤ら(2010)の行った研究においては,332名を対象として分析を行ってい る。辻井ら(1990)においても,小学生,中学生,高校生合わせて551名を対 象に研究を行っている。対象者が多ければ多いほど,統計的にも信頼性の高い 結果にもなるだろう。加えて,性別はもちろんのこと,学年においても有意な 差がみられたり,交互作用にも有意な結果が出たのかもしれない。

CCES−Rの分散分析による考察

 認知の誤りを測定するCCES−Rの得点において性別に有意な差はみられなか ったが,学年において有意な差のある傾向,交互作用において有意傾向がみら

れた。

 まず,学年においては,2年生は3年生よりもCCES−Rの得点が高かった。

また,交互作用の結果から,2年生の男子の得点が1番高い傾向にあることが 示された。しかしながら,これらの結果を裏付けるような先行研究はまだない。

CCES−Rを作成した佐藤ら(2004)の研究をみてみても,対象が児童であると いう本研究との差異もあることに加え,CCES−Rの得点を性別,学年別に分析 してはいなかった。このことからもこれから先,CCES−Rを用いてその得点に 性差や学年差があるのか,あるとすればどのような結果になるのかを調査して いく必要があるだろう。認知の誤りと同様の認知的な変数としては,自動思考 が挙げられる。淵田ら(2008)においては,この自動思考を測定する児童用自 動思考尺度(Automatic Thoughts lnventory for Children:以下ATIC)を用い て,中学生を対象に,自動思考に性差,学年差があるのかについて検討をして いる。その結果,自動思考に性差は認められなかったものの,学年差があった ということを明らかにしている。また,ATICは,「自己の否定」,「絶望的思考」

といったネガティブな2因子と,「将来への期待」,「サポートへの期待」とい ったポジティブな2因子の計4因子から構成されており,ネガティブな因子の 得点は学年が高いほど有意に高くなり,ポジティブな因子の得点は学年が低い

ほど有意に低くなる,という結果を報告している。認知の誤りについてもこれ と同様の結果となることが予想される。そのためには,中学生を対象とした認 知の誤りについての研究の数がこれから充実していくことが望まれる。研究数 が充実することで認知の誤りに対して,中学生はどのような傾向を持っている のかということも明らかになっていくはずである。

 この認知の誤りについては,前々から抑うつや不安症状との関連が指摘され ていた(例えば佐藤ら,2009;佐藤ら,2004など)。この指摘に基づいて,認知

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