第 6 章 未来像と発展の道筋
6.3 考察
6.3.4 産品による差異
輪島塗が上塗り職人を核とした産地構造をとるのは、産品の性格を考えると合理 的といえる。状況に対応する過程で適切な産業構造に変化する。漆器工芸品の特徴 を整理するために、先に採りあげたカスタムナイフと3.6で採りあげた陶器との対 比表を作成した。
※18.自ら手がけた産品を週末にノミ市で販売するのは、特別なことではない。1980年代郊外の大
きなショッピングモールには、小さな貸店舗が併設されていた。夜間もしくは週末しか営業 しない店子も多かった。
図表20:産品対比表
陶芸品は、技能より感性が作品のできばえの 要
かなめ
となるので、必ずしも漆工芸のよ うな長い下隅は求められない。工賃と材料費は売価に対して小さく、できの悪い作 品を廃棄しても利益がでる。数多くつくった中から、厳選して高額で売っても採算 に乗る。窯の焼きの偶然による作品でも採算が取れる。売れ残りを気にせず大量の 産品をつくり、安価に販売する戦略もとれる。陶芸家として、多様な作家活動が成 り立つ。恵まれた状況にあって、工房を持つ負担が独立する大きな障害となってい る。故に側面から行政が支援する意義は大きい。加賀市も、空き家となった古い民 家を整備し、工芸村にする構想を持つ。伝統的な建築物の保護になり、観光資源と して活用が期待できる。陶芸教室やカスタムナイフ作り教室は、各地で開催されて いる。陶芸教室やカスタムナイフは、感性が作品のできばえに大きく影響する一方、
要求される技能が高くないから、プロでなくても作品つくりが楽しめる。材料費が 高価で、まがりなりにも形にするには、ある程度の技能が求められる漆工芸を趣味 の範疇で手がけるのは難しい。漆工芸では、工房の活用範囲も限られる。
漆工芸は、工賃と材料費により売価が大きく制限を受け、陶芸のようにはいかな い。完成したできが悪くても廃棄することはできない。作費を抑え安価な作品作り を目指すなら外注しないといけない。できあがった趣向品を、不特定多数の人に売
ⷐ㗄㨈↥ຠ 㔍ᤃᐲ ṭེ 㔍ᤃᐲ ࠞࠬ࠲ࡓ࠽ࠗࡈ 㔍ᤃᐲ 㒻ེ
Ꮏᚱ⏕ ૐ ⥄ቛߢ߽น⢻ 㜞 ᐢᎿᚱ 㜞 Ἣ᳇ࠍᛒ߃ࠆ
࿁ㆱ╷ ਇⷐ ਛ ᑄᬺߒߚᎿ႐↪ ૐ ዋ㊂ߥࠄ㔚᳇┇
ౕ߿⸳ߩḰ 㧔ਛ㧕ワߩߺ 㜞 㔚േᎿౕ߇ᔅⷐ 㜞 ┇
࿁ㆱ╷ ਛ ਛฎ⸳ ዋ㊂ߥࠄ㔚᳇┇
᧚ᢱ⾌ 㜞 ᧄṭᄖᵈ⾌ ਛ ૐ ┇ߩΆᢱઍ
Ꮏᢙ߿Ꮏ⾓ 㜞 ਛ ૐ
↥ຠᄙ᭽ᕈ ᄢ ૐ ਛ
ᦨૐ㒢ߩᛛ⢻ 㜞 ਛ ૐ
⧓ⴚߩᗵᕈ ਛ 㜞 㜞
ᦨૐଔᩰ 㧝ਁ 㧝ਁ
ࡏࡘࡓ࠱ࡦ ↥ຠߦࠃࠆ 㧝㧜ਁ ᢙජ
ろうとしたら、売れ残りがでるのは致し方ない。売れ残りがないような作品を目指 していたら、凡庸なつまらない作品しか生まれない。だが、事業化を考えると、運 転資金を寝かすことはできない。制作費が回収できるまでの資金繰りが事業化を困 難にしている。
この状況を視覚的に説明する図表21を作成した。縦軸を「工芸の付加価値(販売 価格/制作費)」、横軸を「要求される技能の高さ」とした二次空間において、漆器・
カスタムナイフ・陶器が事業展開可能な領域が提示した。
図表21:技能と感性
輪島塗は、豪農の注文に応じた受注生産をおこなっていた。工芸品を主体とした 金沢漆器は、藩のお抱えであった。湯治客という不特定の顧客を対象にした山中漆
要求技能
営利限界点 1
販売価格 / 制作費
(工芸品の付加価値)
長い修行
感性のみ カスタムナイフ
陶芸 漆器工芸