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第 3 章 長野県における健康長寿要因の統計的分析について

3.9 統計的分析の課題

104

3.8.3 統計的分析によって示唆された健康長寿要因のまとめ

本研究の結果、本県の健康長寿要因として示唆された項目を以下のとおり列挙する。なお、挙げら れた各項目には要因としての濃淡が存在し、要因としての可能性が高い項目とそれほど高いとはいえ ず可能性があるにとどまる項目が併存しているが、本研究事業において、要因性の軽重、濃淡の度合 いを定量的に表示するまでには至っていないため、要因として示唆される項目の列挙にとどめた。

3.8.4 指標分析結果から示唆された主な項目

(1) 高い就業意欲や積極的な社会活動への参加による生きがいを持ったくらし

① 就業率が高い

② 65歳以上就業者割合が高い

③ 社会活動・ボランティア参加率が高い

(2) 健康に対する意識の高さと健康づくり活動の成果

① 習慣的喫煙者の割合が低い

② メタボリックシンドローム該当者・予備群割合が低い

③ 肥満者の割合が低い

④ 野菜摂取量が多い

(3) 高い公衆衛生水準及び周産期医療の充実

① 保健師数が多い

② 下水道普及率が高い

③ 周産期死亡率が低い

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こと、③今回は関連要因の探索にとどまったものもあり、その結果には今後の検証を要すること、

などの課題がある。

また、抽出した項目の全国データと平均寿命や健康寿命の全国データとの間に有意な正負の相関 が認められるため、当該指標が全国的な健康長寿要因である可能性が示唆されたとしても、例えば、

41 ページに分析結果を記載した社会教育費のように、本県のデータが散布図において回帰直線周 辺から大きく外れていると評価できる場合は、長野県においては健康長寿要因であるといえない可 能性もある。このように、各指標の都道府県格差に着目して分析を進めた本事業において、長野県 の値が外れ値であることは重要な情報であり、外れ値の評価も課題といえる。

3.9.2 統計的分析を通じて浮かび上がってきた課題

健康長寿の要因を分析した先行研究がほぼ単年のデータを活用しているのに対し、本研究におい ては、可能な限り過去のデータにも遡って分析し、健康長寿を形成した積極的(前向き)な要因を 探索することに注力してきた。しかし、長野県がさらに健康寿命を延伸していくためには、3.6で 分析を行った高い脳血管疾患死亡率などの健康長寿の阻害要因を分析し、死亡率の改善に向けた活 動を展開していく必要がある。

平成26(2014)年2月に公表された平成20(2008)年から平成24(2012)年までの5年間の

死因別標準化死亡比(SMR)データをみると、脳血管疾患死亡率が平成 15(2003)年から平成

19(2007)年までの 5年間に比べ上昇している医療圏が存在し、特に女性は上昇した医療圏が多

くなっている(図表114、図表115)。

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図表 114 長野県圏域別標準化死亡比の推移(男性)(平成 15~19 年と平成 20~24 年の比較)

(注)グラフの数値は死亡総数と脳血管疾患を表示している。

全国の数値を

100

とする(以下同様)

91.1 92.5 93.1

88.6 88.9 90.6 102.6

91.2 92.4 89.8 97.2

89.0 115.5

105.7 134.8

116.8 118.5 105.0

144.1

112.8 110.6

124.5 127.3

105.6

50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0 110.0 120.0 130.0 140.0 150.0

佐久 上小 諏訪 伊那 飯伊 木曽 松本 大北 長野 北信 長野市

標準化死亡比(男性)【 H1519

死亡総数 悪性新生物

心疾患 脳血管疾患

全国

90.3 91.9 93.5

88.9 89.4 90.1 95.9

87.2 91.0 94.0 95.4 88.1 114.1

102.2 132.0

114.3 130.5

121.0

101.4 103.6 122.7

116.7 118.7 107.3

50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0 110.0 120.0 130.0 140.0 150.0

佐久 上小 諏訪 伊那 飯伊 木曽 松本 大北 長野 北信 長野市

標準化死亡比(男性)【 H2024

死亡総数 悪性新生物

心疾患 脳血管疾患

全国

107

図表 115 長野県圏域別標準化死亡比の推移(女性)(平成 15~19 年と平成 20~24 年の比較)

(注)グラフの数値は死亡総数と脳血管疾患を表示している。

このようなデータを本県のさらなる平均寿命や健康寿命の延伸を阻害する要因を示唆する貴重な資 料として捉え、この5年間に発生した事象を分析して対策を立てることが必要である。例えば、高齢化 の進展によって、地域における共助の取組などのソーシャルキャピタルが弱まりつつあることも影響し ている可能性があり、脳血管疾患死亡率の改善に向けた有効な対策を立てることが、本県の平均寿命、

健康寿命のさらなる延伸に向けた大きな課題といえる。

94.3

93.8 92.3 95.7 93.7 89.5 102.3

96.5 93.8

97.8

95.3 92.5 118.9

100.8 128.2

122.0 122.4

102.0

131.5

119.7 123.6 127.1 129.5 120.5

50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0 110.0 120.0 130.0 140.0 150.0

佐久 上小 諏訪 伊那 飯伊 木曽 松本 大北 長野 北信 長野市

標準化死亡比(女性)【 H1519

死亡総数 悪性新生物

心疾患 脳血管疾患

全国

94.5 95.2 97.7

93.6 97.0

94.5 100.4

91.8 89.2

97.5 99.8 91.5 124.8

105.8 130.7

124.9 147.2

135.6 124.5

108.8

124.3 128.3 139.5 126.5

50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0 110.0 120.0 130.0 140.0 150.0

佐久 上小 諏訪 伊那 飯伊 木曽 松本 大北 長野 北信 長野市

標準化死亡比(女性)【 H2024

死亡総数 悪性新生物

心疾患 脳血管疾患

全国

108