本論文では,慢性炎症性の自己免疫疾患である関節リウマチと慢性 C 型肝炎を対象に,
経済的および利便性の観点から患者や医師に望まれる経口投与可能な低分子阻害薬の創出 を目的に研究を行った。
第2章では,関節リウマチを対象とした炎症だけでなく骨変形にも効果が期待される CSF-1R阻害薬の創薬研究を行った。キナーゼ阻害薬の開発研究ではキナーゼ選択性が重要なポ イントとなるので,キナーゼ選択性が高いType II阻害薬であるGW2580をシード化合物と してキナーゼ選択性を維持しつつオリジナル構造の取得と薬理活性の向上を目的に研究を 行った。その結果,キナーゼ選択性と薬理活性が高いユニークなアゼチジン骨格を有する化
合物 (S)-23b を創出した。(S)-23bはマウスCIAモデルにおいても有効性を示したことから,
経口投与可能な関節リウマチ低分子治療薬として期待できた。また,キナーゼ選択性が高く
in vivo評価で高い有効性を示すことから,関節リウマチ以外のCSF-1Rが関与する疾患の研
究においても適切なツール化合物としての利用が期待される。
第3章では,慢性C型肝炎を対象としたHCVの増殖を直接阻害可能なHCVポリメラー ゼ阻害薬の創薬研究を行った。著者が所属するグループで既に取得していたベンゾイミダ ゾール系化合物 26 をシード化合物として,replicon 細胞での RNA 複製阻害活性向上を目 的に研究を行った。その結果,HSAを添加したreplicon細胞でのRNA複製阻害評価で高い 阻害活性を示す新規四環性化合物 64 を創出した。この新規四環性骨格の発見はHCVポリ メラーゼ阻害薬の研究を加速させた。
本論文の二つの創薬研究では,共通する二つのステップから構成される複合体構造情報 を利用した新規構造の効率的な探索法を用いた。
ステップ 1 として,タンパク質と結合する時の化合物のコンフォメーションへの剛直化 を指向する化合物設計を実施した。その結果,CSF-1R阻害薬の創薬研究ではシード化合物 と比較してCSF-1Rのhinge部との水素結合の数が減少したにもかかわらず同等の酵素阻害 活性を示す新規骨格を見出した。HCV ポリメラーゼ阻害薬の創薬研究ではシード化合物と 比較してHCV ポリメラーゼ酵素および replicon 細胞でのRNA複製阻害活性が向上した新 規骨格を見出した。このように,タンパク質と結合する時の化合物のコンフォメーションへ の剛直化を指向する化合物設計は,新規骨格を探索するステップにおいて非常に効果的で あることを実証した。
ステップ 2 として基本骨格の複合体構造情報を利用して効率的に置換基導入することに より薬理活性向上と物性改善を達成した。本研究の過程で,結合ポケット周辺の水分子を考 慮した置換基導入が化合物設計に重要であることを認識した。化合物設計の段階から水分 子のエネルギーや挙動について考慮すれば,さらに効率的な創薬研究が行えたと考えられ た。現在,計算機の計算能力は日進月歩であるので,今後の SBDD では計算機化学を利用
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して水分子のエネルギーや挙動について十分に考慮する化合物設計がますます発展し,効 率的な創薬研究が可能となることが考えられる。
このように本論文では,化合物がタンパク質に結合する時の化合物のコンフォメーショ ンへの剛直化を利用した新規骨格の探索を実施して,慢性炎症性の自己免疫疾患である関 節リウマチと慢性 C 型肝炎を対象とした経口投与可能な新規低分子治療薬の起点となり得 るユニークな新規化合物を創出した。
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Experimental Section
Synthetic procedure and analysis data
General methods 69
第2章 70
第3章 94
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