第 5 章 共鳴トンネルダイオードの非線形性詳細モデル構築のための理論解析 65
5.6 最適化理論を用いた非線形等価回路要素の同定手法の確立
86 第5章 共鳴トンネルダイオードの非線形性詳細モデル構築のための理論解析 さければpbest を更新する。
pbesti =
x(k+1)i
( η
( x(k+1)i
)
< pbesti
) pbesti
( η
( x(k+1)i
)
> pbesti
) (5-89)
gbesti = min
i η(pbesti) (5-90)
step 3)k =k+ 1とし、k <KMAX の条件を満たしている間step1〜2を繰返す。
step 4)k =KMAX となったら探索は終了され、その時のgbestがその探索領域内で の大域的最適解となる。
しかしこのアルゴリズムからも分かるように、KMAX や粒子数M などによって発見
したgbestが探索領域内の大域的最適解であるとは断定できない。このような問題はメタ
ヒューリスティクス最適化手法全般に言えることであり、PSOではこの問題を解決する ためにstep0〜4の作業をLoop回試行し、この試行によって得られたLoop個のgbestの 中でも最も最適な解を大域的最適解としている。
5.6.2 粒子群最適化理論を用いた非線形等価回路要素の同定手法
前節で説明したPSOを非線形等価回路要素の同定手法へと適用する。非線形等価回路 要素の同定は5.5節と同様に、等価回路と測定データのフィッティングにより行う。ここ でフィッティングは、測定データと等価回路で計算される周波数特性との誤差が小さく なるように等価回路要素の値を最適化するという最適化問題として考えられる。つまり PSOで用いる最適化度を計算する評価関数η(x)は誤差関数となる。また前節の等価回路 検証時に課題点であった等価回路要素の実効的トンネルレート ν の関係性を考慮するた めに、フィッティングによって決定するパラメータを等価回路要素ではなく実効的トンネ ルレート ν とした。これにより測定データから実効的トンネルレートν を抽出すること が可能となり、RTDの高周波特性の決定要因を明らかにすることに役立つ。
図5-13にPSOを用いたRTDの実効的トンネルレート抽出手法のフローチャートを示 す。まずPSOの試行回数Loopと更新回数KMAX、重みパラメータw、各実効的トンネ ルレートνi(i = 1,2,3)の上限 Rmax と下限Rmin、解空間内に配置する探索点数M を 決める。ここで実効的トンネルレートの探索範囲[Rmin, Rmax]=[105, 1026]とした。次 に実効的トンネルレートを抽出したいバイアス電圧を決め、その電圧での小信号測定デー タを取得する。そして初期位置および初期速度を区間[Rmin, Rmax]の中に一様乱数を用 いて与える。しかし実効的トンネルレート探索範囲は[105,1026] と非常に広いため、一 様乱数を用いて探索点を配置することが困難である。そこで、探索点の配置を規格化し た探索範囲 [rmin, rmax]内で行い、評価関数によって最適値を求める際に元の探索範囲 [Rmin, Rmax]へと変換することとした。ここで規格化範囲[rmin, rmax]内の任意の位置
5.6 最適化理論を用いた非線形等価回路要素の同定手法の確立 87
図5-13 PSOを用いたRTDの実効的トンネルレート抽出手法フローチャート
をxi、元の探索範囲[Rmin, Rmax]内の任意の位置をXiとすると、
Xi = 10αi (5-91)
αi = xi−rmin
rmax−rmin·(log10Rmax−log10Rmin) + log10Rmin (5-92) という変換式が得られる。次にPSOを用いてKMAX 回、探索点の速度と位置を更新す る。そしてこれらの作業をLoop回試行し、その中で最も最良なものを大域的最適解とし、
この最適解がバイアス電圧Vbiasにおける実効的トンネルレートνi(V)となる。以上の作 業をバイアス電圧を変更して行うことで、実効的トンネルレート νi のバイアス電圧依存 性を得ることができる。
88 第5章 共鳴トンネルダイオードの非線形性詳細モデル構築のための理論解析
0.2
Cq+Cdep
Cq+Cdep
Lq Cq+C
Lq
dep
図 5-14 PSO を用いた実効的トンネルレート抽出手法による小信号測定結果と
TBRTD等価回路のフィッティング結果
図5-14に評価関数η(x)を、
η(x) =∑
ω
(
Re(Ytheory(x, ω)−Ymeasured) Re(Ymeasured)
+
Im(Ytheory(x, ω)−Ymeasured) Im(Ymeasured)
)
(5-93) とした時のバイアス電圧Vbias = 0.238 Vでのフィッティング結果を示す。(a)、(b)共に 横軸は周波数であり、縦軸はそれぞれアドミッタンス関数の実部と虚部である。フィッ ティング条件は、試行回数Loop = 150、更新回数KMAX = 150、探索点数M = 200、 規格化範囲[rmin, rmax]=[-5,5]、重みパラメータw= 0.729とした。またYtheory として 低周波近似した等価回路(図5-7)としていない等価回路(図5-6)を用いた時の理論曲 線を示してある。結果として、実効的トンネルレートによって等価回路要素を関係付ける と、今回測定した InGaAs/InAlAs TBRTDは低周波近似した等価回路では、測定した アドミッタンスの虚部を表現できないことが分かった。一方、電子密度レート方程式から 導出された等価回路では実部、虚部共に測定結果を精度よく表現できることが明らかと なった。
そこで等価回路に図5-6で示したものを用いた時の測定データから抽出された実効的 トンネルレートを示す。図 5-15に実効的トンネルレートの抽出精度を示す。横軸を式
(5-93)で計算される最適化度、縦軸を各試行回数によって抽出された実効的トンネルレー
5.7 結論 89