第1節 指導者のリーダーシップ行動評定について
調査結果、また、本論文の仮説である稲田(1994)①らの研究結果をもとに、指 導者のリーダーシップ行動と満足度との関係について考察を行う。
三隅らは、P行動・M行動について「集団における目標達成ないし課題解決へ志向 した行動・集団の自己保存の傾性を促進し、強化する行動」と述べ、稲田らは、P的 機能・M的機能について「課題達成への努力で直接演奏に関わること、とりわけ音楽 面全体の指導・人間関係維持に向けての努力」と述べている。これらのことから、指 導者のリーダーシップ行動、各合唱団の指導者のリーダーシップ類型についてみてい
く。
A合唱団指導者のリーダーシップ行動
(図1−2 A合唱団散布図)
A合唱団の指導者は、PM型的な傾向をもってい ることから、r合唱活動における目標の達成への指 導に関する努力」と「団員相互の、または、指導者
と団員問の人間関係維持に向けての努力」が子ども たちに高いレベルで認識されているといえる。また、
P行動得点・M行動得点の最小値、最大値から形成 される四角形が比較的小さいという特徴が見られ る。要するに、P行動得点(最小値一17.O O、
最大値一46.00)、M行動得点(最小値一20.
00、最大値一45.00)ともに、合唱団員の間
に見解の一致が見られるのである。
B合唱団指導者のリーダーシップ行動
B合唱団の指導者は、M型的指導者であることから、「団員相互の、または、指導者
①第2章第3節「合唱指導におけるリーダーシップ」
(図1−2 B合唱団散布図)
と団員間の人問関係維持に向けての努力」が子ども たちに認識されていると言えるだろう。しかし、表1
−2で見られる四角形が大きいという特徴が見られ、
P行動得点(最小値一10.00、最大値一44。0 0)・M行動得点(最小値一10.00、最大値一4
2.00)ともに、団員の見解に相違が見られる。
特に、P行動得点における得点のちらばりは、4団 体で最大である。これは、団員全員に、指導者のり一 ダーシップが効果的に作用していないのではないか
と考えられる。
C合唱団指導者リーダーシップ行動
(図1−2 C合唱団散布図)
C合唱団の指導者は、p m型的指導者であること から、C合唱団の指導者は、他の指導者に比べて、
r合唱活動における目標の達成への指導に関する 努力」、r団員相互の、または、指導者と団員問の人 間関係維持に向けての努力」がともに、子どもたち には認識されていない。また、表1−2で見られる 四角形が比較的小さいことから、P行動得点(最小 値一12.00、最大値一38.O O)、M行動得 点(最小値一19.00、最大値一38.00)に
おいては、見解の一致が見られる。
D合唱団指導者リーダーシップ行動
D合唱団の指導者は、M型的指導者であることから、B合唱団の指導者同様、「団員 相互の、または、指導者と団員間の人間関係維持に向けての努力」が子どもたちに認 識されていることが言えるだろう。しかし、表1−2で見られる四角形の特徴として、
底辺となるP行動得点では最小値から最大値の幅は狭く、高さとなるM行動得点の最 小値から最大値の幅が広いことから、P行動得点(最小値一17.00、最大値一3
3.00)において、団員の見解が一致しており、M行動得点(最小値一14.0
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0、最大値一49.00)においては見解の相違が あるということがみられる。これは、他の団体とは 異なる分布である。
(図1−2 D合唱団散布図)
以上のことから、P行動においては、4団体の指導者の中で、A合唱団指導者のP 行動得点がもっとも高く、逆に、C合唱団指導者はもっとも低い。他の2団体に関し ては、同じくらいの値である。また、特徴的な傾向が見られるのは、B合唱団(10
〜44)の得点には、ぱらつきが見られ、団員の指導者に対する見解に相違があるこ とが見てとれる。それに対し、D合唱団(17〜33)の得点は集中しており、団員 の指導者に対する見解が一致していることが見てとれる。
次に、M行動についても、4団体の指導者の中で、A合唱団の指導者のM行動得点 がもっとも高く、逆に、C合唱団の指導者のそれがもっとも低い。他の2団体に関し ては、同じくらいの値である。また、特徴的傾向としては、D合唱団(14〜49)
の得点には、ばらつきが見られ、団員の指導者に対する見解に相違があることが見て とれる。それに対して、C合唱団(19〜38)は得点が集中しており、指導者に対 する見解の一致が見られる。
以下に表にまとめる。
表1−3 各合唱団のP行動・M行動について リーダー
ツプ評
P行動得 順位
M行動得
順位 P行動の散
ばり
M行動の散
ばり
A合唱団
PM型的
11
集 集B合唱団 M型的 2 2 散 散
C合唱団
pm型的 4
4 集 集D合唱団 M型的 3 3 集 散
第2節 児童の満足度について
次に、子どもたちの満足度について各項目別に考察をおこなう。
1、「合唱団に対する満足度」
まず、「合唱団に対する満足度jの結果から見ていく。
