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街路空間の空間構成要素と街路に面する建物のプログラムとの関係性を築きつつ、
歩行者中心の街路空間を新たに提案することで、都心部でのより良い歩行者中心の 街路空間の可能性を提示した。
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参考文献
【主要参考文献】
ヤン , ゲール (2011)『建物あいだのアクティビティ』北原理雄訳 , 鹿島出版会 . バーナード , ルドルフスキー (1973)『人間のための街路』平野敬一ほか訳 , 鹿島出版会 . ヤン , ゲール・ビアギッテ , スヴァア (2016)『パブリックライフ学入門』鈴木俊治ほ か訳 , 鹿島出版会 .
ヤン , ゲール (2014)『人間の街 : 公共空間のデザイン』北原理雄訳 , 鹿島出版会 . 芦原義信 (1962)『外部空間の構成 : 建築から都市へ』彰国社 .
小野寺康 (2014)『広場のデザイン』彰国社 .
『都市計画』2014 年 12 月号 , 公共社団法人 日本都市計画学会 .
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梗概
街路はもともと、社会的、経済的、文化的活動を支える場所であ り、街路を介してコミュニケーションをとっていた(図1)。しか し、戦後のモータリゼーションの発展により、歩行者が中心であっ た街路は自動車の通行が中心のものへと変化していった。また、
1960年代以降の高度経済成長における発展や、2000年代から進行し ている都市再開発において、利便性や収益性が追求された結果、周 辺環境との関係が希薄な建築が増えた。このような建築の乱立も歩 行者にとって魅力的な街路空間が生まれない1つの要因となってい る。欧米では、早くからこのことに気づき、歩行者を中心とした街 路としてデザインされたものが多く見られるが(図2)、日本ではま だ多くは見ることができない。
以上の背景から、本研究では、歩行者中心の街路空間を作り出し ている事例の調査をもとに、分析、考察を行い、都心部での歩行者 中心の街路空間を実現するための設計手法を明らかにすることを目 的とする。
第1章 街路と街路空間
街路とは、都市内の道路を総称して一般的に用いられている用語 である。本研究において対象とするのは、芦原義信やヤン・ゲール が著作において述べている、歩行者の表情やボディランゲージを認 識できる距離(約21m〜24m)等を踏まえ、歩行者中心という視点 から、自動車専用ではない、幅員6m〜23m程度の都市内の道路を 街路と定義する。また、官民境界線から歩車道を挟んで、反対側の 官民境界線までの範囲を街路空間と定義し、研究を行う。但し、建 物の壁面がセットバックしており、街路と一体的な空間となってい る場合は、官民境界線を超えて、街路空間の一部に含めることとす る。ここでのセットバックとは街路に面する建物の外壁ラインから 50㎝以上後退しているものとする。(図3)
第2章 事例調査・分析 2-1 事例抽出
序章 背景と目的 第1章 街路と街路空間 第2章 事例調査・分析 2-1 事例抽出
2-2 海外事例の写真から見られる構成要素 2-3 日本の事例における構成要素の選定 2-4 構成要素の形態における分類 2-5 構成要素の機能による分類 2-6 歩行者の滞留行為の分析
第3章 歩行者の滞留行為と空間構成要素との関係の分析 3-1 対象事例の実地調査
3-2 建築的構成要素と家具的構成要素の関係 3-3 直接的構成要素と間接的構成要素の関係 第4章 構成要素と街路に面する建物のプログラムの関係 4-1 プログラムの分類
4-2 構成要素とプログラムの関係 第5章 設計提案
第6章 総括と展望
論文構成
街路空間
6m〜23m
官民境界線 官民境界線
歩道 車道 歩道
≧0.5m
所在地 幅員(m) 延長(m) 街路名称
1790 8
488 6.7 ハイデルベルク(ドイツ)
ハウプト通り
ストックホルム(スウェーデン) ヴェステルラーン通り
1 2歩行者
専用 No.
表1 抽出事例一覧(海外)
図1 日本の街路空間(江戸名所図会) 図2 ストロイエ通り(コペンハーゲン)
図3 街路空間の定義
2-3 日本の事例における構成要素の選定
日本の事例については、①常に歩行者専用である街路、②基本的 には歩車共存であるが、曜日・時間帯により歩行者専用となる街 路、③曜日・時間帯により歩行者専用となるうえ、より歩行者優先 の工夫が見られる街路を3つ選び、その3つの街路に対して、滞留し ている歩行者の行動を記録する実地調査を行った(表3)。
予備調査の結果より、街路空間の空間構成要素の中で、数多く見 られた「ベンチ」「簡易店舗」「椅子+テーブル」「商品ラック」
「看板」「オブジェ」「階段」「壁面後退」「オーニング・庇」
「樹木」の10個の空間構成要素を調査対象として選定した(図8)。
で、段差を設けず車道と歩道を分け、素材の色の違いで休憩場所と 歩行者通路を分けている(図4)。
2-2-2 ベンチが特徴的な事例
事例No.1のカイス・ダ・リベイラ通りでは、ベンチの片側のみに 背もたれが付いており、背後の車道と歩道を分ける装置としての役 割を持つとともに、車道側に完全に背を向けず空間をつなげてい る。背もたれがある側、ない側が互いに向き合うように並べること で単調さを避けている。背もたれの端部は小テーブルとしての利用 が可能となっている。事例No.5のヴェスター・ヴォル通りでは、2 つのベンチの背もたれを合体させることで、テーブルのような役割 を持たせている(図5)。
