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 本研究では、SSWrが学校現場に対してどのような働きかけをすることによって、子 どもに充実した支援を提供するための協働体制が構築できるのかについて検討するこ とを目的とし、2つの調査を行った。研究1では面接調査によって、学校現場のSSWr や市町村福祉に対する意識や要望を明らかにした。また研究2では質問紙調査によっ て、SSWrと学校との協働を促進する要因について、個人レベル及び学校組織レベル から検討を試みた。これら2っの調査結果に基づき、今後SSWrが子どもに充実した 支援を提供するような協働体制を学校と構築するために何が必要であるかについて考 察を行う。

 第一に、SSWrを知ってもらうことが前提となる。研究1の面接調査では、 SSWr を知り、手さぐりの中でも連携を経験することで新たなケースの相談につながるとい

う協働の経緯が、協力者の語りから明らかとなった。研究2でも「SSWrの活用」と

「SSWrへのニーズと期待」には「SSWとSSWrの知識」が影響していることが示さ れた。これらの結果からは、SSWrについて研修等でいかに周知を図っていくかが大

きな課題となっていることが分かる。但し、SSWrについて周知を図る際に留意しな ければいけないのは、その存在だけでなく、SSWrと協働するとどのような展開があ るのか、SSWrと学校の相互の役割は何なのか具体性を示していくことである。半羽・

金澤・浜田(2009)は、SSWrを雇用している自治体はそれぞれ独自のビジョンを持 ってSSWを展開させることが重要であると指摘している。そのことも踏まえれば、自 治体のビジョンも明確にしたうえでSSWrの周知を図るのでなければ、活用する学校 側も、されるSSWr側にも混乱を招き、効果的な活用につながらないだろう。SSW事 業を推進する自治体の意図や目的、SSWrと学校の専門性と役割、 SSWrと学校との協 働がもたらす可能性等を整理したうえで、体系的な研修を計画することが必要である と考える。SSWrが自ら行う啓発とSSWrが所属する市教育委員会等が主体となって 行う啓発という2段構えで周知を図ることも一案であろう。

 第二に必要となるのは、SSWrとしての専門性・力量の向上である。研究1では、

学校現場はSSWrの導入開始の当初から「ソーシャルワL一一・iカー」としての専門性に加 えて、「学校を基盤に活動するソ・一一・一シャルワS一一一カー」であることを重視していたことが 示された。さらにSSWrに対する要望としては、「つなぐ」という言葉をキーワードに、

学校と家庭への支援や地域の資源活用への期待が語られた。また研究2においても

「SSWrへの二・一・一・ズと期待」の測定項目の9項目中8項目の平均値が4点満点の3.0 を超えている(3。0未満の項目平均値も2.99)ことが示された。これらの結果は、SSWr の専門性に対する学校現場の期待が非常に大きいものであることを示唆していよう。

では、SSWrが向上させるべき専門性・力量とはどのようなものであろうか。研究1

の協力者が指摘したように、SSWrの活動の基盤となるのは、「ソーシャルワーカー」

としての専門性・力量であり、それは「福祉の視点」を持って見立てる力、ケースの 展開を描いていくカに他ならない。しかし同時に、「学校を基盤に」活動するSSWrは、

ケV一一・Eスの展開を見通す時に、当事者である子どもにとって学校が一番身近な、また強 力な援助資源となることを忘れてはならないであろう。つまり、子どもの抱えている 課題は家族システムの中でどうなっているのか、学校の中ではどうか、地域ではどう か、というエコロジカルな視点からのアセスメントを行い、学校や教師はどのような 支援ができるのかについてポイントを整理し、学校現場に伝える力が必要である。ま た学校現場に伝える技術としては、研究1の協力者からはアセスメントシートやエコ マップの活用が効果的であるという指摘が得られた。もちろん学校にも学校独自の方 法があるが、協力者の語りからはSSWrの方法を取り入れる良さも実感されているこ

