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総括

ドキュメント内 噌 樋 (ページ 151-156)

5−1無血清培地馴化浮遊mCK細胞の作製(第2章総括)

 第2章では無血清順化浮遊MDCK細胞を作出できたことを報告した。

 インフルエンザウイルスが最も効率よく増殖するイヌ腎細胞由来

MDCK(Madin−Darby canine kidney)細胞を出発材料とし、動物由来成分を含まない無血 清培地(化学合成培地)で増殖可能な細胞を作出、次にこの細胞を平面培養から、浮 遊環境下でも増殖可能な細胞を作出した。血清培地で生育していた細胞を、除除に工 業用無血清培地に馴らして行く手法を考案し、実施した。

 次に上記無血清順化細胞を培養器の底面から剥がし、撹絆条件下で飼育したが、長 期観察を行っても浮遊細胞は得られなかった。この結果を受け、無血清培地馴化細胞

を浮遊環境下に馴らすため、細胞は先ず回転培養装置内で浮遊する微少のビーズ

(Cytodex 1)の表面に付着させ、ビーズごと回転培養する方法を用いて細胞を飼育し

た。

 その結果、浮遊環境下でも増殖する細胞(34W−4v)を作出した。この細胞は、培養 規模を拡大する際、一旦ビーズから細胞を剥離して、新たなビーズへ撒き直す必要が なく、自身でビーズからビーズへ広がっていく性質を獲得しており、この細胞でも充 分にワクチン製造に使用可能と思われる。

 この浮遊環境下でビーズ表面に接着したまま増殖する細胞(34W−4v)をビーズ無し の単独で無血清培地中に浮遊させ、飼育した結果、細胞単独で増殖する細胞(B−702)

を作出できた。工業レベルで使用可能な無血清培地馴化単独浮遊mCK細胞はB−702 を含め2例しか報告はない。第3章以後の検討ではこのB−702細胞は用いなかった。

理由はこの細胞の性状解析に時間をかけるよりすでに性状解析が終了している別の細

胞を用いた方がワクチン実用化を早期に実現できると考察したためである。第4章ま での一連の研究以降、B−702細胞における高病原性トリインフルエンザウイルスーワ クチン株の増殖此等を検討した結果、第3、4章で使用したM)CK−33016細胞と少なく とも同等のウイルス増殖性が確認されている。MDCK−33016細胞は像腫瘍性試験で陽性 の結果が報告されている。もしMDCK−B−702細胞では像腫瘍性試験で陰性の結果がえら れれば、MDCK−33016細胞よりワクチン製造に適していると期待される。

 上記無血清培地馴化浮遊醐)CK細胞調製法は国際特許出願し、既に米国では権利化が 認められた。また、WHOのパンデミックワクチン製造に備えるための基本的な褥1」化 技術の公開情報の中で、本技術が紹介されており、国際的にも充分な評価を得ている

と考察する。

5−2無血澗消化浮遊MDCK細胞を用いたウイルスバンクの構築(第3章総括)

 第3章では、ワクチン製造用基材としてMDCK細胞が適しているか検証し、 MDCK細 胞を用いてワクチン製造の際に接種源となるウイルスバンク調製法について、糸状菌、

細菌、ウイルス等の迷入がない方法であるか検証した。

 ワクチン製造用基材を現行の発育鶏卵から培養細胞へ切り替えるためには、培養細 胞が発育鶏卵と同様にワクチン用ウイルスを増殖させ得ることを実証する必要がある。

B−702と同様の無血清培地馴化浮遊MDCK−33016細胞を用いて研究を実施した。過去19 年間に日本で使用されたワクチン用ウイルス株がMDCK細胞で良く増殖するか検証し た。その結果、検討した19株はすべて良好に増殖し、MDCK−33016細胞は発育鶏卵に 代わり得る良好なウイルス培養基材であることが実証された。

 細胞培養技術を用いたインフルエンザワクチン製造に対するガイドラインは日本で は未だ制定されていない。欧州、WHOから出されているガイダンスによれば、細胞由

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来ワクチン製造では、大量培養時に接種する種ウイルスを調製した時点で、インフル エンザウイルス以外の油入が無いことを証明するデータの蓄積が求められている。均 質な種ウイルスを調製するにはウイルスバンクを調製しなくてはならない。現在想定 しているウイルスバンク調製法に従い、2002年冬から2004年春までの2シーズンに 使用されたA/New Caledonia株、 A/Panama株、 B/Shandong株を用いてウイルスバンク

