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結論

ドキュメント内 筑波大学大学院博士課程 (ページ 48-51)

本研究は、ピアノ弦振動上に発生する低周波振動の発生原因の解明を目指し て、想定される原因を含めたモデルを計算機上で再現する研究をまとめたもの である。

第 2 章ではピアノの発音機構と打鍵装置の仕組みと、ピアノの弦の振動を測 定することの意味や、測定装置の有効性を示した。

第 3 章では弦振動の測定に使用する光プローブの測定原理について示した。

光プローブの中心に設置する遮蔽物の変位を細かく変え、出力の変化を見る実 験を行った。そして、測定系の軸を垂直・水平方向の軸へと変換する方法につ いても示し、遮蔽物の変位が正しく測定されていることを示した。

第 4 章では測定対象弦に対する座標を定義し、実際に測定した。また二点同 時測定についても、その有効性について示した。そして、実際に位置を変えて 測定し、波が弦の両端で反射しながら伝達し、それが定在波を形成しているこ とを示した。また、ある部分音成分について振動をモードで考えた時に、その 節にあたる位置では強度も低くなっていることがわかった。

第5章では、対象弦の測定可能領域を20 mmごとに測定した結果、基準音成 分と部分音成分の他に、とても低い周波数の振動が存在することを示し、それ を低周波振動と定義した。低周波振動は、ある測定点を境に位相が逆転してお り、その点を詳細に調べた結果、弦の両端の裸線部の長さの比で弦の全長を二 分する点であることが判明した。その結果から、低周波振動は弦の両端の裸線 部が何らかの形でその発生に関係していると思われる。

第 6 章では、第 5 章での結果を踏まえて、裸線部と巻線部との境界で双方の インピーダンスが異なることから発生するものであると仮定し、モデル化を行 い計算機上でシミュレートした。結果、低周波振動を確認することではなかっ たが、数多く考えられる原因のうちの一つに関して、原因ではないものである ことを確認した。

以上より、低周波振動の発生原因についての調査に進展があったと言える。

今後、低周波振動の可聴成分への直接的・間接的な影響について解明されれば、

高精度なピアノ音リアルタイム生成への貢献があると考えられる。また、本研 究では打鍵強度が一定な状況で測定を行ったが、打鍵強度を変化させたときの 影響についても調べる必要があると思われる。

謝辞

研究を進めるため多くのご指導・ご進言を頂いた、指導教官である筑波大学 システム情報工学研究科知能機能システム専攻 水谷孝一教授には大変お世話 になりました。2005年 3月まで指導教官としてお世話になり、退官された筑波 大学永井啓之亮名誉教授には、本研究の主題を与えていただき、また、音楽音 響に関しての多くの知識やご指導を頂き、感謝しております。音響システム研 究室の皆様には研究に関する多くの相談に乗って頂くなど、多大な支援に感謝 しております。

参考文献

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