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4-1 デシカントロータの再生温湿度の検討

実測結果の各月の絶対湿度の変動から再生側デシカントロータ通過前後で絶対湿度の低 下がみられ、水蒸気の脱着がされず、吸着を行われている時間帯があることがわかった。

そこで、吸着が行われた原因を探るため、脱着と吸着が行われた場合での各プロセスの違 いを確認するために空気線図による比較を行った。図 4.1 の空気線図に再生側デシカント ロータ通過時に水蒸気の脱着が行われた場合と、吸着が行われた場合における各場所の温 湿度を示す。外気、給気、還気、全熱交換器の給気側と排気側、除湿側デシカントロータ、

蒸発器、凝縮器通過後での値は異なるものの、脱着が行われた場合と、吸着が行われた場 合のどちらにおいても各場所における冷却、除湿、加熱、加湿のプロセスは、同様に行わ れていた。このことから、再生側デシカントロータ通過時における脱着と吸着には、各場 所における温湿度ではなく、回転制御が影響を与えていると考えられる。また、デシカン トロータの熱分布は均一ではないため、再生側デシカントロータ通過時の測定器設置位置 に問題があることも考えられる。

図 4.1 空気線図

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4-2 回帰分析による給気温湿度に関する検討

給気設定温湿度に影響を与えている因子を探るため、回帰分析によりそれぞれの測定箇 所の温湿度と電力量の影響度を調べた。回帰分析はある変数(x)が他の変数(y) とどのよう な関係にあるのかを推定するために用いられる。また、一方の変数(x)がもう一方の変数(y) にどのように影響しているのかが 回帰式として表される。表 4.1 に給気温湿度それぞれの 回帰分析の結果を示す。本研究では P 値により因子を確定させた。P 値はその因子が意味の ない可能性の確立を示しており、この値が一般的 0.05 以下になれば信用できるとされてい る。そこで、0.05 より上の因子は除外し、残った因子が給気温湿度に影響を与えている因 子だと考え分析を行った。

その結果、給気温度に影響を与えている因子は、還気温湿度(𝜃𝑅𝐴, 𝑥𝑅𝐴)、蒸発器通過後の 温湿度(𝜃2, 𝑥2)、除湿側デシカントロータ通過後の温湿度(𝜃3, 𝑥3)、排気側全熱交換機通過後 の温湿度(𝜃4, 𝑥4)、凝縮器通過後の温湿度(𝜃5, 𝑥5)となった。また、給気湿度に影響を与えて いるのは、蒸発器の通過後の温湿度(𝜃2, 𝑥2)、除湿側デシカントロータ通過後の湿度(𝑥3)、

排気側全熱交換機通過後の温度(𝜃4)、凝縮器通過後の温湿度(𝜃5, 𝑥5)となった。回帰分析に より得られた給気温度と給気湿度の回帰式を(12)と(13)に示す。

𝜃𝑆𝐴=0.15𝜃𝑅𝐴+0.14𝑥𝑅𝐴+0.01𝜃2 +0.29𝑥2+0.28𝜃3-0.60𝑥3+0.61𝜃4

-0.42𝑥4-0.12𝜃5+0.50𝑥5+2.6・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(12)

𝑥𝑆𝐴=-0.05𝜃2+0.17𝑥2+0.68𝑥3-0.06𝜃4+0.05𝜃5+0.27𝑥5-0.43・・・・・・・・・・・・・・(13)

回帰式の計算結果から得た給気温湿度と、測定した給気温湿度との関係を図 4.2 に示す。

回帰式の計算結果から得られた給気温湿度と測定した給気温湿度の重相関係数𝑅2の値が 1 に近いことから、回帰式から考えられた影響を与えている因子は妥当だと考えられる。

係数の絶対値の大きさから各因子の影響度を考えると給気温度においては、排気側全熱 交換機通過後の温度(𝜃4)、除湿側デシカントロータ通過後の湿度(𝑥3)、凝縮器通過後の湿度 (𝑥5)の 3 つが順に大きいことが分かった。給気湿度においては、除湿側デシカントロータ通 過後の湿度(𝑥3)、凝縮器通過後の湿度(𝑥5)、蒸発器の通過後の湿度(𝑥2)の 3 つが順に大きい ことが分かった。

