低下した。 このことからサイズ自体が有効な避難行動に負に寄与することを見い だした。
2、 上述のような集合サイズの増大による脱出効率の変動は、 恐怖要因が負荷 されることによって促進されることを見いだした。 これは(サイズの増大に伴い 恐怖要因が負荷された条件における)脱出反応の活発化、 追従・固着・攻撃・利 己的行動の増加、 譲歩行動の低下等によるもの であった。
3、 危機状況における集合体に有効なリーダーシップが存在することによって、
脱出行動は促進され、 またこのことは恐怖要因が負荷される場合において顕著で あること、 有効なリーダーシツプは集合がおかれている危機の特性によって異な ること、 そしてこのようなリーダーシップの効果は脱出行動の初期においてのみ に現れることを見い出した。
上記の3つの要因の効果について、 実験で見出された知見から、 これらの要因 の総合的な機能について下図に示される。 集合が危機状況下におかれた場合、 そ のサイズが大きいときには集合内の個人の“内的要因" としての閉塞感・脱出不 能感、 理性的判断の低下、 心的活動性の上昇などの変化をもたらす。 その状況に 恐怖が負荷されることによって、 それはさらに促進される。 一方、 そのような事 態に有効な、 脱出に向かう行動を指示し、 利己的行動を回避させるリーダーシッ プの存在は、 これらの脱出への障害となる状態を抑制する。 このような集合内の 個人の内的状態が“行動的反応" としての脱出反応の活発化、 追従、 固着、 攻撃、
自己中心的行動を増加させ、 譲歩行動を減少させる。 このような状態が最終的 な 避難・脱出の成否を規定すると考えた。
以上、 本研究は従来この領域の研究で、 集合の大きさ、 恐怖、 リーダーシップ が重要かつ決定的要因であると言われなが らも、 それらの相互関連についてはも ちろん、 実証的研究は殆ど行われていなかったのに対し、 独自の研究装置を開発 しそれを使用して実験的検証を行った。 それにより各要因の効果、 さらにはこれ
らの要因の関連についての知見を得たものである。
集合のサイズの増大
合目的的、 理性的 判断の低下
活発な脱出反応 追従行動 固着行動 攻撃行動
出所用距離の増大
本研究による危機管理に対する提言
危機管理については緊急時の特質によって対応は異なるものと思われる。 その
ために危機管理についての一般的な提言となると、 どうしても一般論とな らざる
をえない。 さらに、 例えば実験によって恐怖の重要性が明確になり、 現実事態で
も恐怖を低減させることが必要であるとの提言がなされても、 現実には集合の恐
怖を低減させること自体が困難な場合が多い。
以上のような問題点を認識しながらもここでは敢えて本研究の実験の結果と調
査データとの関連、 それから危機管理に対する示唆について述べる。
1、 集合の分断と集合密度の増大の限止
本研究の結果、 集合のサイズが増大した場合、 脱出所要時間の延長や出口の幅
員の増大にも関わらず混雑が増大し脱出成功率が低下することが明らかになった。
このような集合サイズと集合の混乱状態との関連を直接検討した調査研究は存在
しないが、 群集雪崩の事例研究はこの両者の関連を示唆する ものである。
狭い出口から逃れるために多数の人々が殺到した場合問題になるのは、 出口 で
生じる「アーチ・ アクションJ (せりもち)と、 それ が崩壊する群衆雪崩である。
群衆の密度が8-10人/平方メートルに近づけばアーチ・ アクションが生じ、 出口
が開いているにもかかわらず、 そこに人々がせりもち状に並んで 1 人も通過でき
ない現象が生じる (安倍,1982)。 この状態にさらに圧力が加わり密度が13人/平
方メートル以上になればアーチが圧力に抗しかねて崩れる群衆雪崩が発生する(戸
川,1973)。 このような群衆雪崩に巻き込まれて人々が将棋倒しになり多数の死傷 者が発生した事件があった。
アーチ・アクションの形成と崩壊について仁木(1984)はコンビュータ ・シミ ュレーションによる詳細な検討を行っている。 それによればアーチ構造の崩填が まず内側(前方)で起こりそれが外側(後方)に伝わること、 崩壊の後再びアー チ構造の集まりができること、 それらの結果として脱出人数が間欠的に増減する こと、 等が見いだされた。 以上述べたように、 アーチ・アクションの形成や崩壊 と、 それがもたらす群集の混乱を増大させるのは人の密度や、 1つの出口当たりの 集合の サイズ(人数)であることは明かである。
このように集合サイズの増大は混雑・混乱を増大させ、 さらに本研究の結果か ら示唆されるように、 成員は攻撃的・自己中心的・競争的となる可能性がある。
