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本学位論文では昨今のフレキシブルデバイス市場の拡大に着目し、低温での 透明導電膜作製を課題として取り上げた。低温成膜のためには有機溶剤や分散 剤といった高抵抗率化の要因を使用しないことが重要である。つまり水中にITO ナノ粒子のみを安定に分散させる必要がある。また水性塗料である ITO ナノ粒 子水分散液を用いた成膜技術が必要となる。本学位論文では ITO ナノ粒子の水 分散性を向上させるためにその形状制御に着目した。また水性塗料を用いた低 温成膜法としてミスト塗布を取り上げた。

第1 章では、まず低抵抗率な透明導電酸化物である ITOおよびその成膜方法 について記載した。さらに ITO ナノ粒子の作製方法や、他のナノ粒子の形態制 御方法について記載し、ITOナノ粒子の形態制御方法を提示した。またミスト塗 布の手法や特徴について記載し、透明導電膜作製への応用の可能性を示した。

第2 章では、粒子形状制御により高水分散性 ITOナノ粒子を作製した。つま り、粒子表面に突起形状を付与することで高比表面積化を図り、吸着水の量を 増加させることで親水性を向上させるというものである。突起形状は小さな粒 子の凝集体ではなく、均一な粒子成長の阻害による立方体粒子上での不均一核 生成により生成したことが分かった。この突起を有する ITO ナノ粒子は、立方 体型ITOナノ粒子よりも高い水分散性を有していることが確認できた。1H NMR の緩和時間測定から算出された親水性パラメータから、突起を有する ITO ナノ 粒子の方が粒子表面の吸着水の量が多いことが分かった。以上より、粒子表面 形状の制御により、ITOナノ粒子の大幅な水分散性の向上に成功した。

第3 章では、突起を有する ITOナノ粒子水分散液を用いたミスト塗布を行っ た。ミスト塗布は他の塗布方法よりも低抵抗率、低散乱の ITO ナノ粒子膜が作 製可能であることが分かった。この塗布方法と高水分散性の突起を有する ITO ナノ粒子とを組み合わせることでナノ粒子が密に充填された低抵抗率の ITO ナ ノ粒子膜を得ることに成功した。一方、立方体型 ITO ナノ粒子の場合は塗布液 内部で凝集してしまい、粒子が密に充填された膜を得ることができない。また これをフレキシブル基板上に成膜した場合、可視光において透明性が高く、高 い折り曲げ耐性を有する膜を作製することができた。

第4章では、突起を有するITOナノ粒子と立方体型ITOナノ粒子とを用い、

その結晶構造解析から低抵抗率化の要因を解明した。突起を有する ITO ナノ粒 子は立方体型ITOナノ粒子と異なる生成機構を経ることから、より多くのSnが ドープ可能であることが分かった。同様のSnドープ量の場合、突起を有するITO ナノ粒子の方が立方体型ITOナノ粒子よりも低抵抗率であり、酸素欠陥等のSn ドープによる電子生成以外のキャリアの生成がこの要因である可能性が示唆さ れた。また突起を有するITOナノ粒子は、Snのドープ量が高くなるとともにキ ャリア電子は増加するが、そのキャリア電子が低抵抗率化に寄与しない場合が

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あることが分かった。粉末サンプルの場合、電子の局在化による移動度の低下 により抵抗率が増加する。一方、薄膜の場合キャリア電子増加すると、抵抗率 が低下した。これらの結果から、粒子形状やSnドープ量に、サンプル作製方法 により結晶構造内の電子環境に変化が生じることがわかった。

以上より、突起を有する ITO ナノ粒子の作製により、ミスト成膜によるフレ キシブル基板上への透明導電膜の作製と低抵抗率化に成功した。ITOナノ粒子を 含む塗料作製の際に、形状のみによってその均一性を向上可能であること、ナ ノ粒子の形状やSnドープ量の差異により電子環境に差異があることは、ITOナ ノ粒子をもちいたデバイス作製において、非常に重要な知見を与えたと考えら れる。よって本学位論文で作製した突起を有する ITO ナノ粒子の作製条件 の 調整により、目的とするデバイスの性能を最大限引き出すことが可能であると 考えられる。

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