• 検索結果がありません。

線形方程式の解と安定性

第 9 章 量子重力的宇宙論 33

11.2 線形方程式の解と安定性

11.2. 線形方程式の解と安定性 61

期値である原始パワースペクトルと同定する。

ランニング結合定数が小さい初期時間τiでは重力ポテンシャルはΨ = Φ =φを満たすので、初期条件を

Φ(τ˜ i, k) = ˜Ψ(τi, k)

と設定する。一方、結合定数が発散する相転移点ではΨ =Φとなるこ とが式(10.2.4)から読み取れるので、境界条件として

Φ(τ˜ Λ, k) + ˜Ψ(τΛ, k) = 0 (11.2.1) を課して、(10.2.3)と(10.2.4)の連立微分方程式を物理時間τについて数 値的に解くことにする。

初期と相転移点ではΦとΨの2点相関スペクトルは同じになるので、

以下ではΦを使ってスカラースペクトルを表すことにする。重力ポテン シャルの時間変化を表す遷移関数を

Φ(τ˜ Λ, k) = TΦΛ, τi) ˜Φ(τi, k)

と定義すると、原始パワースペクトルはPΦΛ, k) = TΦ2Λ, τi)Pφi, k)で 与えられる。

線形近似では共動波数kを固定して解く。微分の階数に応じてスケー ル因子a(τ)をくくりだし、HDを使って方程式全体を無次元化すると2、 共動波数に依存した− |∂2を含む項は物理的波数の関数k2/m2a(τ)2に置 き換わる。ここで、分母のスケール因子は背景時空の方程式の解で、数 値計算する際は初期値をa(τi) = 1と規格化してPlanck定数HDmに 書き換えている。

インフレーションによってスケール因子a(τ)が大きくなると、物理的 波数は急速に小さくなり、相転移付近では運動方程式はもはや波数依存 性を持たなくなる。そのため、原始パワースペクトルのパターンは相転 移のダイナミクスと関係した現象論的パラメータβ0、a1、κによらない。

2物理時間τを無次元化した時間t=HDτに置き換えるとよい。

11.2. 線形方程式の解と安定性 63

-0.05 0.05 0.15 0.25

-3 -2 -1 0 1

-0.0004 0 0.0004 0.0008

1.74 1.76 1.78

ΦandΨ

log10(τ /τP)

τΛ

図 11.1: BardeenポテンシャルΦ()Ψ()のインフレーション背景時空で の線形発展方程式の解。初期値はΦ = Ψ(=φ)を満たす定数1/

20で、共動波 数はk = 0.01Mpc1と設定している。その他のパラメータはm = 0.0156 (=

60λ)Mpc1Bardeenポテンシャルは振幅を減少させながら変化して相転移点 τΛではΦ =Ψとなる。

ここでは、b1 = 10として計算する。共動座標でのPlanckスケールは m = 0.0156Mpc1 とした。インフレーション時代の膨張率(e-foldings) はおおよそ二つの質量スケールの比HDQGになる。ここでは、前章 で採用した値HDQG = 60を使う、また現象論的パラメータも同じ、

β0/b1 = 0.06、a1/b1 = 0.01、κ = 0.5を使用する。このとき、膨張率は Ne = 65.0となる。初期の重力ポテンシャルの振幅は1/

2b1 = Pφと する。計算結果を図11.1と図11.2に示す。重力のスカラーゆらぎは安定 でインフレーション時代に振幅が小さくなることが分かる。

テンソル場の線形発展方程式を初期値

At = 105で解くと、図11.3 を得る。テンソルゆらぎの振幅は保存されて最後まで小さいまま変わら ないことが分かる。

ベクトルゆらぎはFriedmann時空に入ると減衰して消えてなくなるの

0.00 0.10 0.20

-2 -1

0

1 10-3

10-2 0.00

0.10 0.20

Bardeen Potential Φ(b1=10, m=0.0156)

proper time, log10(τ/τp)

k [Mpc-1]

58.0 58.5

59.0 59.5

60.0 10-3

10-2 1 × 10-4

3 × 10-4 5 × 10-4

proper time τ

k [Mpc-1]

