本研究では,減圧CVD法を用いてグラフェン成長を行うための各 CVD 条件 が,成長にどのように影響をあたえるか,触媒膜厚,CVD時間,冷却速度,水 素導入,2種の触媒の積層について調べ,さらに本実験方法の優位性について比 較を行い以下のことが明らかになった。
1. グラフェン成長の触媒膜厚およびCVD時間依存性
Feの膜厚は,基板加熱時のFe薄膜の凝集に影響し,膜厚を厚くすることで その凝集が抑えられ,それによりドメインサイズの大きいグラフェンが成長 した。また,膜厚によって炭素原子の内部拡散量が変わり,膜厚が厚いこと で表面に析出する炭素原子の量が減り層数の少ないグラフェンが成長した。
CVD 時間は,成長したグラフェンのドメインサイズには影響しないが,炭 素の供給量が代わるため,グラフェンの層数と基板上のグラフェンの成長領 域に影響を与えることがわかった。
本研究のCVD法では触媒膜厚,CVD時間の結果より,触媒膜厚の厚い基板
を用い30 min以上のCVD時間がグラフェン成長には必要であると分かった。
2. 冷却速度依存性
Fe膜厚が40 nmの基板では,冷却速度を50℃/minより遅くもしくは,速く
すると冷却速度が 50℃/min ものに比べ,ドメインサイズと層数の両方共劣 る結果となった。
Fe膜厚が 60 nmの基板では,冷却速度によらない結果となり,膜厚を増加
させることで,冷却速度への許容範囲が広くなったと考えられる。
3. 水素導入の影響
本研究の CVD法では,水素が直接の原因となる結果は観られず,水素導入 による加熱中の基板温度の上昇と加熱時間の延長が影響したと考えられ,本 研究においては水素の効果は乏しいと判明した。
4. Co膜積層化の影響
Co を積層化したものの,その量が少なかったためグラフェン成長への大き な影響は観られなかった。しかし,光学顕微鏡像の成長模様や SEM像での 凝集の抑制が観られたことから,Co を積層することでグラフェン成長に影 響をあたえることが示唆された。
5. ホットウォール(HW)型,コールドウォール(CW)型の比較
同じ原料ガス流量,CVD圧力,CVD時間,成長基板,CVD温度,冷却速度 で HW 型,CW 型で実験を行ったが,CW 型では成長が見られた条件でも HW型では全く成長が見られなかった。これは,CWの原料ガスの導入方法 でもあるノズルの効果によるものであると分かった。この結果から,ノズル を用いて原料ガスを基板に直接照射し,効率よく供給する方式がグラフェン 成長に有効であることを示唆している。
以上の結果から,減圧CVD法において成長するグラフェンのドメインサイズ や層数に関しては,触媒の膜厚が大きく関係し,CVD時間は成長するグラフェ ンが基板を覆う領域に影響することがわかった。また,原料ガスにエタノール を用い,ノズルによって原料ガスを基板に直接照射することは,グラフェン成 長に有効であること言える。
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