2-2-3 ボラードが特徴的な事例
事例No.2のヴェステルラーン通りでは、車両進入防止の看板や柵 の代わりに、生き物の形をしたボラードを置くことで、歩行者が座 って写真を撮るなどの行為を誘発させ、賑わいを生み出している。
一部のボラードには車輪がついており、場面によって移動が容易な つくりになってる。事例No.3のニューウスタ通りでは、歩行者専用 街路において、車両進入防止の看板や柵の代わりに、大きな石を置 くことで、ベンチのような休憩場所としての役割を果たしている(図 6)。
2-2-4 モニュメントが特徴的な事例
事例No.7のメアリー通りでは、銅像のモニュメントが、人々を惹 きつける力を持っており、周囲に土台や椅子など座れる場所を設け ることで、より効果を発揮している。事例No.8のホーフ通りでは、
ベンチに銅像を座らせることで、空のベンチにはならず、歩行者が 腰掛けるきっかけを作っている(図7)。
2-2-5 海外事例分析のまとめ
海外事例の写真から見られる特徴的な構成要素についての分析を 行った。舗装では、歩行者の望む歩行速度や分割の仕方に合わせ て、素材や並べ方を変化させ、明確な歩行者の分布を可能にしてい る。ベンチは、一方向に偏る歩行者の注意を上手く分散させ、車道 と歩道の連続的な空間を作っている。また、休憩の際によく行われ る飲食等に利用できるテーブルという付加機能が歩行者の滞留時間 を長くしている。ボラードは、無機質なものでなく、街路に合わせ た素材や形にすることで、街路を賑やかにし、一体感を作り出して いる。モニュメントは、アイストップとして機能し、街路の中心や 注目を向けたいものの近くに置くことで、歩行者が集まる場所を作 り出している。
一般的な街路の空間構成要素を用いても、素材や形状、パター ン、配置の工夫することで、歩行者にとって魅力的で印象に残る街 路空間を実現していることが明らかになった。
街路名称 特徴 調査日時
5/22(水) 14:00-, 17:00-元町通り
丸の内仲通り 5/19(日) 14:00-, 5/20(月) 14:00-, 17:00-イセザキモール
②平日11:00〜15:00、土日祝日11:00〜17:00 を歩行者専用化している。
24時間歩行者専用街路で電柱の地中化を行 っている。
車道にクランクを設け、車両の速度を抑制 している。
①
③
図7 海外事例の構成要素(モニュメント)
4. カイス・ダ・リベイラ通り ( ポルト・ポルトガル ) 5.ヴェスター・ヴォル通り ( コペンハーゲン・デンマーク )
2.ヴェステルラーン通り ( ストックホルム・スウェーデン ) 3. ニューウスタ通り ( コペンハーゲン・デンマーク )
7. メアリー通り ( ラハティ・フィンランド ) 8. ホーフ通り ( ハッセルト・ベルギー )
図4 海外事例の構成要素(舗装)
図5 海外事例の構成要素(ベンチ)
図6 海外事例の構成要素(ボラード)
表3 予備調査街路及び調査日時
機能するものと、間接的に人に機能するものとして、「直接的」
「間接的」の2つに分類を行った。直接人に機能するものとは、構 成要素が、人を直接の対象として何らかの働きかけをしたり、人が ある行為を行うときに直接的に手助けするものである。間接的に人 に機能するものとは、直接の対象は環境であるが、間接的に人に機 能するというものである(表5、6)。
2-6 歩行者の滞留行為の分析
街路における歩行者の全ての滞留行為を、ベンチや商品ラック、
看板、樹木などの街路空間を構成している要素によって起こる行為 と、それらの要素によらずに起こる行為の2つに分類を行った。構 成要素によって起こる行為とは、ベンチに腰掛けたり、商品ラック の商品を見るなどの行為である、構成要素によらずに起こる行為と は、街路の何もない場所で立ち止まって会話をしたり、携帯電話を 操作するなどの行為である。また、それらの行為の状態を「立ち」
「座り」の2つに分類を行った。さらに、行為の内容として滞留行 為を「佇む」「会話」「携帯」「飲食」「見る」「その他」の6つ に分類できた(表7、8)。それぞれの行為の件数は表9のようにな った。分析の結果、構成要素が歩行者の実際の滞留行動に結びつく ことが明らかになり、歩行者中心の街路空間の実現のために、構成 要素の調査が有効であることが確認できた。
第3章 歩行者の滞留行為と空間構成要素との関係の分析 3-1 対象事例の実地調査
前章で抽出した日本での9つの街路において、前章で選定した1 0個の構成要素に基づき、街路空間の実際の使われ方についての実 地調査を行った。調査は、2つの時間帯(14時、17時)で行っ た。調査結果から、街路における歩行者の街路における滞留行為の 分布を図面上にプロットし、歩行者の滞留行為と空間構成要素との 関係の分析を行った(図9)。それぞれの街路の構成要素別の数量を 表10に示した。
○
△
◎
◉
☆
●
▲
×
★ 立ち/佇む
立ち/会話 立ち/携帯 立ち/飲食 立ち/見る 立ち/その他
座り/佇む 座り/会話 座り/携帯 座り/飲食 座り/見る 座り/その他 要素による/要素によらない
立ち/座り 種類
状態
内容
佇む/会話/携帯/飲食 /見る/その他
家具的
壁面後退 建築的
オーニング・庇 階段
簡易店舗 ベンチ
商品ラック 椅子+テーブル 看板 オブジェ 樹木
階段 壁面後退
オーニング・庇 樹木
椅子+テーブル 商品ラック
看板 オブジェ
表7 滞留行為の分類 表8 行動の状態・内容の凡例
表9 歩行者の滞留行為の分類 表4 構成要素の形態における分類 図8 街路空間の空間構成要素