平均値・S Dの数値からみると、各合唱団ともに、合唱団の現状に対して不満を抱 いているとは言いがたい。所属する合唱団への満足度は、どの合唱団も高いと言える だろう。満足度の順位としては(高得点団体から)、B合唱団、A合唱団、D合唱団、
C合唱団の順であった。
P行動得点・M行動得点と合唱団に対する満足度を照らし合わせると、順位的にほ ぽ一致していることが分かる。
以下に表に示す。
表2−1 P・M行動得点、合唱団に対する満足度
A合唱団 B合唱団 C合唱団 D合唱団
リーダー ップ評定
PM型的
M型的pm型的
M型的P得点順位 1 2 4 3
M得点順位
1
24
3満足度 2
1 4
3P行動得点・M行動得点(平均値)がともに高得点であれば、満足度もそれに比例 して高くなり、P行動得点・M行動得点(平均値)が低ければ、満足度も比例して低 くなるということが見てとれる。つまり、満足度という観点のみから見れば、歌唱指 導にもP行動得点・M行動得点ともに高いリーダーが望ましいことが言えるだろう。
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2、「集団に対する同一化』
平均値・SDの数値からみると、どの合唱団も高い同一化を示しており、それほど 極端な差異は見られなかった。多くの団員が、個々の合唱団の中に自分の存在への安 定感を得ていると考えられる。個人の緊張を緩め、警戒心が解かれているということ である。順位としては(高得点団体から)、A合唱団、B合唱団・C合唱団、D合唱団 の順であった。4団体の数値にそれほど違いが見られなかったことから、P行動得点・
M行動得点との間に関係を見出すことは難しい。
3、「児童の習熟度」
これは、「児童の習熟度」に対する質問の回答で、商得点であるほど、自信を持ち、
充実した練習ができていると感じていることをあらわす。反対に、得点が低ければ、
練習に不安を感じ、自信を持てていないことを示す。
平均値・S Dの数値からみて、子どもたちは、自らの習熟度に関して不安を感じて いる様子はなく、歌う際に、不安を抱きながら歌っている子どもは、少ないと思われ る。順位としては(高得点団体から)、B合唱団、A合唱団・D合唱団、C合唱団の順
であった。
しかし、習熟度の質問項目①「練習してもみんなについていけない気がしますか。」
に対しての理由から、個々の合唱団の特徴がみることができる。
A合唱団においては、指導者への信頼、仲間関係につながる理由からついていけて いると判断した団員が多かった。一方B、D合唱団においては、「小さい子がいるから
(同じことをしているので、小さい子よりはよくできる)」という団の特有性格(団員 の年齢層など)からついていけていると判断した団員もいた。このことはB、D合唱 団の調査対象が1年生から6年生と幅広かったのに対し、A合唱団では対象が4年生 に限定されていたことが影響しているように思う。
B・C・D合唱団共通してr分からなかったら、自分で(家で)練習する」という 理由が多く見られた。これは、団員の合唱活動に対する(または、歌うことに対して の)意欲が強く、自主性も持っていることを示している。
C・D合唱団では、「自分の声とみんなの声がちがうような気がする」などと不安を 抱いており、それが、指導者に「地声である、音程がおかしい」と言われたことなど、
指導者の働きかけによるものであることを理由にする団員もいた。
4、「児童の意欲」
いずれの合唱団においても、団員は、歌うということが楽しい、もしく1ま、歌うこ とが好きであるという子どもが多いと思われる。しかし、子どもたちがそのような感 情を抱くようになったのが、入団前からなのか、合唱団に入団してからなのかという
ことについては、この調査からはわからない。順位としては(高得点団体から)、A合 唱団、B合唱団・D合唱団、C合唱団の順であった。
以下に表にまとめる。
表2−5 P・M行動得点、子どもたちの意欲
A合唱団 B合唱団 C合唱団 D合唱団
リーダー ップ類型
PM型的
M型的pm型的 M型的
P得点順位
1
24
3M得点順位
1
24
3意欲
1
24
3児童の意欲に関する結果もP行動得点とM行動得点と照らし合わせると、両得点と 児童の意欲についての得点と一致しており、P行動得点・M行動得点(平均値〉 がと もに商得点であれば、児童の意欲もそれに比例して高くなり、P行動得点・M行動得 点(平均値)が低ければ、児童の意欲も比例して低くなるということが見てとれる。
つまり、児童の意欲に関しても、P行動得点・M行動得点ともに高いリーダーが望ま しいということが言えるだろう。
5、「集団からの圧力」
「集団からの圧力」と聞くと、子どもたちがその圧力によって、肩身の狭い窮屈な 思いをするというようなイメージがあるが、「集団からの圧力」というのは、目標を達 成し、さらに発展しようという前向きな動きに伴い生じるものである。しかし、集団
からの圧力が高すぎると、個性をつぶすことにつながる場合もある。
A合唱団は、集団からの圧力が高い。B・C合唱団は同値程度で比較的高めである。
D合唱団は、とくに低い。D合唱団においては、集団の目標が、集団の全体の意識と
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