第 6 章 結 言
心筋内局所に病変を発症する心臓疾患の代表として,心内膜下梗塞がある.このよう な疾患心臓の収縮性を全域的に評価すると,診断が困難な場合があるゆえ,壁厚方向の 局所性を考慮、して疾患心臓の収縮性を評価する必要がある.またそのためには,健常者 の心収縮性を局所的に評価して,その定量的基準値を得ることが不可欠で、ある.そのう え,疾患心臓の特異領域を局所的に特定するには,発生張力の局所的な低下が心収縮性 に与える影響を調査することが必要である.
そこで本研究では,はじめに,非侵襲的な計測手法であるMRIのtagging法を用いて,
正常心の左心室心筋壁収縮運動を定量的・局所的評価を試みるとともに,疾患心臓を評 価するための定量的基準値を得ることを目的とした.その結果,以下の知見が得られた.
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短軸断面における解析結果によって,左心室心筋はすべての領域において円周方 向に収縮して,その収縮量は心内膜 心外膜にかけて減少することがわかった.長軸断面における解析結果によって,左心室心筋はすべての領域において子午線 方向に収縮して,その収縮量は心内膜 心外膜にかけてほとんど均一であること がわかった.このことから,駆出期における左心室心筋壁運動は,心筋の壁厚方 向において不均一性を有していることがわかった.このことは,壁厚方向の局所 性を考慮して心収縮性を評価することの必要性を示唆するものである.
続いて,心機能評価シミュレーションシステムを用いて心筋の発生張力が局所的に低 下した疾患心臓をモデ、ノレ化することによって,発生張力の局所的な低下が心機能に与え
る影響を調査した.その結果,以下の知見が得られた.
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心筋内層あるいは心筋外層の発生張力が大きく低下すると子午線方向への収縮 量は心筋全層において減少して,反対に心筋中層の発生張力が低下すると,子午 線方向への収縮量は心筋全層において増加することがわかった.また心筋内層の 発生張力が低下すると,反時計回りのねじれが全層において強まり,反対に心筋 外層の発生張力が低下すると,反時計回りのねじれが全層において弱まることが わかった.以上のことは,子午線方向ひずみおよび左心室長軸まわりのせん断ひ ずみが,疾患心臓の特異領域を局所的に特定するための有用な力学量であること を示唆するものである.以上のことから,MRIのtagging~去を用いた心筋壁運動のひずみ計測結果と心機能評
価シミュレーションシステムを用いた心臓疾患を想定したひずみ解析結果を組み合わ せることは,疾患心臓の特異領域を局所的に特定するための一助となると考えられる.
三重大学大学院
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