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周波数コム生成器

ドキュメント内 論文要旨 (ページ 59-66)

第 4 章 共鳴トンネルダイオードを用いた広帯域・高出力波源に向けた理論解析 45

4.2 周波数コム生成器

4-1 報告されている注入同期を用いたアレイ化アンテナ集積RTD発振器のデバイス構成[108]

れている。1つはRTDのピーク電流密度を大きくし、且つアンテナと RTDのマッチン グ整合を最適化する方法[105]。もう1つはアンテナ集積RTD発振器の放射電磁波を空 間電力合成する方法である[103]。しかし1つ目の方法では発振周波数と出力にトレード オフの関係が生じてしまうことが報告されている。そこで本研究では2つ目の方法であ る放射電磁波の空間電力合成に着目した。しかしこの方法でも課題点がある。アンテナ集 積RTDの発振周波数は、アンテナやRTDの構造揺らぎによって変化してしまうため、

効率的に放射電磁波の空間電力合成を行うことができない。そのため波源の発振周波数を 同期する必要がある。この発振周波数を同期させる方法として注入同期を導入した報告が ある [106, 107, 108, 109]。しかしこの報告で用いられた結合素子は図4-1に示すような 複雑な構造をしており、必ずや周波数特性を有している。そして結合素子の周波数特性に よって、周波数コムという広帯域な発振特性を有する波源の注入同期は困難な可能性があ る。そこで本研究では周波数コム生成器の結合素子に抵抗を用いた注入同期特性の解析を 行った。

4.2 周波数コム生成器

図4-2に自己補対ボウタイアンテナ集積RTDを用いた周波数コム生成器のデバイス構 成および等価回路を示す。このデバイスは第2章で示した自己補対ボウタイアンテナ集積 RTDと基本構成は同じである。異なる点はLE という外部インダクタンスがRTDと負

48 第4章 共鳴トンネルダイオードを用いた広帯域・高出力波源に向けた理論解析

4-2 自己補対ボウタイアンテナ集積RTDの周波数コム生成器のデバイス構成およ び等価回路モデル

荷抵抗RLの間に挿入されている。このようなデバイス構成にした理由は、第2章のデバ イス構成ではチョークインダクタンスLC が、発振周波数制御と電源側への高周波信号の 混入抑制という2つの役割を担っている。そのため発振周波数の高周波化と、高周波信号 の混入量との間にトレードオフの関係が生じてしまい、設計を複雑化させてしまう。そこ で外部インダクタンスLEを挿入することで、チョークインダクタンスLC は高周波信号 混入抑制、LEを発振周波数制御とすることで、設計の簡易化を図っている。

この周波数コム生成器の導出した微分方程式を以下に示す。

dvRT D

dt = 1 CRT D

(ia−iRT D) (4-2)

dvst

dt = Rst

LC (

Vb−Rbib−LC

diE

dt −vst

)

(4-3) dvC

dt = 1

Crad(iE−ia) (4-4)

dib dt = 1

LC

(Vb −Rbib−vst) (4-5)

diE

dt = 1 LE

(

vst−RradCraddvC

dt −vC )

(4-6)

4.2 周波数コム生成器 49 dia

dt = 1 La

(

vC +RradCrad

dvC

dt −Raia−vRT D

)

(4-7) ここでチョークインダクタンスLC の値を決めるために、バイアス回路部分の電流i(t) のリプル率を解析した。図4-3にLC =時のバイアス回路での電流i(t)を示す。電流i(t) は、RTD部の発振によってリプルが生じる。このリプルは実際のデバイスでは電源部の 不安定性に繋がり、電源の不安定性は発振の不安定性(周波数・強度・位相揺らぎ)を生じ させてしまう。そしてこれらは無線通信品質を低下させ、通信容量の低下につながってし まう。そのためリプルを小さくするためにLC を大きく設計するのが望ましいが、LC を 大きくすると発振周波数に影響してしまう。そこでリプル率と発振周波数f1st のチョー クインダクタンスLC 依存性を調べた。またリプル率は、

Ripple= Ipeak−IDC

IDC ×100 [%] (4-8)

IDC =Ia+ RaIa+VRT D

RL (4-9)

である。図4-4にリプル率と発振周波数f1st、放射パワーPrad のチョークインダクタン スLC 依存性を示す。横軸はチョークインダクタンスLC、(a)は縦軸にリプル率、(b)は 発振周波数f1st、(c) 放射パワーPrad を示している。結果として、ここで解析したチョー クインダクタンスの値ではリプル率はおよそ 1.2 %以下となった。また発振周波数f1st もほとんど変化しなかった。しかし放射パワーPrad に関しては、LC = 1010H程度よ り大きくなると下がってしまうことが分かった。この結果からチョークインダクタンス LC = 10−11Hとした。

図4-5に周波数コム生成器の理論解析結果を示す。(a)および(b)はLE = 1nHの時、

(c)および(d)はLE = 0.1nHの時、(e)および(f)はLE = 0.01nHの時の放射電圧波形 および放射パワースペクトルを示している。結果として放射電圧波形がパルス状となり、

