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総括結論

ドキュメント内 第 1 部 序論 (ページ 98-103)

7.1 本研究のまとめ

本論文では,環境問題を解決するための基礎となる AI,進化ゲーム理論について研 究を行なった.AIについては,初期のニューラルネットワークとして知られている,ホ ップフィールドネットワークに着目し,そのダイナミクスを決定しているエネルギー関 数について,2 つの改良案の提示を通して,その基礎学理を深めることを目的として,

研究を行なった.進化ゲーム理論については,社会ジレンマを解消・寛解する5つの付加 的枠組みの中で,ネットワーク互恵に着目し,その力学的機序を明らかにするために,

空間型囚人ジレンマゲーム(SPD)に着目し,従来報じられているネットワーク互恵を 担保する機構とは異なる新たな強化機構(enhancement)を提示し,数理的に解析するこ とを目的として,研究を行なった.

第1部,第1章では,まず研究の背景として,社会ジレンマを寛解・解消する互恵的 協調関係の深化過程を探求することが強く世の中に求められていること,社会ジレンマ 発生の要因である利己的個体の集合に対し,協調行動を促す機構の解明に進化ゲーム理 論が有効であること,そしてM.A.Nowakが提唱した,社会ジレンマを寛解・解消する為 に進化ゲームに付加する5つの枠組みのうち,個体間に空間構造による社会粘性を付加 することでジレンマの寛解・解消を導くネットワーク互恵に昨今関心が寄せられている ことを挙げた.また,近年の人工知能(AI)の急速な発展に伴い,環境問題にもこれを 適用する動きが出てきていることを挙げた.そしてこれらの背景を鑑み,本研究の目的 を,AIに係るニューラルネットワークのダイナミクスの基礎学理を深めること,ならび に進化ゲーム理論におけるネットワーク互恵の力学的機序を明らかにするために空間型 囚人ジレンマゲーム(SPD)に着目し,従来報じられているネットワーク互恵を担保す る機構とは異なる新たな強化機構(enhancement)を提示し,数理的に解析することと定 めた旨、述べた.

第2部では,人工知能(AI)に関する基礎学理研究について述べた.

第 2 章では,AI を支える基本的な枠組み,かつゲームプレーヤーであるエージェン トの知性を実装する場合に標準的に仮定されるニューラルネットワークに注目し,脳の 記憶方式の一部をモデル化した連想記憶装置について,想起特性の向上を図った.まず 最初に,一般的なニューロンの構造と状態遷移ルールについて説明し,次に既報の連想 記憶装置であるホップフィールド型連想記憶装置,ならびに高次のエネルギー関数を用 いた連想記憶装置について,中心的概念であるエネルギー関数と,想起ダイナミクスに

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そして,高次のエネルギー関数を用いた連想記憶装置の,エネルギー関数に改良を加 えた2通りの方式を提示し,数値シミュレーションをの結果の提示,ならびに考察を行 なった.

まず1つめは,高次のエネルギー関数を用いた連想記憶装置において,これまでニュ ーロンが他の全てのニューロンと結合を有する完全結合型であったものを,隣接するニ ューロンのみと結合を有する(部分結合型)高次エネルギー関数連想記憶装置に改良し,

処理時間の短縮を図った.部分結合の範囲により3通りのモデルを用いて数値シミュレ ーションを行い結果を考察した.まず処理時間について吟味し,完全結合と比較して大 幅に短縮できたことを示した.特に部分結合の範囲が狭くなるほどその効果は顕著であ った.また連想記憶装置内のニューロン数が増加した場合にもその効果が顕著であるこ とが分かった.想起能力については,結合数が少ないためある程度の劣化は避けられな かったが,記憶パターンとのハミング距離が比較的小さく,人間の目で見て未だ記憶パ ターンを類推できる程度の崩れであれば,(最も部分結合の範囲が狭いモデルを除いては)

想起率は完全結合型のそれと比べても遜色なく,十分利用可能であることが分かった.