表 4.2 に各因子の変動を示す。求めたい因子を変数として、そのほかの因子には表 1 の 最小値を回帰式に代入し計算した結果、設定温度 27.0℃以下で給気するためには、排気側 全熱交換機通過後の温度は 29.3℃以下、除湿側デシカントロータ通過後の温度は 30.4℃以 下、凝縮器通過後の湿度は 17.2g 以下にする必要があることがわかった。また、設定湿度 10.5g 以下に給気するためには、除湿側デシカントロータ通過後の湿度は 9.9g 以下、凝縮 器通過後の湿度は 26.3g 以下にする必要があることがわかった。

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表 4.1 回帰分析結果[左:給気温度、右:給気湿度]

図 4.2 回帰式の計算結果と給気温湿度の関係

表 4.2 因子の変動 回帰統計

重相関 R 0.985042 重決定 R2 0.970308 補正 R2 0.9692 標準誤差 0.2029

観測数 279

係数 標準誤差 P-値

切片 2.615123 1.044841 0.012914 0.150006 0.059682 0.012543 0.136437 0.047437 0.004349 0.013778 0.002629 3.23E-07 0.288563 0.119142 0.016099 0.283087 0.034855 1.69E-14 -0.60017 0.079949 8.99E-13 0.614844 0.025677 1.55E-68 -0.41814 0.210019 0.047501 -0.11883 0.030315 0.000113 0.495014 0.195154 0.011764

xRA

θRA

θ2

x2

θ3

x3

θ4 θ5

x4

x5

回帰統計 重相関 R 0.962587 重決定 R2 0.926573 補正 R2 0.924954 標準誤差 0.258186

観測数 279

係数 標準誤差 P-値

切片 -0.43426 0.902117 0.630638 -0.05401 0.002909 2.96E-50 0.173071 0.087586 0.049163 0.678951 0.050281 3.79E-32 -0.05976 0.021363 0.005522 0.05027 0.022183 0.024229 0.266035 0.015102 7.2E-47 θ2

θ5 θ4

x2

x3

x5

y = 0.9999x R² = 0.9694

y = 0.9994x R² = 0.9208

0 5 10 15 20 25 30 35

0 5 10 15 20 25 30 35

計算結果

測定による給気温湿度 給気温度 給絶対湿度

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4-3 デシカントロータ回転数に関する検討

表 4.3 に風量の各変化条件と、図4.3に風量変化時のデシカントロータの各結果を示す。

既往の研究3)の風量変化によるデシカントロータの能力変化の検証から、回転数を上げるこ とでデシカントロータの除湿性能は上がるが、風量に対して回転数が早すぎた場合、デシ カントロータの顕熱交換量が多くなることにより除湿性能の低下がすることがわかった。

既往の研究ではデシカントロータ回転数が 29rph に対し、給気風量が 1000𝑚3/ℎになると除 湿性の低下が見られた。本研給のデシカントロータの回転数は 5~20rph、還気風量は 9,765𝑚3/ℎであるため、既往の研究に比べデシカントロータが遅く回転していることが分か った。既往の研究でもっとも良い結果であった 3000𝑚3/ℎと比較しても遅く回転しているこ とが分かり、除湿性能を上げるためには回転数を上げる必要があることが考えられた。ま た、図 4.4 に示すように、遅く回転している顕熱交換量が少ない現状においても、7 月~9 月の温度頻度見ると設定温度に給気できていない割合が約 3 割あり、設定温度を満たすこ とは困難であると考えられた。

表4.3 風量の各変化条件

図4.3 風量変化時のデシカントロータの各結果

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図 4.4 温度頻度(9:00~18:00)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

外気 還気 給気 再生温度 外気 還気 給気 再生温度 外気 還気 給気 再生温度

7月 8月 9月

頻度[]

24℃~25℃ 25.1℃~27℃ 27.1℃~30℃ 30.1℃~34℃

38℃~40℃ 40.1℃~43℃ 43.1℃~46℃ 46.1℃~49℃

第 5 章

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