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本研究では、学校体育が生涯スポーツ社会を目指 しているものの、学校体育以降におい て継続的にスポーツが実施 されていないことに着 目し、生涯スポーツ社会が実現できてい ない原因を明 ら力ヽこす るとともに学校体育において どのよ うな人間形成 を行 えばよいのか、

また何が不足 しているのかを考察 して、豊かなスポーツライフにつながる高校体育のあ り 方を提案す ることを目的 とした。

1章

では、生涯スポーツを理解す るために生涯スポーツ論に影響を与えたポール・ ラ ングランの生涯教育論を理解す る必要があると考 え、生涯教育論 の社会的背景 と基本的思 想、生涯教育論の 目的、教養 の獲得の観点か ら検討 した。 ラングランは生涯教育において 学校教育の重要性を認識 しているものの、それまでの伝統教育 を痛烈に批判 してお り、自 ら考えて行動す ることが社会 をよ りよく変えてい くことができると考 え、質的な教育改革 の必要性 を主張 した。そ して、生涯教育論の中核は、変化す る社会に 「適応」す るととも に社会の諸制度 を改善 してい く「変革」す る能力を身に付 け、 これ らを持 ち合わせた人間 が望ま しい社会を形成 してい くことと理解できた。 この生涯教育論を契機 としている生涯 スポーツの概念 は、社会的に整備 された環境 のもと、生涯 にわたつて 自主的・ 自発的に個 人の能力や ライフステージに応 じたスポーツ活動を行 うとともにスポーツを生活のな力ヽこ 取 り入れて継続 してい くことと捉 えることができ、生涯スポーツには

5つ

の段階があると 導 き出 した。また、それぞれの生涯スポーツ論には 「みんなのスポーツ」の理念 も内包 さ れ、エ リクソンのライフサイクル論 とアイデンティティ論 を用いている共通点 もあつた。

しか し、現状においては生涯スポーツの実践には至つていない といえ、社会的条件 をより 整備 してい くと同時に、生涯スポーツの理念 と実践 をつな ぐ原理 を構築 しなければな らな い ことが明 ら力ヽこな り、生涯 スポーツを実現す るために学校体育で「スポーツを享受す る」

ことを教育す るべきと考えた。

2章

では、学校体育において生涯スポーツを実践す る人間をどのよ うに形成 していけ ばいいのかを明 ら力ヽこしてい くこととし、まず生涯スポー ツ社会を 目指す うえで生涯スポ ーツの基底詞である 「スポーツ」を文化 として とらえる立場か らスポーツについて検討 し た。スポーツは

1968年

のメキシコ・オ リンピック大会時に開催 された 「国際体育スポー ツ協議会」におけるスポーツ宣言 において定義 され、遊戯性、競争性、身体活動性、倫理・

道徳性の性質を持つ ことが明 ら力ヽこなつた。今やスポーツは文化現象であることは疑いよ うもないが、その歴史のなかで批判的に継承 されたこともあつた。 当時の文化は規範的理 解 によ り教養 を示す ものであつたが、時代の流れによつて次第に記述的理解 をされ るよう にな リスポーツも一つの文化現象 と認 め られた。スポーツには社会的価値があ り、 自己決 定できる機会を与え、人間 としてよ りよく生きよ うとす る普遍的価値 を有 していることが 明 らかになった。 このよ うな文化 としてのスポーツを生活のなかで実践 してい くためにも 学校体育において「スポーツを享受」できる人間を教育 しなければな らない。「スポーツを 享受」す るとは、スポーツ活動における楽 しさ体験により「快感情」 を獲得 した状態であ り、これ らをバ ランスよく体験す ることが重要であると理解できた。 しか し、学校体育の 実践が生涯スポーツの実践に結びついていないのが現状であ り、その原因は生涯スポーツ の概念が教育論 として不十分であるとい う指摘 もあるよ うに生涯スポーツ教育論 として展 開 されていないか らであると考えた。そ こで生涯スポーツ教育の理念 を 「スポーツを享受 す る」 ことと考え、その理念 を実践へ と導 く原理 として 目的的原理、内容的原理、方法的 原理 を示 した。 目的的原理 には「快感情の追求」と「スポー ツ観 の形成」、内容的原理には