を調製した。このウイルスバンクの迷乱因子否定試験を実施するため、細胞接種試験 法と核酸検出法を複数構築し、試験を実施した。その結果、ウイルスバンクに迷入す る因子は検出されなかった。 更に、このウイルスバンクについて、国外の試験機関 に同様の試験を依頼した。その結果も、同様に迷面する因子は検出されなかった。こ れらの結果より現在想定しているウイルスバンクの調製法は、実際の製造でも用いる

ことが可能であると考察された。

各種試験系を構築し検討した結果、細胞接種試験は実際の製造においては現実的で ないことも証明できた。核酸検出系は簡便であるが、多種多様なウイルスに対しそれ ぞれ検出系を構築する必要があり最終的にどれだけの試験系を構築する必要があるの かは、国際的な議論の中で今後決定される必要があると考えられる。

5−3 MDCK細胞を用いたワクチンの優位性の検証(第4章総括)

 第4章では、MDCK細胞を用いたワクチンの有意性について論述した。近年発生が危 惧されている高病原性トリインフルエンザウイルスによるパンデミンクを想定すれば、

ワクチン株製造用ニワトリの鶏卵の調達が困難になることは容易に想像できる。しか し、通常期のワクチン製造においても発育鶏卵より培養細胞を用いた方がより早期に、

流行株にマッチした抗原性をもつワクチンが提供できることをA/Kumamoto株を用い.

て論証した。

 A/Kumamoto株は2002年に分離され、2004年春にA/K㎜amoto一リアソータント株が 北半球においてワクチン候補株となった。2003年冬のインフルエンザシーズンには発 育鶏卵で良く増殖するリアソータント株の作出と配布が間に合わない経緯があった。

本研究では、このA/Kumamoto株について臨床分離ウイルス(患者検体から細胞で分離 したてのウイルス)、発育鶏卵で再分離されたウイルス、リアソータントウイルスのそ れぞれをMDCK−33016細胞で培養し、各ウイルスの増殖性と、主要な免疫抗原である赤 血球凝集素(m)のHA 1遺伝子配列の解tJ i、免疫原性について比較検討した。その結果、

発育鶏卵では全く増殖できないか、あるいは製造には適さない程度の増殖性しか示さ なかった臨床分離ウイルス、発育鶏卵での再分離ウイルスでさえMDCK−33016細胞では 高い増殖性を示した。HA 1遺伝子は発育鶏卵で継代することに核酸に変異が蓄積し、

アミノ酸に翻訳した場合のアミノ酸置換も推定された。MDCK−33016細胞でウイルスを 継代しても核酸変異の蓄積は一切観察されなかった。臨床分離ウイルスと、発育鶏卵 で継代数が最も多いリアソータントウイルスを不活化し、マウスへ免疫して抗血清を 作製した。得られた抗血清についてそれぞれ免疫した抗原と抗原を交換してそれぞれ HI試験を実施した。その結果、得られた抗血清のHI抗体価は通常有意な差と認めら れる4倍以上の差は認められなかったものの、免疫マウス個体別のHI抗体価をt検定

した結果では互いの抗原性に差が認められる傾向が観察された。これらの結果より、

MDCK−33016細胞を用いれば、発育鶏卵を用いる場合作製が必要なリアソータント株作 出の必要がなく、早期に製造を開始することが可能であり、MDCK−33016細胞での継代 ではm遺伝子の変異も誘導されないため、鶏卵を用いる場合よりも流行株によりマッ チした抗原性を持つワクチン抗原が供給可能であることを示唆する。2003年冬季の時 点を想定すると、発育鶏卵を用いる製造では、流行株にマッチした株での製造ができ なかったが、MDCK−33016細胞ではそれが可能であったと推定される。

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以上のことから、通常期のインフルエンザワクチン製造においてウイルス培養基材 は発育鶏卵から培養細胞へ変更することの有用性が論証された。

ドキュメント内 噌 樋 (ページ 151-156)

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