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単一障壁モデルのバンド構造と第2量子化による非平衡量子輸送のモデ

ドキュメント内 論文要旨 (ページ 77-81)

第 5 章 共鳴トンネルダイオードの非線形性詳細モデル構築のための理論解析 65

5.2 単一障壁モデルのバンド構造と第2量子化による非平衡量子輸送のモデ

図5-1に、バンドギャップの異なる2つの化合物半導体により単一障壁を作った価電子 帯バンド図を示す。この系における全エネルギーを第2量子化の枠組み内で表現すると、

H =H0+HT (5-1)

66 第5章 共鳴トンネルダイオードの非線形性詳細モデル構築のための理論解析 H0 =∑

k

E1ka1ka1k+∑

l

E2la2la2l (5-2)

HT =

k

l

(

M1k,2la1ka2l+M2l,1ka2la1k )

(5-3) となる。ここで、添え字の番号は領域を表現し、aおよびaはそれぞれ消滅・生成演算 子、E はエネルギー、M は遷移行列要素である。このモデル化はトンネル現象を、1領域 の任意の状態(k状態)から、2領域の任意の状態(l状態)への遷移と表現している。ま た式5-3の符号が負となっているのは、1領域と2領域を単一障壁を介して結合したこと により生じる相互の電子のやり取り(遷移)が、系全体を平衡状態(安定状態)へと移行 することになる。つまり、遷移(HT)は系のエネルギーを減らすことになるため、符号 が負となっている。

ここで我々が知りたいのは系の時間的な応答であるため、各領域・状態の電子の時間変 化から電子に対するレート方程式を導出する。そのためにハイゼンベルグの方程式、

dAˆ dt = j

ℏ[H,A]ˆ (5-4)

を導入する。ここでAˆは演算子、H はハミルトニアン、[H,A]ˆ はハミルトニアンH と演 算子Aˆの交換関係である。1領域、k状態にある電子に起こり得る現象として主に次の2 つが考えられる。

1. k からk へと波数が変化する(領域内遷移)

5-1 単一障壁モデルの伝導帯バンド図

5.2 単一障壁モデルのバンド構造と第2量子化による非平衡量子輸送のモデル化と定式化 67 2. kから2領域のlへと電子が遷移する(領域間遷移)

これらの現象を表わす新たな演算子を、生成・消滅演算子を用いて表現すると、

1. 領域内遷移:a1ka1k 2. 領域間遷移:a2la1k

となる。そのため、例えば領域内遷移の時間変化をハイゼンベルグの方程式(式(5-4))

によって表現すると、

da1ka1k dt = j

ℏ[H, a1ka1k] (5-5) となる。次にこの式を展開するわけだが、ハミルトニアン H = H0 +HT であるため、

H0HT に分けて式展開していく。

1. [H0, a1ka1k]の計算 [H0, a1ka1k] =∑

k′′

E1k′′[a1k′′a1k′′, a1ka1k] +∑

l

E2l[a2la2l, a1ka1k]

=∑

k′′

E1k′′

(

a1k′′a1k′′a1ka1k−a1ka1ka1k′′a1k′′

)

=∑

k′′

E1k′′

( a1k′′

(

δk′′k−a1ka1k′′

)

a1k−a1k (

δkk′′−a1k′′a1k )

a1k′′

)

=∑

k′′

E1k′′

(

a1k′′a1kδk′′k−a1k′′a1ka1k′′a1k

−a1ka1k′′δkk′′+a1ka1k′′a1ka1k′′

)

=E1ka1ka1k−E1ka1ka1k

= (E1k −E1k)a1ka1k  (5-6) ここで、2行目から3行目への展開には反交換関係 {A, B} = AB +BA および {am, an}=δmnの関係を用いた。

2. [HT, a1ka1k]の計算 [HT, a1ka1k] =

k′′

l

(

M1k′′,2l[a1k′′a2l, a1ka1k] +M2l,1k′′[a2la1k′′, a1ka1k] ) (5-7) ここで右辺第一項と第二項を別々に展開すると、

右辺第一項=

k′′

l

M1k′′,2l[a1k′′a2l, a1ka1k]

68 第5章 共鳴トンネルダイオードの非線形性詳細モデル構築のための理論解析

=

k′′

l

M1k′′,2l

(

a1k′′a2la1ka1k−a1ka1ka1k′′a2l

)

=

k′′

l

M1k′′,2l

(−a2la1k′′a1ka1k−a1k (

δkk′′−a1k′′a1k )

a2l )

=

k′′

l

M1k′′,2l

(−a1ka2lδkk′′+a1ka1k′′a1ka2l )

=

l

M1k,2l

(−a1ka2l )

=∑

l

M1k,2la1ka2l (5-8)

右辺第二項=

k′′

l

M2l,1k′′[a2la1k′′, a1ka1k]

=

k′′

l

M2l,1k′′

(

a2la1k′′a1ka1k−a1ka1ka2la1k′′

)

=

k′′

l

M2l,1k′′

( a2l

(

δk′′k−a1ka1k′′

)

a1k+a1ka1ka1k′′a2l )

=

k′′

l

M2l,1k′′

(

a2la1kδk′′k−a2la1ka1k′′a1k

)

=

l

M2l,1ka2la1k (5-9)

が得られる。そのため、[HT, a1ka1k]は、

[HT, a1ka1k] =∑

l

(

M1k,2la1ka2l−M2l,1ka2la1k )

(5-10) となる。

以上より、領域内遷移a1ka1k の時間変化は、式(5-6)および(5-10)より、

da1ka1k

dt = j

ℏ[H, a1ka1k]

= j

{

(E1k−E1k)a1ka1k+∑

l

(

M1k,2la1ka2l−M2l,1ka2la1k ) }

(5-11) が得られる。また、ここまでと同様の手順を領域間遷移a2la1kの時間変化に関しても、

da2la1k dt = j

ℏ {

(E2l−E1k)a2la1k

k

M1k,2la1ka1k+∑

l

M1k,2la2la2l (5-12) のように導出可能である。そしてこの系の動作を解析するためには、2領域に関しても 同様の手順で遷移の時間変化を導出し、全ての k およびl に関する連立方程式を解けば よい。

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