「スポーツ実践の基盤 となる身体づ くりとその方法」と「スポーツ文化の理的 、方法的原 理 には 「創造的参入」を導き出 した。

3章

では、生涯スポーツ社会 を実現す るために小学校 、中学校、高等学校 の各段階に おいて獲得 され る快感情、スポーツ観の形成、スポーツ実践の基盤 となる身体づ くりとそ の方法、スポーツ文化の理解な どが どのよ うに教育 されてい くのかを学習指導要領か ら読 み取 り明 ら力ヽこした。獲得 され る快感情は、小学校 において 「理解」、「爽快」、「親和」で あ り、中学校 において 「向上」、「優越」、「承詢 、「挑戦」、「達成」が新たに獲得 され るこ とが理解できた。スポーツ観の形成については、小学校では具体的な遵守事項に対 しての 行動形成 を、中学校では社会性や規範意識 に基づ く運動への価値観の形成を、高等学校で は社会性や規範意識 に基づ く行動意欲の形成 と参画における合意形成 を目指 し、スポーツ 実践の基盤 となる身体づ くりとその方法 については、小学校では活発 に運動す ることによ り体力を養 つた り、発達課題 に応 じて体力を高めた りす ること、中学校では運動の技能 と 関連 して体力を高めること、高等学校では 目的に適 した運動の計画や運動に関連 した体力 やその高め方を理解することを目指 した。スポーツ文化の理解 については、小学校 では競 争のルールや運動の技能な どを理解 し、中学校では合理的な実践によつてスポーツの特性、

技術や戦術 を理解 し、高等学校ではスポーツの歴史的背景やルールの起源 を理解す るとと

もに用具や用品の改良によつてルールは変化 し続 けていることを理解す ることを目指 した。

そ して、生涯 スポーツの実現に向けて、小学校では「運動の楽 しさを体験す る時期」、中学 校では「種 目特有の楽 しさを体験す る時期」、高等学校 では「少な くとも一つのスポーツに 親 しむ時期」 ととらえられた。 しか し、 このことは生涯スポーツを一義的に しか捉 えてお らず、実践 しよ うとす る人間の動機 に十分応 えることはできないのではないか と考えた。

4章

では、本研究の 目的である豊かなスポーツライフを実現す るための高校体育のあ り方を提案 した。学習の 目的 として、文化 としてのスポー ツか ら普遍的価値 を見いだす こ とで人生をより良くす ることができることか ら「快感情の追求」を、またその過程におい て規範行動が伴わなければ、社会的にも価値があるとはいえないことか ら「スポーツ観の 形成」をね らい とした。そ して、生涯スポーツを実践 してい くうえで 自己の身体機能 を把 握 し、運動やスポーツの技能 に関連す る体力について理解す ることでけがやスポーツ障害 な く実践ができた り、加齢 による身体機能の変化を理解す ることで個々に応 じた運動やス ポーツを選択 した りす ることができることか ら「スポーツ実践の基盤 となる身体づ くりと その方法」を学ぶ とともに、スポーツの歴史的背景や特性、文化的価値や現代スポーツの 特徴な どを理解することでよ り深い楽 しさや喜びを味わ うことができた り、ルールの遵守 やマナーを学び、仲間 と活動 を共にす ることで社会性や規範意識 を身に付 けた りす ること か ら「スポーツ文化の理解」を学習の内容 とした。 さらに、学習の方法 として、晴J造的参 入」を 目指 してい くことか ら、個人の多様な動機 に応 えることができるスポーツとの関わ り方を学ぶ機会 をつ くらなければな らない とした。そのためには、選択制授業のよ うに種 目を選択す るのではな く、スポーツとの関わ り方学ぶ ことができる内容を主体的に選択 さ せて学習す ることが必要であると導 き出 した。また、教育が学校だけで終わるのではな く、

学校体育 を生活す る地域社会 と結びつけることが必要であ り、学校 と地域 と結びつけるこ とで地域 との交流が生まれ、学校体育で学んだことを生活のなかで実践す る契機 とな り卒 業後の 「創造的参入」につながると考えた。 さらに、ラングランが提唱 した生涯教育 の中 核である「適応」と「変革」す る能力の獲得は、晴J造的参入」にむけた実技 におけるスポ ーツとの関わ り方を学習す ることによつて 「適応」す る能力 を身に付 け、理論におけるス ポーツを 「ささえる」関わ り方を学習す ることによつて、 よ りよい社会へ と「変革」 して い くことができる資質や能力の育成 につながるのではないか と考えた。

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