そのために可能であるならば集合をなるべく小さく分断し分離させて、 そして密 度が過大にならないように統制することが望まれよう。
2、 攻撃手段の剥奪
それから災害などの異常事態では攻撃手段を所有していれば、 互いにそれを使 用して集合全体が収拾っかなくなり、 さらに集合サイズが増大すればいっそう凄 惨な状態に陥ることが本研究の結果示された。 これは一昨年発生したロサンゼル スの暴動からも示唆される。 いくつかのマイノリテイが武装して対立し合い被害 をいっそう大きくしたのは記憶に新しい 。 そこで日頃から攻撃手段を持たないよ うな、 そしてそれを使用しないようなシステムを作る必要がある。
3、 脱出口の数や幅員の増大
さらに本研究の結果、 集合サイズの増大に比例した形で脱出許容時間や脱出口
トや地下街等沢山の人々が集合するような所では、 平常時にはその収容人数の増 大と比例して脱出口の数や幅員を増やすように施設を設計しでも問題はないが、
緊急時を考慮した場合には収容人数の増大に対して加速度的に出口の数や幅員を 大きくする必要があることが示唆された。
4、 同調や固着という人間行動の特徴の理解
恐怖が人々の同調性と固着性を高めることは、 既に述べた大阪千日前のキャバ レー・ プレイタウンの火災事例からも明かである。 また宮崎(1982)は1973年11月 29日熊本市で起きた大洋デ、パート火災を調査して、 ある階段に避難開始が遅れた 人々の多くが殺到してそこで40名もの人が亡くなっていたことを明らかにしてい る。 それは、 その場所を知っている従業員がその方向に逃げ始めたためで、 客も その後を追って逃げたのである。
このように災害事態では向調傾向が強くなる。 そのためにその場所を熟知して いるものと他の人々から思われている人(例えばデ、パートの店員等) は例えリー ダーシップを発揮しなくても、 他の人が勝手についてくる可能性が高い。 そのた めにそのような人達はリーダーシップを発揮する所まではいかなくても、 自分だ けでも脱出できるように建物の構造を日頃から充分把握しておく必要がある。
さらに固着傾向については、 例えばその現れの1っとして便所やロッカーや厨房 等の狭い空間に閉じ込もる行動が挙げられる。 塚本(1979)は1969年2月5日に発生 した郡山の磐光ホテル火災では便所内に8人が逃げ込み5人が死亡した事実を明ら かにしている。 そのほかにロッカーに頭だけ突っ込んだ状態で2名が、 そして厨房 室では調理台の下にもぐり込んで死亡していた人もいたそうである。 狭い場所へ の閉じ込もりが発生しやすいことを救助する場合は考慮しておく必要があろう。
5、 リーダーの初期発言と情緒安定指示
さてリーダーの初期発言と被誘導者に対する情緒安定指示が重要であることを
示した例として大洋デ、パート火災がある(塚本 1979)。 塚本は次のように述べて
いる。 消防隊員が工事用の足場により屋上に上がると、 避難者が梯子が延ばされ
た側に集まり、 中に1人が鞄と靴を両手に持ち震えているといった状態であった。
これでは梯子が延びてきても、 我先に争い危険である。 そこで大声で「早く降り
たい者は飛び降りろ、 必ず死ぬ。 死にたくなければ言うことを開けJと静めて、
順次67人を無事に梯子車の梯子により避難させた。
また1972年2月ブラジルのサンパウロで起きたアンドラウスビル火災時には100
人ほどの避難者がある階段室の中に閉じこめられた。 その中にいた日本人ビジネ
スマンは次のような報告をしている。 íリーダー格の人がこの中にいて、 大丈夫
だ助かると呼びかけて静める。 それにカトリック教徒が多いから我々を救いたま
えと祈る。 これも心の支えとなってパニックが抑えられた。 1時間くらいして空軍
や民間のヘリコプターが飛んできた。 ラウドスピーカーで" 冷静に秩序を作れ"
と呼びかけてくる。 これで助かるのだと思った。 約2時間後、 ヘリコプター隊員に
より扉が開けられた。 この過酷な状態のもとで長時間耐えたのは、 やはり多くの
リーダー格の存在を無視できない。 J
それから三隅・佐古(1983)は大韓航空機火災事故における避難誘導行動の効果
性について吟味している。 その結果、 避難誘導行動の内容については、 乗客の情
緒的興奮を低減させる指示と脱出方向や脱出方法を認知させる指示の2種類に大別
できることが見い出された。 そして、 乗客が座席から立ち上がる以前の初期段階
に被誘導者の情緒的興査を低減させ、 さらに率先垂範型の指示によ って脱出方向
や方法を明確に認知させることが脱出経路選択時の乗客のコンフリクトを小さく
することが見い出された。
以上の事例研究並びに本研究の結果から次のことが示唆される。 まず第1に緊急