第2章で分離したBVDV-nCPの遺伝子解析をすると、今回分離したウイルスには1a、
1cも含まれていたが大部分は1dに分類され、1970年代から1980年代にかけて日本や米国
で主に分離されたウイルス株と異なり、現代のオセアニアや中米では異なる遺伝子型の BVDV 1dが流行していることが示唆された。
NZLの1農場では、親牛とのペア血清としてFBSを入手した。今回の調査において BVDV の抗体陽性の妊娠牛から生まれたすべての牛胎子は、BVDV 抗体および BVDV の分離は陰性だったことから、抗体陽性の母牛から生まれる牛胎子は BVDV の子宮内 感染を免れていることが再確認され、適切な予防接種が BVDV の子宮内感染を根絶す ると考えられる。
BVDVが分離された牛胎子25頭は、一時的なウイルス血症を起こしていたのか免疫 寛容により持続感染が成立していたのかは、本調査では解明できない。しかしこれらの 牛胎子がすべて免疫寛容になっており持続感染牛として出生すると仮定すれば、BVDV に持続感染した牛が野外で約 1 %の割合で生まれてくることになり、自然界において BVDV を牛群に存続させる感染源として十分である。BVDV の垂直感染を制御するこ
31 とは家畜衛生上重要である。
市販されているFBSは200~500頭のFBSをPoolにして製品にしている。今回の調 査結果によると、FBSのBVDV抗体陽性率は1.60 %で、BVDVの分離率は0.91 %であ った。7あるいは8個体を混合してある混合血清を1検体として中和試験やウイルス分 離を行った 2014 年度 DOM 産 FBS においては 1 検体中に複数の抗体陽性個体や
BVDV-nCPの感染牛が存在した可能性は否定できないが、この血清群の BVDV抗体陽
性率およびその分離率を合計しても約2.51 %なので、その可能性は非常に低いと思われ る。妊娠牛が約280日の妊娠期間中にBVDV に感染する頻度に差がなく、死流産は胎 齢1日~40日、持続感染牛は胎齢 40日~125日、抗体陽性耐化牛は胎齢100 日~280 日の感染で起こるという仮定をたてると、BVDV-nCPの感染牛が0.91 %、抗体陽性牛が
1.6 %の割合で生じていたので、胎齢1~40日の母牛における流産は0.5~0.8 %程度起
きていたと考えられる。これらを合計すると、BVDVの子宮内感染は自然界で約3.0 % の妊娠牛に起きていることが示唆される。
数多くの細胞に BVDV の汚染が報告されている。細胞の培養には、屠場で採取した 牛血清が使用されることが多く、ウイルス血症を起こしている牛血清を使用したことで、
気が付かないうちにウイルスの汚染が起きていたと考えられる。特殊な研究機関や製薬 会社では FBS が使用されていたと思われるが、それらの機関で継代されていた細胞で もBVDVの汚染が報告されている。BVDVは56℃、30分の加熱処理では完全に不活化 しないことが報告されている(65)。約1 %のFBSからBVDVが分離された今回の報告は、
培養細胞における BVDV 汚染の現状を裏付けていると考える(35)。BVDV 抗体陰性や
BVDV-nCPの汚染が無い血清を入手することは非常に困難である現状が裏付けられた。
32
表3-1. BVDV抗体検査およびBVDV-nCP感染牛の検出に使用した血清.
1) 母牛139頭に受精するために放牧されている雄牛.
2) 検査血清は妊娠前に採取した.
採取年度 生産国名 個体数 親牛
父牛1)
2009 NZL
13
母牛2) 139
牛胎子
2009 NZL 139
2010 NZL 250
2011 NZL 124
2011 AUS 724
2012 NZL 121
2014 DOM 1,400
合計 2,758
33
表3-2. 国、年度別BVDV抗体検査およびBVDV-nCP検出結果.
1) 母牛139頭に受精するために放牧されている雄牛.
2) 妊娠前に採取した.
3) ND : 未検査.
4) 合計個体数に対する割合.
( ) ( ) ( ) ( ) 採取年度 生産国名 個体数
抗体陽性検体数 BVDV-nCP Nose KS86-1 KZ-91 分離数
親牛
父牛1)
2009 NZL 13 13 ND3) ND 0
母牛2) 139 138 ND ND 0
牛胎子
2009 NZL 139 0 0 0 0
2010 NZL 250 2 0 0 4
2011 NZL 124 5 3 0 3
2011 AUS 724 21 15 12 8
2012 NZL 121 1 1 0 1
2014 DOM 1,400 15 12 4 9
合計 2,758 44 31 16 25
1.60% 4) 1.12% 0.53% 0.91%
34 図3-1. BVDV-nCP系統樹解析.
2009年度から2014年度にかけて採取されたFBSから分離されたBVDV-nCP.
Neighbor-joining法による解析結果を示す.
2011年度ニュージーランド産の1分離株(2011NZL111)が1aに、2011年度オーストラリ ア産の2分離株(2011AU647、2011AU680)が1cに、それ以外の18株が1dに分類された.
1d
1c
1a
1b
3
2
35
第 4 章
牛パラインフルエンザウイルス 3 型の垂直感染
および免疫寛容牛の調査
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