第 1 章
7. 考察
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が重要な課題である 29。本解析では,TMDD model の全パラメータを推定するためのデー
タ(eg., 分泌型FKN濃度など)が不足していたためQSS近似を用いた。投与後5分,1時
間,2時間,4時間,8時間といった総FKN濃度が急激に変化する時間帯における頻回採血
や E6011 濃度の低濃度域のデータ(最小値 0.02 μg/mL~)により,KM(0.396 μg/mL)や
KSS(1.75 μg/mL)の推定の精度は高まったと考えられる。E6011の分泌型FKNに対する結
合親和性は実験よりKD=1. 728× 10−9 mol/L(0.27 µg/mL)であるが,最終PK/PDモデルに おいてKSSは1.75 µg/mLと推定された。KDとKSSの乖離はin vivoとin vitroの環境の違い によると考えられる。
新 規 作 用 機 序 のmAbの ヒ ト 初 回 投 与 量 設 定 に お い て は ,NOAEL(no observed adverse
effect level)だけでなく,MABELを検討することが推奨されており4,5,本FIH試験において
もMABELを検 討した。 検討にあ たって, データを 得る動 物種の選 択は重要 なポイン トで
ある 。E6011はヒ トとカニク イザルのFKNに対 しほぼ同じ用量依存 曲線をもっ て結合し,
カニクイザルのFKNに交差反応性を示したが,ラット,マウス及びウサギの各FKNに対し ては結合しなかった。このことから,動物種としてカニクイザルを用いて評価することは 適 切 で あ っ た と 考 え ら れ た 。 カ ニ ク イ ザ ル の 毒 性 試 験 に お け るE6011のNOAELは ,100 mg/kg以 上 で あ っ た 。NOAELか ら 初 回 投 与 量 を 設 定 す るFDAガ イ ダ ン ス3に 基 づ け ば ,
E6011の安全性面について考慮する要因としては,カニクイザルの血清中E6011濃度が非線
形性 であるこ と及び新規作用機序 である ことが挙げ られ,安 全性係 数を100ある いは1000 とした場合,初回投与量は1又は0.1 mg/kgと算出された。一方,MABELについては2通りの 方法で算出した。MABELは分泌型FKNをBASEから最大10%抑制するのに必要なE6011投与
量(mg/kg)と定義した。ガイドライン4
,5ではMABELという概念が提唱されるのみで,具
体 的 な 算 出 方 法 は 記 載 さ れ て お ら ず ,10%と い う 規 定 は な い 。 当 該 ガ イ ド ラ イ ン は , ABPI(Association of the British Pharmaceutical Industry)/BIA(BioIndustry Association)報告書31及
び第1相臨床試験のEXPERT SCIENTIFIC GROUP報告書32が元となった。これら二つの文書
中にはMABELの算出例示として,「5-10%」「20%」が用いられている。ガイドラインの パブリックコメント段階におけるEMEA(European Medicines Evaluation Agency) workshop において,アストラゼ ネカJennifer Sims氏は,ABPI/BIA早期臨床タスクフォースの成果の 発表 資料中でTGN1412を例にMABELを受 容体占有 率10%とし て算出し た33。E6011の開発 にあたっては,最小 の基準と考えられた10%をMABELとして用いることとし た。MABEL
は,M&Sを用いて推定したヒト血清中の分泌型FKN濃度(本研究)又はin vitroにおけるヒ
トCX3CR1発現細胞のヒトFKNによる遊走活性,それぞれを最大10%抑制するE6011の用量
と定義した。本研究ではMABELは0.007 mg/kgと算出された。一方,ヒトCX3CR1を発現さ せた細胞(マウスBリンパ球前駆細胞,B300.19)のヒトFKNによる遊走に対して10%抑制
するE6011濃度を算出すると3.2 ng/mLであった。E6011は生体内において細胞外液(血管内
及び組織間液:体重60 kgの場合は約12 L)に分布すると予想され,3.2 ng/mLに達するため に必要なE6011の用量は0.00064 mg/kg(0.0384 mg/60 kg)と計算される。すなわち,in vitro の細胞遊走阻害活性に基づくMABELは0.00064 mg/kgと算出された。
ヒトの初回投与量を設定する上で,算出根拠の違いにより異なる推定値が得られた場合,
国内のガイダンス5では科学的根拠に基づいて決定するように示されており,またEMEAガ イドライン4では最小の値を用いることが推奨されている。より大きな数値を採用する科学 的根 拠は見当たらなかった。このた め,E6011の初回 投与量の 選択に際 しては,最小値で ある細胞遊走阻害活性に基づくMABEL 0.00064 mg/kgを採用し,最終的に0.0006 mg/kgと決 定した。次用量は本研究で算出されたMABELに近似した0.006 mg/kgと設定した。初回投与 量の10倍と 高い設定 ではある が,MABELとし て算出さ れた数値 であるため設定可 能と考 えた 。最高用量 は,カニクイザル の4週間 反復投与毒 性試験に おいて少なくとも10倍以上 の用 量の安全性 が確認され ている用量 として10 mg/kgを設定 した。用量 幅は, 0.0006~1
mg/kgでは,毒性試験において最高用量の100 mg/kgまで毒性所見がみられていないことを
考慮して比較的広く設定した。また1~10 mg/kgでは,カニクイザルの単回静脈内投与時の
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血清 中E6011濃度 が投与量の 増加以上 に上昇し,非線形性を示したこ とから, 用量幅を狭
く設定した。
本FIH試験における血清中E6011濃度測定のための期間は以下のように設定した。推定 したヒトのPK/PD推移(6.2 )より, 0.0006~0.2 mg/kgでは投与後2週までに, 1~10
mg/kgでは投与後17週までに定量限界未満となった。また,ADAは血清中E6011濃度が
十分に低値となった後に検出される。このため,本FIH試験では1週間の投与入院期終了 後に7週間のフォローアップ1期を設定し(計8週間),高用量のコホートではさらに16 週間のフォローアップ2期を設定することとした(合計24週間)。