〈生活店〉
5. 結論
(d)駅勢圏の人口と従業者数は、商業特性に対して、前者は〈固有店比率〉
後者は〈規模補正店舗数〉と、それぞれべつの影響を与えることが示唆された。
(e)市街地再開発で街区を広げて形成された市街地は、相対的に遍在店か つ大規模な商店が立地しやすいことが推察された。
(f)首都圏近郊の郊外は、〈娯楽店〉を首都圏中心部で消費するため、駅前 市街地は相対的に〈生活店〉が充足する首都圏中心部に近い市街地と、〈娯楽店〉
〈生活店〉ともに充実するような首都圏中心部から遠い市街地の、おおよそ2 つに分類できることがわかった。
3.
歴史的要因と空間的要因の比較
〈固有店比率〉に対して開業年度ダミーが採用されたことは、比較的歴史の 浅いと考えられる近代・現代市街地においても、これらの都市間の商業特性 に対してあるていどの歴史の影響による差異が生じていることが推察される。
より具体的に述べれば、昭和中期以降に成立した郊外市街地化からみると、
明治から昭和初期かけて成立した駅前市街地も相対的に歴史の影響を持って いると推察される。
より詳細にみると、〈娯楽店〉の〈固有店比率〉では、開業年度ダミーの標 準偏回帰係数が他の説明変数の標準偏回帰係数よりも小さいため、歴史的要 因は、〈娯楽店〉の〈固有店比率〉に対して影響力はあるがほかの空間的要因 と比べるとその影響力は弱いと考えられる。他方で、〈生活店〉の〈固有店比率〉
の場合、他の標準偏回帰係数の比較から、歴史的要因のほうが空間的要因よ りも強い影響力をもつことがわかった。
序論で、市街地の特有性を議論するとき、歴史的要因の影響力を過大評価 せずに空間的な視座からそれを捉える構えが重要であると述べたが、いま整 理して得られた結果は、このような構えがあるていど有用であることを補強 するものと示唆される。
5.2 現状の課題整理と今後の展望
0.
本節では、現時点でわかっている本研究の課題と、今後の展望について纒 める。
1.
現状の課題の整理
まず、郊外の定義として 1906 年に施行された鉄道国有法で対象となった 駅は近世市街地であると捉えたが、厳密には鉄道国有法の対象駅でも近世市 街地とはいいがたい市街地もある。具体的には、立川・藤沢・柏駅などがあ たる。あるいは、橋本駅のように乗換え可能な駅どうしの開業年度に大きな 隔たりのある駅もあり、こうした特性を踏まえた分析が望まれる。
また、商店をが出するために『座標付き電話帳 DB テレポイント』を用いたが、
データの特性上、遍在店に比べて固有店のデータの網羅性が低いことが懸念 されるので、データソースの補強が望まれる。
加えて、本研究ではナショナル・チェーン店とローカル・チェーン店を区 別せず遍在店として扱っているため、そうした違いも考慮すべきだと考えら れる。
2.
今後の展望
まず、よりミクロな視点から、たとえば遍在店と固有店の発生確率をロジ スティック回帰分析によって論じることが考えられる。
また、店舗面積が 50000㎡を超えるような巨大ショッピングモールの影響 を加味することも有益だと思われる。
あるいは、遍在店の店舗数の増加する速度が〈娯楽店〉と〈生活店〉で異 なることを理論モデルによって立証することも意義深いと考えられる。