とが分かる。したがってSSWrには学校の従来からの方法を尊重しつつ、新たな方法 も積極的に提案するというスタンスが必要であろう。また、「つなぐ」ことへの期待に 応えるためには、ケース会議を効果的に進めるためのファシリテーションカも高めて いく必要があろう。さらに、単なる情報の伝達・共有ではなく、展開に見通しを持っ て支援を組み立てるような「つなぐ」を可能にするためには、SSWrが地域の社会資 源・制度を熟知する必要がある。そのためには日ごろからの資源開拓と関係機関との ネットワーク作りが不可欠である。また研究1では、SSWrに対する「つなぐ」役割 への期待が語られると同時に、SSWrを効果的に使うためには 校内でも整理する人 が必要 コーディネーターの役割をする人がいる など校内体制にも目を向けた語り が得られた。これは、学校現場はSSWrに依存したいのではなく、SSWrとの連携を 進めるためには学校も協働体制を整える必要があることを自覚していることを示した 結果と言えよう。研究2でも、「学校外との協働性」や「校内の連携システム」が学校 における問題の「抱え込み」を予防する可能性が示されている。SSWrが学校に対し て自らの専門誌を提供し発揮することは重要であるが、学校側に体制の整備を求める こともまた、必要であると考えられる。そのための具体的な助言もSSWrの役割であ

ると言えよう。

 SSWrに求められる第三のことは、「福祉的な視点」を学校現場に伝え浸透させてい くことである。研究1の協力者が語った SSWrとの協働を通して子どもを見る視点 が変わり、見る感度が上がり、子どもや親が変わっていくことを教えられた という 経験は、まさにこの協力者が「福祉的な視点」を得て、それが様々なプラス面をもた らしたことを示唆するものであろう。また、研究2では「福祉的な視点」の中でも「エ コロジカルな視点」が学校現場の「SSWrとの連携不足」だけでなく、学校内での相 談活動における「抱え込み」を防ぐことも明らかにされた。つまり、「福祉的な視点」

はSSWrとの協働体制の構築のためだけでなく、学校が独自に行う子ども支援におい

ても有効な視点となりうることを示唆したと言える。このことから、SSWrは日々の 活動の中で、また学校現場に向けた研修の中で福祉的な視点を継続的に伝えていくこ

とが重要である。

 本研究における2つの調査結果から、SSWrは自らの専門性を高め、SSWrとして何 が必要か、どのようにアプローチしていくかを常に考えながら実践を進めなければな らないことが明らかにされた。現在、SSWrを雇用する自治体は増えてきている。言 い換えれば、SSWrは今の学校現場に求められている重要な職種である。それ故、学 校現場の期待を裏切らないためにもSSWr自身が自らの活動を振り返り確認し発展さ せる努力が不可欠であり、最も必要なものであると言えよう。

 最後に本研究において残された今後の課題について述べる。本研究1ではSSW導入 初期の地域、SSW先行地域、 SSWrと連携のない地域のそれぞれから面接調査に協力 を得ることで、SSWrをどのように展開させていくかについて多くの知見を得ること ができた。また本研究2では、SSWrの活用や期待においては「福祉の知識」や「SSW とSSWrの知識」、また連携不足を防ぐためには「福祉的視点(エコロジカル視点)」

という、どちらにも主に個人レベルの要因が大いに影響していることが示された。研 究2ではSSWr導入初期の地域を対象として調査を行ったが、これは導入初期の学校 における協働への関連要員を探ることが重要であると考えたためである。しかしなが ら、協力校には既にSSWrとの連携の頻度が比較的高い学校を抽出したためか、協力 者の約75%がSSWrを知っているという、予想以上に高い認知度の中での調査となっ た。つまり、個人レベルの要因が強い影響力を持つという研究2の調査結果は、SSWr の導入初期というよりもSSWの考え方や知識をある程度共有した学校における状況 を示している可能性がある。したがって今後は、同一地域で協働がまだ進んでいない 学校を対象として調査を実施し、本調査結果と比較検証していくことが課題となる。

また、今回の研究で協力いただいた学校を対象にして再度調査を行うことにより、

SSWrとの協働・連携を継続させていくためには何が必要であるかを検討していくこ とも重要な課題であろう。

 また、今回の分析では、地域の全体的な傾向を捉えるために小学校と中学校を分け ずに分析を実施した。そのため、校内ごとの特徴を示すには至っていない。今後、そ れぞれの校種による影響の要因を詳しく検証していくことにより、校種ごとへの具体 的なアプローチの仕方や、ケースを小中連携の中でつなげていく際の手立てを検討す る足がかりになろう。さらに、調査協力者の属性を確認した結果では教職経験年数に もばらつきがあることが示された。教職経験の違いにより、各人が教師として培って きた知識や考え方、対応力にも違いがあることが推測される。したがって、教職経験 年数による差異を検討することもSSWrの働きかけを工夫するのに有用であると考え

る。

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