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第 7 章 結言

7. 結言

本論文では,パラメータ変動のある機械系の運動と振動の制御に対して,構 造的誤差を考慮するH制御理論を用いる方法をモデリングから統合的な手法 を提案した.機械系の基本性能である目標値への追従性,即応性,外乱により 発生する振動の抑制,無視した高次モードによるスピルオーバ回避を満たすH

ロバストサーボ系を構築し,本手法の有効性をシミュレーションにより検証し た.以下に,各章ごとに得られた知見を示す.

第2章では,本研究のモデリング手法として用いた低次元化物理モデル作成 法について説明し,さらにそれを拡張した運動と振動を表現することのできる モデル作成方法について説明した.低次元化物理モデルでは,モデリングポイ ントを最大振幅点とすることで,振動特性を良好に再現することがでた.また,

この手法では振動モード形と質量を集約する点の等価質量がわかれば実施でき るので,有限要素法などの数値解析法,実験モード解析法などの振動計測法の いずれでも可能であり,応用範囲が広く今後の発展性が期待できる.また,柔 軟体モデルは剛体モデルには干渉しないという前提条件より,剛体モードと振 動モードの実パラメータをシステムにそのまま適応することがでる.

第3章では,本研究で用いるH制御理論について説明した.この理論では,

制御対象モデルやシステムに生じるモデル誤差や外乱などを制御系設計時に考 慮することで,実際の制御対象に外乱が生じても,制御性能の安定性が補償さ れ制御性能の劣化を回避することができる.本研究では,制御対象を物理モデ ルとして表すので,無視した高次モードによりスピルオーバが発生する可能性 が生じる.これをH制御問題に一つである非構造的不確かさに関するロバスト 安定化問題として考えることで,スピルオーバを回避することができると考え られる.また,機械系に搭載されるペイロード搭載にによって生じる変動を,

構造的不確かさに関するロバスト安定化問題と考える.こうすることで,従来 の制御方法では一つのコントローラは一つの制御対象しか明確に安定性が保証 されていなかったが,本手法では複数の制御対象に対して安定性を補償するこ とができると考えられる.これにさらにロバストサーボ系に適応させることで,

運動の制御に求められる基本特性を満たすことができると考えられる.

第4章では,本手法を機械系に適用する手順について,手順の概要をシンプ ルな例にして提示した.パラメータの変動する機械系についてモデリングする べき状態の選定,モデリング時の留意点を示し,制御器にパラメータ変動によ る誤差を組込む手法を述べた.さらに,運動の制御について,機械系の基本性 能である目標値への速やかな追従,定常偏差の改善手法について提案した.ま た、モデリング時に無視した非構造的誤差によって制御が不安定になるのを防

止する手法も制御器に組み込んだ.以上により、構造的誤差、非構造的誤差を 考慮し運動の制御も高性能に行う制御器が導出可能である.例はシンプルなも ので示したが,実際の機械系に対しても,考え方はなんら変わることはない.

本手法は,同様に一般的な機械系に適用可能である.

第5章では,本研究の手法を検証するため,柔軟ロボットアームへの適用例 を示した.ロボットアームでは姿勢を変化させたときに生じるアームの慣性モ ーメントの変化を物理モデルのパラメータが変化する.その変化を考慮した制 御器を導出した.用いる制御対象構造物を示し,それを低次元化物理モデル作 成法を用いてロボットアームは、2自由度集中定数系物理モデルに低次元化す る.作成した物理モデルの妥当性を検証した結果,実機とモデルの振動特性が よく一致していることが確認された.また,運動を表現するアクチュエータモ ードは,シミュレーションと実機で一致している.これは,本研究で作成した アクチュエータモデルが,積分特性を持った近似式を用いて作成しているので,

モデルでも定常偏差が発生せず,精度の高いモデルであると考えられる.さら に,本研究では,D行列をあえて付加し,パラメータを調整することにより慣 性モーメントの影響等により発生した誤差を小さくし,モデルの精度の向上を 行った.これより,精度の良い運動と振動を表現する物理モデルが作成できた ものと思われる.作成したモデルを用いて,構造的不確かさを考慮したH制御 理論を適用し,ノミナルモデルと変動モデルの両方を制御対象とする制御器を 作成した.目標値追従性やスピルオーバに関しても,ローパスフィルタ,ハイ パスフィルタを配置することにより改善される.この結果より,本研究で作成 したコントローラはアームに変動が生じた場合でも同一コントローラで不安定 になることなく制御対象を良好に制御することができ,また制御対象装置に求 められる基本的な仕様を全て満たしていることを示した.

第6章では,本研究の手法を検証するため,並進的な動きをする昇降・走行 柔軟搬送装置への適用例を示した.搬送装置では,ペイロードの有無や,位置 の変化により物理モデルのパラメータが変動する.その変動を考慮した制御器 を導出した.用いる制御対象構造物を示し,それを低次元化物理モデル作成法 を用いて3自由度集中定数系物理モデルに低次元化する.作成した物理モデル の妥当性を検証した結果,実機とモデルの振動特性がよく一致していることが 確認された.作成したモデルを用いて,構造的不確かさを考慮したH制御理論 を適用し,ノミナルモデルと変動モデルの両方を制御対象とする制御器を作成 した.目標値追従性やスピルオーバに関しても,ローパスフィルタ,ハイパス フィルタを配置することにより改善される.この結果より,本事例で作成した コントローラはペイロードの有無,位置に変化が生じた場合でも同一コントロ ーラで不安定になることなく制御対象を良好に制御することができ,また制御

対象装置に求められる基本的な仕様を全て満たしていることを示した.

以上の例により,制御対象の機械系が,回転系の場合も並進系の場合も本手 法は有効であることが示された.これにより,一般的な柔軟機械系の多くをカ バーすることができるものであることが示された.本手法は,一般的な機械系 であれば,回転系,並進系問わず同様の手順でパラメータ変動を考慮した制御 器を導出できる.さらに,運動性能を損なうことなく,振動の制御も実現して いることも示した.よって,本手法は一般的な柔軟機械系に対して非常に有効 なスキームであると考えられる.

参考文献 著者論文目録

謝辞

参考文献

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