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第 5 章

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第 5 章 まとめ

ヒートポンプ式リタンエアデシカント空調機の夏期の実測調査を行い、以下の知見を得 た。

1)給気温度が設定温度 27.0℃以下であった割合は7月が約 5 割、8 月と 9 月が約 9 割であ った。給気湿度が設定湿度 10.5g以下であったのは7月が約 7 割、8 月が約 3 割、9 月は 約 9 割であった。7 月は給気設定温度に、8 月は設定温湿度にできていない割合が高かっ たことがわかった。これは外気温度 31.5℃以上の割合が各月の中で 7 月が大きかったた めだと考えられた。

2)再生温度は最小で約 38.0℃、最大で約 49.0℃を示し平均では約 47.0℃であったため低 温度で運転できていることが分かった。しかし、再生側デシカントロータ通過前後で絶 対湿度の低下がみられ、水蒸気の脱着が行われず、吸着が行われている時間帯があった。

これはデシカントロータ回転数制御による影響だと考えられた。

3) 各月の処理熱量の平均は 2,652MJ/day で、そのうち顕熱 1~4 割と潜熱は 6~9 割であっ た。また、除湿量の平均は 874kg/day、電力量の平均は 143kw/day であった。

4)全熱交換の温度交換効率は約 66%、湿度交換効率は約 70%であった。デシカントロータ の除湿効率は約 0.05g/kJ であったため、全熱交換機の温度交換効率と湿度交換効率にお いてはほぼ定格と同等の値を示した。デシカントロータの除湿効率においては定格以下の 値であった。

5)SHF 除湿負荷率 0.5 以上のとき、定格 0.23 を下回り、COP は熱負荷率 0.4 以上の時、定 格以上の性能を示すことがわかった。

6)給気温度と設定湿度にもっとも影響を与えているのはそれぞれ、排気側全熱交換機通過 後の温度と除湿側デシカントロータ通過後の湿度であることがわかった。また、それぞ れが設定温湿度で給気するために何℃以下にする必要があるかを回帰式に変動最小値を 代入し求めた結果、排気側全熱交換機通過後の温度は 29.3℃以下、除湿側デシカントロ ータ通過後の湿度は 9.9rg 以下にする必要があることがわかった。

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今後の課題

デシカントロータ再生時に水蒸気の吸着が行われている時間帯があり、それが回転数に よる影響、または、測定器の位置による問題だと考えられたが、どのようにすれば改善さ れるかは検討されなかった。より詳細な解析を行うために、デシカントロータ回転数の測 定を行う必要があることが考えられた。また、デシカントロータの除湿性能は回転数を早 くすることで上昇するが、顕熱交換量が多くなるため設定温度にするのは難しくなる。そ のため、従来通りの室内環境を維持するためには、ビル用マルチエアコンの室内負荷処理 に依存する形となる。ビル用マルチエアコンの性能を解析することで、より正確な温湿度 管理が行えると考えられた。

参考文献

1)安村直樹、永田久美:低温再生デシカントと全熱交換による換気負荷の軽減、日本冷凍 空調学会,86,pp. 9-13,2011-10

2)上村紘世 宋城基:ヒートポンプ式デシカント空調機の性能に関する研究 夏期における 実測調査、日本建築学会中国支部研究報告集、38、pp.317-320,2015-03

3)伊藤剛 安松直樹 平田清 中山和樹:低炭素化と知的生産性に配慮した最先端オフィ スにおける潜熱顕熱分離型空調の研究 第一報 レタンエアデシカント空調機の実負荷 運転における最適能力調整、日本冷凍空調学会論文集、pp.69-79、2012-11

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