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第 3 章 高次特異値分解と 3 階テンソル積展開

3.6 高次特異値分解と 3 階直交テンソル積分解の比較

3.6.1 展開項の比較

前節と同様に3次元ディジタルフィルタの設計仕様行列をサイズLMN 3の テンソルAR333として,HOSVDと3-OTPEによる展開計算を行った.このテンソ ルを1-モード展開行列A(1)の成分値で有効桁数4桁まで表しておく.

. 0 0

1716 . 0

0 5505 . 0 7639 . 0

1716 . 0 7639 . 0 1

0 5505 . 0 7639 . 0

5505 . 0 1

1

7639 . 0 1

1

1716 . 0 7639 . 0 1

7639 . 0 1

1

1 1

1

) 1

( 



A (3.32)

 展開ベクトル

HOSVDの展開ベクトルを成分に持つ行列は,

) 3 ( ) 2 ( ) 1 (

01 703 . 2 01 805 . 7 01 636 . 5

01 913 . 8 02 836 . 1 01 529 . 4

01 639 . 3 01 248 . 6 01 908 . 6

U U U





E E

E

E E

E

E E

E

(3.33)

となった.従って,展開ベクトルUi(1)は表3-IIIのようになる.比較のために3-OTPEの 展開ベクトルuiも同表に記す.

表3-III HOSVDと3-OTPEによる展開ベクトル

i HOSVD

) 1 (

Ui

3-OTPE ui

1





01 639 . 3

01 248 . 6

01 908 . 6

E E E





01 754 . 3

01 223 . 6

01 869 . 6

E E E

2





01 913 . 8

02 836 . 1

01 529 . 4

E E E





01 248 . 9

01 023 . 2

01 221 . 3

E E E

3





01 703 . 2

01 805 . 7

01 636 . 5

E E E





02 149 . 6

01 562 . 7

01 515 . 6

E E E

テンソルの対称性から3-OTPEの展開ベクトルの組には次の関係があった.

. ,

, 2 2 2 3 3 3

1 1

1 v w u v w u v w

u       (3.34)

HOSVDについても,各成分の符号は変わるもののHOSVDの他の展開ベクトル

) 3 ( ) 2

( , i

i U

U は全てのiについて

) 3 ( ) 2 ( ) 1 (

i i

i U U

U   (3.35)

の関係がある.また3-OTPEの展開ベクトルについては全てのベクトルの組が正規直 交関係にあることを2.4.3で確かめた.同様に,HOSVDで得られたベクトルの組につ いても直交性を調べたところ,表3-IVのように直交性が確かめられた.3-OTPEと HOSVDの展開ベクトルは異なっているが,それぞれ正規直交基底を構成しているこ とが分かった.

表3-IV HOSVDの展開項間の内積

展開項の組 内積値 )

, ,

(U1(1) U1(2) U1(3) (U1(1),U1(2),U1(3)) 1.00000E+00 )

, ,

(U1(1) U1(2) U1(3) (U(21),U(22),U(23)) 9.25186E-17 )

, ,

(U1(1) U1(2) U1(3) (U(31),U(32),U(33)) -1.52656E-16 )

, ,

(U(21) U(22) U(23) (U(21),U(22),U(23)) 1.00000E+00 )

, ,

(U(21) U(22) U(23) (U(31),U(32),U(33)) -1.85037E-17 )

, ,

(U3(1) U(32) U(33) (U(31),U(32),U(33)) 1.00000E+00

 コアテンソルと展開係数

HOSVDの展開ベクトルからコアテンソルと,3-OTPEの展開ベクトルから展開係数 を求めた.表3-Vにそれぞれの展開係数を絶対値が大きい順に示す.HOSVDのコアテ ンソルの成分値

3 2 1ii

i( (1), (2), (3))

3 2

1 i i

i U U

U 展開ベクトルに対応し,3-OTPEの展開係数

3 2 1ii

i( , , )

3 2

1 i i

i v w

u 展開ベクトルに対応している.また各

3 2 1ii

i がどの展開ベクトル に対応しているかを(i1,i2,i3)としてインデックスの欄に示した.HOSVDのコアテン ソルの成分の最大値,および3-OTPEの展開係数の絶対値最大係数は共に111として 得られた.

展開係数の絶対値の減少傾向を図3-3に対数グラフで示した.HOSVDの展開係数は 最小値が103のオーダーであるのに対し,3-OTPEの展開係数は19項目以降1010以下 のオーダーで0に近い値になっていることが分かる.

表3-V HOSVDのコアテンソル成分値および3-OTPEの展開係数 No.