図 11.2: BardeenポテンシャルΦの時間発展。相転移点τ = 60での線が原始 パワースペクトルに相当する。

+1 × 10-5

-2 -1 0 10-3 1

10-2 5 × 10-6

1 × 10-5 2 × 10-5

Tensor Perturbation (b1=10, m=0.0156)

proper time, log10(τ/τp) k [Mpc-1]

図 11.3: テンソルゆらぎの線形発展方程式の解。

でここでは考えないことにする。

非ガウス性の効果 この小節では共形場理論で記述されるRiegert場のダ イナミクスの非線形効果について考察する。共形不変性は量子論的な一般 座標不変性の帰結であることから、ここでは一般座標不変な演算子である スカラー曲率を用いてスカラーゆらぎを考える。初期条件τφ=τ2φ = 0 のもとで、無次元化されたスカラー曲率演算子は

δR = δR

12m2 = 1

2m2e(− |∂2φ−∂iφ∂iφ)

11.2. 線形方程式の解と安定性 65 と表される。共動運動量空間でのFourier変換を

δ˜R(k) = k2

2m2φ˜NL(k) (11.2.2) と書くと、非線形項を取り入れたRiegert場はφの2次まで展開すると

˜

φNL(k) = ˜φ(k) +

d3q

(2π)3φ˜(k/2q) ˜φ(k/2 +q)

(3 4 + q2

k2

)

(11.2.3) と表される。この式は、関係式φNL(x) = φ(x) +fNLφ2(x)で定義される 非ガウス性パラメータがおよそfNL 1であることを表している。

初期ではゆらぎの振幅が比較的大きいのでこの非線形項の寄与によっ てスペクトル指数がns >1にシフトすると考えられる。一方、非ガウス 性は一般座標不変性によって決まっているので、その大きさは時間発展 の間ほぼfNK 1程度に保たれる。そのため、インフレーション時代に 振幅が1/2b1からAs (1010)程度まで小さくなると、非線形効果は消 えて、スカラースペクトルはHarrison-Zel’dovich-Peeblesスペクトルに近 づいていく(ns1)と考えられる。

相関距離ξΛの効果 ここでは、さらに量子重力の力学的な相関距離ξΛ = 1/ΛQG ( LP)を考慮に入れたスペクトルを与える。この距離は、時空 がまだ膨張を始める前の量子重力が支配的なPlanck時間以前では、ξΛ以 上はなれた2点間の相関が存在しないことを表している。

この効果はスペクトル指数に結合定数trの補正を入れることで表すこ とができる。さらにそれをランニング結合定数¯t2r(k) = 1/β0log(k22)に 置き換えると

Ps(k) = As

(k m

)v/log(k22)

(11.2.4) を得る。ここで、vは正の定数、λは共動座標系での力学的スケール

λ =a(τiQG (11.2.5)

である。先に定義したPlanckスケールとはm/λ=HDQGの関係が成 り立つ。このスペクトルはk =λで鋭く落ち込んで相関がゼロになるこ とを表している。

から存在しなかったk < λの相関は進化の途中ずっと存在しないことに なる。それゆえ、減衰因子はインフレーション期間中保たれるとして、ス

ペクトル(11.2.4)を相転移点でのスカラースペクトルとして採用する。

テンソルゆらぎのスペクトルについても同様に考えて、相転移点での スペクトルを

Pt(k) =At

(k m

)v/log(k22)

(11.2.6) と与えることにする。ここで、図11.3で示したように、振幅Atは小さい 値のままである。

スカラースペクトルの振幅はインフレーション期間に減少して、相転 移点ではテンソルスペクトルの振幅と比較できるくらい小さくなるので、

テンソル・スカラー比

r = At As

はCMBスペクトルを決めるための重要な要素になる。

物質場の変数と平坦性 物質場の摂動変数の相転移点での値は重力ポテ ンシャルの値が分かると求めることができる。物質場を含む運動方程式 からエネルギー密度変数のFourier成分は

D(τΛ, k) = 2 3

HD2

H(τΛ)2

e

2Ne k

2

m2Φ(τΛ, k)

で与えられる。この式を導く際にρ(τΛ) = 3MP2H2Λ)を使っている。こ の変数には膨張率Neを肩にもつ指数関数の減衰因子が掛かっているた め、非常に小さな値になる。このように、現在の宇宙の年齢を説明する ためには初期の物質場のゆらぎが非常に小さくなくてはならないという 平坦性の問題を解くことができる。

関連したドキュメント