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考察

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第 5 章 住宅景観シミュレーションシステムの動 作確認実験作確認実験

5.4 考察

実物体 実物体

CG CG

正しい遮蔽関係 実際に表示される映像

図 5.26: オクルージョンの例

また、一般的に太陽光環境下ではPCの液晶画面は非常に見づらくなる。本実験で は制御用PCを日陰に配置することで、問題なくPCを操作することができた。制御用 PCを固定して使用するのであれば、適当な日陰がない環境においても、小型のテント や傘などを用いることでPCを使用することが可能であると考えられる。

試作システムではカメラレンズに焦点距離4mmのレンズを使用した。そのため、比 較的近い距離からでも広範囲を撮影でき、住宅の全体像を見ることができた。焦点距 離の長いレンズを用いた場合には、住宅の全体像を見るには遠距離から撮影せねばな らず、本実験ほどの臨場感は得られなかったと予想される。ただし、焦点距離4mmの レンズを用いたことで、撮影された現実空間の映像は、画面の端の方が大きく歪曲し て表示された。カメラで撮影された映像を補正した上で、CGを重畳表示することが望 まれる。

試作システムで用いたHMDは重量が85gと非常に軽く、これを装着することでス トレスを感じることはなかった。ただし、CCDカメラを搭載したためにHMDのバラ ンスが崩れてしまった。今後、カメラを搭載してもHMDを安定して装着できるよう、

カメラの搭載方法を考える必要がある。

また、HMDからはカメラとHMDを制御用PCへ接続するためのケーブルが出てい たが、視界を回したりするために頭部を動かす際にこのケーブルが邪魔になることは なく、図4.2に示したようにクライアントがバックパックPCを装着した場合には、ク ライアントは自由に動き回れるようになると予想される。

5.4.2 トラッキングの安定性に関する考察

撮影しているマーカ全てが日陰に入っているという、マーカ面の明るさが一定であ る状況では、トラッキングは非常に安定して行え、また表示位置がずれた際も、その誤

差は数cm〜数十cm程度であり、高精度のトラッキングが行えた。日陰とはいえ、屋

外の高照度環境下においてトラッキングが安定して行えたことで、再帰性反射材を用 いたマーカを使用することは有用であるといえる。

しかし、マーカの一部分に太陽光が入射した場合、そのマーカを認識できなくなっ た。画像処理によりマーカを認識する際、撮影環境における照度により、マーカのエッ ジを認識しやすいカメラの輝度が決まっている。マーカ面に入射した太陽光のために、

マーカ面の明るさが部分的に変わり、マーカのエッジを認識するために適したカメラ の輝度が、マーカ面内で部分的に異なるという状況になり、マーカの白色領域と黒色 領域のエッジが認識できず、結果マーカの認識に失敗したと考えられる。また、マーカ

群のうち一部が日向にある場合に、トラッキングができなくなった。この問題も同様 に、マーカを認識しやすいカメラの輝度が日向にあるマーカと日陰にあるマーカで異 なるため、同一カメラ画像上では日陰にあるマーカしかマーカとして認識できなかっ たと考えられる。本実験では環境中に設置したマーカは9個と少なかった。円形マーカ を用いたトラッキングでは、同時に3個のマーカを認識していなければならないため、

認識できるマーカが減少したことによってトラッキングができなくなったと考えられ る。さらに、明るさが異なることで認識できなくなったマーカを、別のIDのマーカと して誤認識することもある。この場合、トラッキングを行うために十分な数のマーカ を正常に認識していたとしても、トラッキング結果に乱れが生じる。

これらの問題に対しては、全てのマーカが日向にあるか日陰にあるように配置する、

環境中に設置するマーカの数を増やす、明るさの異なるマーカであってもマーカとし て認識できるアルゴリズムを開発する、トラッキング結果に瞬間的に大きな乱れが生 じた場合にそれを補正するアルゴリズムを開発するなどの対応策が必要である。また、