HOSVD 3-OTPE

展開係数

3 2 1ii

i

インデックス ) , , (i1 i2 i3

展開係数

3 2 1ii

i

インデックス ) , , (i1 i2 i3

1 -3.7996E+00 σ(1,1,1) 3.8007E+00 σ(1,1,1) 2 5.5640E-01 σ(2,1,2) -5.0980E-01 σ(1,2,1) 3 5.5640E-01 σ(1,2,2) -5.0980E-01 σ(1,3,1) 4 5.5640E-01 σ(2,2,1) -5.0980E-01 σ(2,1,1) 5 2.9316E-01 σ(2,2,2) 3.4057E-01 σ(2,2,1) 6 7.6487E-02 σ(3,2,2) -1.6093E-01 σ(2,3,1) 7 7.6487E-02 σ(2,3,2) -1.6093E-01 σ(3,1,1) 8 7.6487E-02 σ(2,2,3) -1.6093E-01 σ(3,2,1) 9 -7.0743E-02 σ(1,3,3) -1.6093E-01 σ(3,3,1) 10 -7.0743E-02 σ(3,3,1) -1.6093E-01 σ(1,1,2) 11 -7.0743E-02 σ(3,1,3) -1.6093E-01 σ(1,2,2) 12 5.8833E-02 σ(1,2,1) 2.7371E-02 σ(1,3,2) 13 5.8833E-02 σ(2,1,1) 2.7371E-02 σ(2,1,2) 14 5.8833E-02 σ(1,1,2) 2.7371E-02 σ(2,2,2) 15 -2.5177E-02 σ(3,2,1) -1.0658E-02 σ(2,3,2) 16 -2.5177E-02 σ(2,3,1) -1.0658E-02 σ(3,1,2) 17 -2.5177E-02 σ(2,1,3) -1.0658E-02 σ(3,2,2) 18 -2.5177E-02 σ(1,2,3) 2.3671E-03 σ(3,3,2) 19 -2.5177E-02 σ(1,3,2) 2.3465E-10 σ(1,1,3) 20 -2.5177E-02 σ(3,1,2) 6.4909E-11 σ(1,2,3) 21 1.0003E-02 σ(1,1,3) 2.7078E-11 σ(1,3,3) 22 1.0003E-02 σ(3,1,1) 7.4848E-12 σ(2,1,3) 23 1.0003E-02 σ(1,3,1) 7.2303E-15 σ(2,2,3) 24 9.7218E-03 σ(3,3,2) 4.2405E-15 σ(2,3,3) 25 9.7218E-03 σ(2,3,3) 1.9446E-15 σ(3,1,3) 26 9.7218E-03 σ(3,2,3) 1.5821E-15 σ(3,2,3) 27 -4.4876E-03 σ(3,3,3) -9.7665E-16 σ(3,3,3)

図3-3 展開係数の対数グラフ(HOSVD,3-OTPE)

 相対残差

表3-Vで示した展開係数の大きさの順に展開項を途中で打ち切って近似テンソルを 求め,近似テンソルと元のテンソルとの相対残差を式(2.40)で求めて表3-VIに示した.

図3-4に相対残差をグラフで示しているが,少数項による打切り展開の相対残差につ いてはHOSVDの方がその減少が良いことがわかった.また図3-5では相対残差を対数 グラフで示しているが,HOSVDも3-OTPEも27項目において相対残差は1015のオーダ ーとなっており,どちらも元のテンソルを完全に表現できることが分かる.しかし,

HOSVDは26項までは相対残差は103程度のオーダーで,最終項において相対残差が

1015のオーダーとなって元のテンソルを表現可能となるのに対し,3-OTPEは展開係 数が1010のオーダーとなる19項目以降で,相対残差も1011のオーダーに減少し,22 項目で1015のオーダーとなって元のテンソルを表現できる.従って元のテンソルを 表現するのに必要な項数はHOSVDよりも3-OTPEの方が少なくて済むことが分かる.

1.000E-18 1.000E-15 1.000E-12 1.000E-09 1.000E-06 1.000E-03 1.000E+00

0 3 6 9 12 15 18 21 24 27

展開係数

展開項数 3-OTPE

HOSVD

表3-VI 相対残差(HOSVD,3-OTPE)

項数 HOSVD 3-OTPE

1 2.6177E-01 2.6073E-01 2 2.2034E-01 2.2630E-01 3 1.6904E-01 1.8559E-01 4 9.2739E-02 1.3295E-01 5 5.5276E-02 1.0096E-01 6 5.1749E-02 9.2313E-02 7 4.7963E-02 8.2770E-02 8 4.3852E-02 7.1972E-02 9 4.0001E-02 5.9238E-02 10 3.5738E-02 4.2875E-02 11 3.0892E-02 1.2937E-02 12 2.7037E-02 1.0910E-02 13 2.2532E-02 8.4075E-03 14 1.6863E-02 4.7275E-03 15 1.5603E-02 3.8755E-03 16 1.4232E-02 2.7732E-03 17 1.2714E-02 6.0125E-04 18 1.0989E-02 6.2251E-11 19 8.9364E-03 1.7967E-11 20 6.2419E-03 7.1362E-12 21 5.7013E-03 1.9030E-12 22 5.1038E-03 3.0998E-15 23 4.4264E-03 2.7106E-15 24 3.6736E-03 2.5407E-15 25 2.7198E-03 2.5852E-15 26 1.1399E-03 2.6597E-15 27 1.1280E-15 2.6668E-15

図3-4 相対残差(HOSVD,3-OTPE)

図3-5 相対残差の対数グラフ(HOSVD,3-OTPE)

これらの結果からHOSVDと3-OTPEには次の性質があることが分かる[15].

(1) どちらの分解も直交関係のあるテンソル項,LMN項の和で元のテンソル を正確に表現することができる.

(2) 2つの分解で,展開項の1項目は同じ展開ベクトル,同じ展開係数となる.

(3) HOSVDは最終項のLMN項の直前までは残差が緩やかに減少する展開で,

最終項で急激に残差がほとんど0に収束する.

0.000E+00 5.000E-02 1.000E-01 1.500E-01 2.000E-01 2.500E-01 3.000E-01

0 3 6 9 12 15 18 21 24 27

相対残差

展開項数

3-OTPE HOSVD

1.000E-16 1.000E-13 1.000E-10 1.000E-07 1.000E-04 1.000E-01

0 3 6 9 12 15 18 21 24 27

相対残差

展開項数 3-OTPE

HOSVD

(4) 3-OTPEは,展開の途中から残差が大きく減少し,LMN項以前に残差はほ とんど0に収束する.

(5) 元のテンソルを正確に表現するのに必要な項数はHOSVDよりも3-OTPEの方が 少ない.

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