そのスペクトルは周波数コム特性が得られた。また基本波周波数f1stは、外部インダクタ ンス LE とRTDのキャパシタンスCRT D によっておおよそ決定していることが分かっ た。等価回路の放射部(Rrad およびCrad)がRTDから見ると微分回路とみなすことが できる。そのため放射電圧vrad とRTDの両端電圧vRT D の関係は、vrad ∝dvRT D/dt となる。ここでRTDが自励振動モードとなっていると、vRT D は高調波成分を多く含ん でおり、矩形波に近い。この時vrad は矩形波を微分したときに近いパルス状の波形が得 られる。また自己補対ボウタイアンテナが広帯域にわたって一定のインピーダンスとなっ ているため、高周波成分まで放射できる。以上のことから、自己補対ボウタイアンテナ集 積RTDは周波数コム生成器として働く。

ここで図4-6に、放射電圧波形vrad の基本波周波数f1stの外部インダクタンスLE お よび負荷抵抗RL依存性を示す。横軸を負荷抵抗RL、縦軸を外部インダクタンスLE

50 第4章 共鳴トンネルダイオードを用いた広帯域・高出力波源に向けた理論解析

4-3 LC = 1013Hの時のバイアス回路での電流i(t)

し、カラースケールによって基本波周波数f1st を示した。結果として、基本波周波数f1st はおおよそf1st = 1/2π

LECRT Dで決定していることが明らかとなった。

次にこの周波数コム生成器の変調特性に関して理論解析した。変調方式は発振を”On”、 非発振を”Off”としたOn-Off Keying (OOK)変調であり、ベースバンド信号はバイアス 電圧の変化によって入力する直接変調方式を用いた。バイアス電圧の変化をベースバンド 信号とするため、チョークインダクタンスLC や外部インダクタンスLE などの影響によ り、発振状態に至るのに遅れ時間が生じ、周波数コムによる変調が困難となる可能性があ る。さらに”Off”状態の電圧も遅れ時間の要因になる可能性がある。そこで”Off”状態電 圧をRTDの両端電圧がVof f = 0,0.3,0.6,0.9V とした時の変調解析を行った(図4-7参 照)。図4-8にRL = 20Ω、LC = 0.015nHとした時の、伝送容量100Gbit/sのOOK変 調の理論解析結果を示す。(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれVof f = 0、0.3、0.6、0.9Vの時 の解析結果である。またこの時、”On”状態の発振周波数f1st = 455GHzである。結果と

して 100Gbit/sの変調であっても周波数コムを用いて十分変調可能であることが分かっ

た。また”Off”状態電圧Vof f によって”On”状態や”Off”状態の切り替わり時にオーバー シュートが生じることが分かった。そこでこのオーバーシュートが収束するまでの時間が 変調可能ビットレートに与える影響を解析するために、立ち上がり時間、立ち下がり時間 を以下のように定義した。立ち上がり時間τriseは、”On”状態となった点から以下の条件

4.2 周波数コム生成器 51

4-4 リプル率と発振周波数f1st のチョークインダクタンスLC依存性。(a)リプル 率、(b)発振周波数f1st(c) 放射パワーPrad

が満たされる点までの時間とした。

|v(i)p −vpstable|<(

1−e1)

vpstable (4-10)

もしくは

|v(j)v −vstablev |>(

1−e1)

|vvstable| (4-11)

ここでvpi は”On”状態時のi番目の極大値電圧、vstablep は発振が落ち着いた時の極大値電 圧(”On”状態の一番最後の極大値電圧)、vjvは”On”状態時のj番目の極小値電圧、vvstable は発振が落ち着いた時の極小値電圧(”On”状態の一番最後の極小値電圧)である。また 立ち下がり時間τf all は、”Off”状態となった点から以下の条件が満たされる点までの時間 と定義した。

|v(i)p −vpstable|< e−1vstablep (4-12)

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4-5 周波数コム生成器の理論解析結果。(a)LE= 1nH時の放射電圧波形、(b)LE = 1nH時の放射パワースペクトル、(c)LE = 0.1nH時の放射電圧波形、(d)LE = 0.1nH 時の放射パワースペクトル、(e)LE = 0.01nH時の放射電圧波形、(f)LE= 0.01nH の放射パワースペクトル。

4.2 周波数コム生成器 53

4-6 周波数コム生成器の外部インダクタンスLEおよび負荷抵抗RLを変化させた 時の発振周波数マッピング

もしくは

|v(i)v −vvstable|> e1|vstablev | (4-13) 図4-9に立ち上がり時間τrise および立ち下がり時間τf all の”Off”状態電圧Vof f 依存性 を示す。Vof f が小さい時はオーバーシュートが大きく生じるため、τriseおよび τf all に 時間を用してしまう。ここで最大変調可能ビットレートClimitを、

Climit = 1

τrise+τf all+T1st (4-14)

と定義すると、Vof f = 0.9V の時におよそClimit = 200Gbit/sとなった。

54 第4章 共鳴トンネルダイオードを用いた広帯域・高出力波源に向けた理論解析

4-7 周波数コム生成器のOOK変調時のバイアス電圧変化

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