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5.1 はじめに

ここでは,本研究の適用事例として,3次元2リンクフレキシブルロボットア ームについて,モデリング,制御器設計,制御シミュレーション,制御実験ま でを述べる.ロボットアームは関節が稼動する以上,姿勢の変動に対してもロ バストである必要性がある.従来の方法ではロボットアームのひとつの姿勢の みのコントローラしか作成できず,姿勢が変動した場合の制御性能の変化につ いては考慮されていない.これでは,ロボットアームの姿勢が変動した場合,

コントローラが不安定になる可能性が生じてくる.そこで,本研究ではこの変 動を考慮した制御系設計手法を用いて複数のアーム姿勢を同時に制御すること のできるH∞制御器を作成する方法について説明する.

柔軟ロボットアームを第2章で説明した低次元化物理モデル作成法をもちい て2自由度集中定数系物理モデルに低次元化する.本研究では2つの物理モデ ルを用いる.一つ目は制御対象である柔軟ロボットアームの標準状態で肘関節 がまっすぐの状態,もうひとつはアームの肘関節が90度曲がった状態である.

本研究では,前者をノミナルモデル,後者を変動モデルと呼ぶ.

本章では,最初に本研究で用いる実験装置と制御対象の概要について説明す る.

次に,物理モデルを作成する.その手順は,まず制御対象を低次元化物理モ デル作成法を用いて低次元化し振動を表す物理モデルを導出する.次に,アク チュエータと平板を考慮した剛体モデルを作成する.その後,その2つを運動 方程式上で結合させ運動と振動を表す物理モデルを導出する.最後に,作成し たモデルの検証としてP制御を行い,物理モデルと制御対象の妥当性を検証す る.

2つのロボットアームの状態をモデリング化した後,そのモデルのパラメー タの差を構造的誤差として一般化プラントに組み込む.パラメータ変動を3.2節 のH∞標準問題として取り扱うことができ,内部安定性と式(3-6)を満たす制御 器を求めることができる.この方法を用いて,本事例は作成したノミナルモデ ルと変動モデルの2つを制御対象とし,この構造的誤差を考慮したH制御器を 設計していく.

肩関節から肘関節までを構成している平板を1STリンクとし,肘関節から先の 平板を2NDリンクとしている.また,本研究ではアクチュエータとしてACサ ーボモータを,センサとして変位センサ,加速度ピックアップ,ポテンショメ ータを使用している.使用する機材の仕様を以下に示す.

Fig.5-1 実験装置概要

・ACサーボコントロールユニット (肩関節)

型式 ハーモニックドライブ社製 HA-655-2 最大出力電流(rms) 7.3[A]

連続出力電流(rms) 2.4[A]

出力電圧 0~±10[V]

制御方式 正弦波PWM方式

・ACサーボコントロールユニット (肘関節)

型式 ハーモニックドライブ社製 HA-655-1 最大出力電流(rms) 3.2[A]

連続出力電流(rms) 1.0[A]

出力電圧 0~±10[V]

制御方式 正弦波PWM方式

・ハーモニックドライブ機能付きACサーボモータ(肩関節)

形式 ハーモニックドライブ社製 FHA-25C

定格出力 110[W]

最大トルク 230[Nm]

最大回転数 28[Nm/s]

誘起電圧定数 2.6[V/pm]

・ハーモニックドライブ機能付きACサーボモータ(肘関節)

形式 ハーモニックドライブ社製 FHA-11C

定格出力 110[W]

最大トルク 11[Nm]

最大回転数 60[Nm/s]

誘起電圧定数 1.6[V/pm]

・加速度ピックアップ

型番 小野測器製 NP-2110

感度 0.16pC/(m/s2)±2dB

静電容量 700pF±20%

周波数範囲 fc~20[kHz]±3[dB]

最大使用加速度 10000[m/s2]

質量 0.6[g]

・加速度ピックアップ用チャージアンプ

型番 小野測器製 CH-1200 最大入力電荷 50000[pC]

周波数応答特性 加速度 0.2[Hz]~50[kHz]±3[dB]

速度 3.0[Hz]~3[kHz] ±0.5[dB]

変位 3.0[Hz]~500[Hz]±1[dB]

精度 加速度 ±2[%]

速度 ±3[%]

変位 ±5[%]

最大出力電圧 ±5[V]

・変位センサ

型番(センサヘッド) キーエンス製 LK-080 型番(アンプユニット) キーエンス製 LK-2100

基準距離 80[mm]

測定範囲 ±15[mm]

分解能 3[μm]

電圧出力 ±5[V](3[μm/mV])

サンプリング周期 512[μs]

・ポテンショメータ

型番 日本電産コパル電子製 JC30S 有効電気的回転角度 343[deg]±5[deg]

機械的回転角度 360[deg] 連続

分解度 理論的に無限小

関数精度 ±0.5

定格電力 0.7[W]