マーカの配置に関しては、再帰性反射材製マーカであっても太陽光の影響が少ない方 がマーカを認識しやすいため、マーカは日陰に配置する方が良いと考えられる。

5.4.3 住宅景観シミュレーションシステムの機能に関する考察

開発したソフトウェアについては、期待通りの動作が確認できた。様々な角度から 住宅のCGを見ることができ、現実空間の空き地に仮想の住宅があたかも実際に存在 するように表示することができたといえる。特にモデル用マーカを用いてのCGの重 畳表示については、モデル表示位置の移動を非常に直感的に行うことができ、予想以 上に細かく表示位置を調整できた。また、HMD装着時には現実空間における仮想物体 の表示位置が把握しやすかったため、高い没入感が得られたと考えられる。

ただし、本システムではオクルージョンを考慮していないため、現実にはCGより も手前にあるはずの物もCGに隠れて表示されてしまう。そのため、HMDに表示され る映像のみを見ていては、現実空間にある物体を目印にできないため、クライアント とサポーターの意思疎通がやや煩雑になってしまった。

また、本研究で実装した住宅景観シミュレーションシステムの機能は、実際に住宅 の新築・改築をする現場の需要にあわせたものではない。

よって今後は、オクルージョンを考慮してのソフトウェア開発や、より実際の住宅 に近いCGの作成を行うこと、並びにハウスメーカーの方にアンケート等を行い、実 際の現場で本システムに必要とされる機能を調査し、またその機能を実装した上で実

際に使用することで本システムの有用性を評価することが望まれる。

5.4.4 システムの実用化に向けての課題

本項ではトラッキング手法を含めてのシステム全体の見直しと、システムの実用化 への課題のまとめを述べる。

本研究では、本システムが企業に受け入れられやすいように、システムを安価で簡 便に使用できるものとするため、ビジョンセンサを用いたトラッキング手法を用いた。

さらにトラッキングの安定性の観点から人工マーカ法を選択した。再帰性反射材を用 いて作成したマーカを使用することで、屋外でも高精度で安定したトラッキングを行 うことができた。ただし、現在のMAMSによるマーカの位置計測は、自動計測が問題 なく行えたとしても、表3.4に示すように、マーカ1つあたり40秒〜50秒程度の時間 がかかる。環境中に人工マーカを設置する作業時間も含めると、使用するマーカが10 数個程度であっても、事前準備に30分程度かかってしまい、MAMSを用いることであ る程度事前準備にかかる労力は軽減されたとはいえ、やはりまだ煩雑であるといえる。

一方で、自然特徴点を使用するトラッキング手法では、環境中から特徴点を抽出する ため、事前準備を必要としない。そのため、実用化を考える際に企業に受け入れられ やすいのは、自然特徴点法であると考えられる。しかし、2.1.4項で述べたように、現 状では自然特徴点法は、計算負荷が高く、また複数画像間の特徴点同士の対応付けが 困難であったり、照度変化の影響を大きく受けたりとトラッキングの安定性の面で問 題がある。今後、自然特徴点を用いてリアルタイムで安定したトラッキングが行える 手法が開発されれば、そちらの手法を用いることが望ましい。

また、本研究では人工マーカとして円形マーカを用いた。円形マーカは正方形マー カに比べ、遠距離から撮影しても特徴点を認識しやすいという利点がある。円形マー カを用いてトラッキングを行う場合、安定したトラッキングを行うにはカメラ画像中 でマーカが4つ認識されている必要がある。マーカを設置する位置は、このことを考 慮した上でマニュアル化しておくことが望ましい。そのためには、クライアントの移 動範囲をある程度制限するなどして、クライアントの視界の移動範囲を推定し、その 視界の移動に十分に対応できるマーカの個数や配置位置を検討し、さらに安定したト ラッキングが行えるかどうかを検証しなければならない。

動作確認実験においては、クライアントの視点位置を、家の正面から右斜め45程 度の範囲として想定したため、マーカの配置位置は面状であったが、家を後ろから見 るなど、クライアントに360の視点移動を許した場合、マーカの配置位置は、環境を

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