2つ目は,2つのエネルギー値の最小をとるエネルギー関数を用いた高次エネルギー関数 連想記憶装置を提示しその想起能力を吟味した.エネルギー関数を記憶パターンからの ハミング距離をパラメータとする1変数関数に変換した場合,本方式は2本の直線を使 用した折れ線状のエネルギー関数となり,係数を変えることで容易に形状を変更可能で あることを示した.そして,記憶パターンからのハミング距離30までの傾きを急峻にし たエネルギー関数を用いて数値シミュレーションを行い,その結果,エネルギー関数の 変化点であるハミング距離30までの想起率が大幅に向上していることを示した.また想 起率が大幅に向上した範囲において,従来型と比較して,他の記憶パターンを誤想起し てしまう試行が大幅に減ったことを示し,これはエネルギー関数の傾きを急峻にするこ とで,記憶パターン近傍の引込領域がより際立ち,別の記憶パターンの誤想起が低減し たとの考察を示した.

第3部では,進化ゲーム理論に関する基礎学理研究について述べた.

第3章では,本研究を行なうにあたり必要不可欠な進化ゲーム理論,ネットワーク互 恵の基礎理論について既往研究のレビューを提示した.最初に前段として,ゲーム理論 の基礎について述べた.進化ゲーム理論は,ゲーム理論に戦略の進化と時間の概念を加 えたものであるが故,ゲーム理論の基礎を考察することは進化ゲーム理論を研究対象と する上で必須である.まずナッシュ均衡とパレート最適の定義とその導出方法を示し,

パレート最適以外にもナッシュ均衡を持つ状況を,非協調ゲームではジレンマと定義す ることを示した.次に本研究で取り扱う2×2ゲームについて説明した.その利得構造と 利得の大小関係により4つのジレンマクラスに分類できること,その4 つのジレンマク

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ラスの委細について,Tanimoto & Sagara[3]が提唱したギャンブル性ジレンマ,リスク回 避性ジレンマを用いて説明した.

次に進化ゲーム理論についての説明を行なった.2×2進化ゲームにおける,4つのゲ ームクラスのダイナミクスの違いを,非線形システム状態方程式のダイナミクスに関す る演繹アプローチにて説明した.まず線形システム状態方程式のダイナミクスを説明し,

均衡点における特性が推移行列の固有値の正負で決まることを説明した.続いて非線形 システム状態方程式のダイナミクスを説明した.テイラー展開により線形微分方程式に 近似し,線形システム状態方程式と同様,推移行列の固有値の正負により均衡点の特性 が定まることを示した.但しこの特性はテイラー展開にて近似してあるため,均衡点近 傍の特性にすぎず,また非線形システム状態方程式は均衡点が複数存在する為,どの均 衡点に到達するかは初期状態に依存することを説明した.

最後に互恵メカニズムならびに,ネットワーク互恵の基礎について説明した.進化ゲ ームにおいては協調を創発する5つの付加的機構,血縁淘汰,直接互恵,間接互恵,ネ ットワーク互恵,群淘汰があることを示し,これらの機構が元々のゲーム構造行列を変 形した利得行列で表すことに帰着され,その均衡点は,変形された利得行列に対する

Replicator Dynamics の均衡点を論じることと等価であることを述べた.そのうえで,ネ

ットワーク互恵の概要と,その変形利得行列,さらに変形利得行列に対する Replicator

Dynamics の均衡点を示した.そして,ネットワーク互恵に関する数多の研究において,

各々独自の尺度で効果検証を行っている現状を鑑み,ネットワーク互恵の効果に関する 統一的な評価指標として,進化ゲームの過程において,Enduring(END)period と

Expanding(EXP)period という2つの期間とその役割,そして役割の達成度を示す定量

的指標を示した.

第4章~第6章では,進化ゲーム理論において,空間型囚人ジレンマ(Spatial Prisoner’

s Dilemma; SPD)にenhance効果をもたらす枠組みを提示し,その効果とメカニズムの検

証を行った.

第4章では,チキン型ジレンマに強い連続戦略と鹿狩り型ジレンマに強い混合戦略の,

両者の長所を取り入れた連続的バイナリー(Continuous-binary)戦略を定義し,数値シミ ュレーションによりその特性を検証した.数値シミュレーションにおいては,連続戦略 PD領域を4つのサブゲームクラスに分け,それぞれについて考察を行なった.低次数の ホモネットワークにおいては,連続戦略と混合戦略の中間的性質を表すパラメータを変 化させ,連続戦略→Continuous-binary 戦略→混合戦略に向かうその過程で,チキン型ジ レンマのみ存在する領域(BCH)では,内部均衡に吸引されるという性質から協調率は 下降していき,一方で鹿狩り型ジレンマのみ存在する領域(BSH)では bi-stable 的な性 質から協調率は上昇する.その結果,両ジレンマを持つ全 PD 領域では,両者の結果が

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