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ホットトリミングされた鋼板の遅れ破壊

ドキュメント内 中川 佑貴 (ページ 82-88)

第 6 章 超高強度鋼部材のホットスタンピングにおける切口面性状および機械的特性に

6.4. ホットトリミングされた鋼板の遅れ破壊

6.4.1. 陰極水素チャージ試験方法

トリミング温度が低下すると遅れ破壊が生じる可能性がある.そこで陰極水素チャージ試 験によって,遅れ破壊の起点となるクラックの発生に及ぼすトリミング温度の影響を調査し

w

Widthw[mm]

11.8 12.0 12.2 12.4

12.6 Die

Trimming temperatureT[ºC]

0 100 200 300 400 500 600 700 800 20%

10%

c= 7%

(b) c= 10%

Trimming temperatureT[ºC]

0 100 200 300 400 500 600 700 800

Depth percentage [%]

10 20 30 40 50 60 70 80 90

100 Rollover

Burnished Fracture

Burr

(c) c= 20%

Trimming temperatureT[ºC]

0 100 200 300 400 500 600 700 800 Depth percentage [%]

10 20 30 40 50 60 70 80 90

100 Rollover

Burnished Fracture

Burr (a) c= 7%

Trimming temperatureT[ºC]

Fracture

Depth percentage [%]

10 20 30 40 50 60 70 80 90

100 Rollover

Burnished

Burr

0 100 200 300 400 500 600 700 800

た.陰極水素チャージ試験方法および試験条件をFig. 6.7に示す.作用電極に鋼板,対極に 白金電極,参照電極に銀塩化銀電極を配置し,3%NaCl+3g/LNH4SCN溶液中で,-1.0Vの電 位を48時間作用した.溶液量は約1100mLとし,試験時の温度は室温とした.

Fig. 6.7. Setup for cathodic hydrogen charging test.

陰極水素チャージ試験による鋼板への侵入水素量をFig. 6.8に示す.水素チャージされた

50×50mm の試験片の全面を#600 のエメリー紙で湿式研磨してめっきを除去後,アセトン

にて超音波洗浄して分析に供した.測定にはアルバック製ST-200P特型を用い,測定条件は

昇温速度10 ˚C/s,温度範囲は室温から600 ˚Cとした.また,比較としてpH1.0の塩酸溶液

中で 96 h 水素チャージした鋼板についても測定を行った.遅れ破壊の発生に関与するとさ

れる室温から300 ˚Cでの水素量は陰極水素チャージが1.20 ppm,塩酸浸漬が0.20 ppmだっ た.

Fig. 6.8. Hydrogen desorption kinetics of trimmed part for thermal desorption method.

6.4.2. クラックの発生に及ぼすトリミング温度の影響

クラックの発生に及ぼすトリミング温度の影響をFig. 6.9に示す.全てのクリアランスに

おいてT = 420˚C以上でクラックが発生しなかった.陰極水素チャージ試験後の切口面をFig.

6.10に示す.クラックは破断面に生じており,トリミング温度が低いほど割れの数や長さが 増加した.クラックの発生はトリミング温度に依存するが,クリアランスは影響しなかった.

また比較のために,炭酸ガスレーザー切断した試験片も水素チャージしたがクラックは発生 しなかった.

Fig. 6.9. Effect of trimming temperature on occurrence of crack.

Fig. 6.10. Surface of sheared edge of ultra-high strength parts before and after cathodic hydrogen charging test.

Trimming temperatureT[ºC]

0 100 200 300 400 500 600 700 800

Clearancec[%]

5 10 15 20

No crack

c = 10%におけるトリミングされた鋼板の破断面の引張残留応力をFig. 6.11に示す.トリ ミング温度が高くなるほど周方向,板厚方向ともに残留応力が減少している.板厚方向では,

T = 400˚C以上において残留応力は冷間トリミングされたそれの半分以下に低減しており,

約600˚Cではほぼ0になった.420˚C以上でクラックが生じなくなったのは,引張残留応力

が減少したためである.

Fig. 6.11. Relationship between tensile residual stress on fracture surface and trimming temperature for c = 10%.

c = 10%における切口面近傍の硬さ分布を Fig. 6.12 に示す.T = 785˚C において,硬さは

400HV0.1以下にまで低下している.Matsunoら[77]は750˚Cでのホットトリミングにおいて

切口近傍にフェライト組織が存在することを示しており,硬さが低下した原因である.フェ ライトは靭性の高い組織であることから,遅れ破壊の起点となるクラックの発生が防止され ている.

Fig. 6.12. Hardness distribution near sheared edge for c = 10%.

Distance from sheared edge x[µm]

100 200 300 400 500 600

0 100 200 300 400 500

Vickers hardness [HV0.1]

421 ºC 785 ºC T= 25 ºC x

Trimming temperatureT[ºC]

Tensile residual stress[MPa]

0 100 200 300 400 500 600 700 800 200

400 600 800 1000 1200 1400 1600

Longitudinal direction

Thickness direction

切口面近傍断面の金属組織をFig. 6.13に示す.トリミング温度が高いほど,流動線の傾き が垂直に近づいており,大きな塑性変形を受けている.

Fig. 6.13. Microstructures of sheared edge for c = 10 %.

c = 10%における鋼板切口面の表面粗さをFig. 6.14に示す.トリミング温度が高くなるほ

ど,破断面の粗さは大きくなった.T = 420˚C以上においてクラックが生じないことから,

クラックの発生に及ぼす表面粗さの影響は小さい.

Fig. 6.14. Relationship between surface roughness of sheared edge and trimming temperature for c

= 10%.

0 100 200 300 400 500 600 700 800 2

4 6 8 10

Arithmetic average of roughnessRa[µm]

Trimming temperatureT[ºC]

Fracture

Burnished

6.5. ホットトリミングされた鋼板の強度に及ぼすクラックの影響

ドキュメント内 中川 佑貴 (ページ 82-88)