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5.1 本研究の総括

本研究では,べき乗法による3階テンソル積展開(3-TPE)について,その性質を明らかにし,

計算法の改良を行った.以下に,本研究で得られた成果を列挙する.

(1) 3-TPEと展開項間に直交性を有するように修正した3階直交テンソル積展開

(3-OTPE)について,数値実験を通して,少数項による近似に優れている3-TPEの 性質と元のテンソルを完全に表現できる3-OTPEのそれぞれの性質を明らかに した.

また,3-TPEのべき乗法の反復の過程における反復ベクトルに非負拘束条件を

課し,この条件の下で元のテンソルを近似する展開項を求めるアルゴリズムを 提案した.この手法は,3次元ディジタルフィルタの設計問題に適用可能である

さらに, 3-OTPEの計算アルゴリズムの一部を改良して計算時間を短縮できるこ

とを示した.(第2章)

(2) べき乗法を用いた3階テンソル積展開の3-TPEと3-OTPE,Lathauwerらの高次 特異値分解(HOSVD)の最良ランク(R1, R2, …, RN)近似と最良ランク1近似につ いて,その計算法と得られる展開項についてそれぞれの性質を比較した.

HOSVDと3-OTPEが異なる直交展開を計算することを,得られた展開項の比較 と,展開項から求めた近似テンソルと元のテンソルとの相対残差から示した.

展開項の第1項のみによって得られる近似テンソルは3-OTPEがHOSVDよりも 良い近似を与えることが分かった.それ以降の数項では,HOSVDの方が元のテ

ンソルを良く近似するが,元のテンソルを正確に表現するために必要な項数は 3-OTPEの方が少なくて済むことが分かった.

さらに,HOSVDのうちでランクに着目した展開として提案されている最良ラ

ンク近似の全てのランクを1に取る展開,即ち最良ランク1近似については3-TPE とほとんど同一の展開を与えることも分かった.また展開に要する計算時間は HOSVDと3階テンソル積展開では3階テンソル積展開の方がはるかに高速であ ることも示した.(第3章)

(3) 3-OTPEの計算アルゴリズムにはテンソルの各次元のサイズが全て同じではな

い場合に残差を最小とする展開が得られないことを示した.この場合,従来法 のアルゴリズムAlgorithm 2.2では各次元の最小サイズの項までは残差を最小と する展開項を求めるが,残項の展開ベクトルをGram-Schmidtの直交化法によっ て計算するため一意性はなく,残差を最小にする展開にならないことが分かっ た.そこで,元のテンソルと第1展開ベクトルとの縮約を取って得られる行列の SVDの計算結果から新たな展開ベクトルを求める改良法を提案した.

数値実験を通して,改良法がテンソルの各次元のサイズが異なる場合だけで なく,全て等しい場合にも,従来法に比べて少ない項数で元のテンソルを正確 に表現でき,少数項による打切り計算でも従来法に比べて相対残差の減少傾向 が改良されたことを示した.またカラー画像の復元実験を通して,視覚と数値 の両面から改良の効果を示した.改良法は従来法に対して大幅に,HOSVDに対 してもより少ない項数で元の画像の近似画像が得られることを示した.(第4章)

5.2 今後の課題

本研究では,特に3-OTPEの計算法を改良することを目的とし,従来法に比較して 精度の面で大きな改善があった.この改良法では最も次元の数が小さい方向の展開ベ クトルと元のテンソルとの縮約から得られた行列の SVD の結果を利用したが,それ 以外のベクトルに対しても同様の処理を行えばさらに精度が改善される可能性があり,

今後検討する予定である.

比較に用いたHOSVDの最良ランク(R1, R2, …, RN)近似は,ランクを任意に指定し て展開項を得ることができ,種々の応用分野で利用されている.べき乗法を利用した 3 階テンソル積展開においてもランクを自由に指定した展開手法を提案できれば,

HOSVD同様,より応用範囲が広がると考えられる.

また3階テンソル積展開はテンソルと反復ベクトルとの縮約から得られる行列に対 してべき乗法を適用して新たな反復ベクトルを求める手法であり,4 階以上の高階テ ンソルにも同様の考え方で計算ができると考えられるが,現段階では4階以上のテン ソルには適応していない.一方,HOSVDはn-モード展開によって次元を下げること を繰り返せば,4 階以上のテンソルを展開することが可能である.3 階テンソル積展 開をN階テンソルの展開に適応できるようにすることも今後の課題の1つとして,並 列処理などの考え方を取り入れて実現できないか検討しているところである.

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