• 検索結果がありません。

第 3 章 顔文字におけるあいまい性と多義性(実験 2)

3.3 結果

3.3.1 ペアの親しさの程度

参加者が回答したペア相手との親しさの程度によって,参加者を二つの群に分けた。ペ ア相手と仲が悪い(0点から4点)と回答した参加者はいなかった。そのため,仲が良くも

悪くもない(5点)と回答した参加者46名を親しさ低群とした。相手と仲が良い(6点から 10点)と回答した参加者38名を親しさ高群とした。

3.3.2 感謝に関する判断

実験はペアを組んで行ったが,全ての参加者は完全に同一の手続きで実験を行っている。

そのため,分析は個人単位で行った。

受信者役課題に関する結果から述べる。質問1では,各顔文字が添付されていると仮定し たときに,そのメールが「1.本当に感謝していると思う」と選択した回数が三つの場面のう ちいくつであるかを,参加者ごとに算出した。各群における各顔文字の平均選択比率をTable 3.2に示す。

Table 3.2 感謝を表すと判断された平均選択比率

親しさ 顔文字

喜び 怒り 悲しみ 驚き なし

低群 0.88 0.14 0.57 0.33 0.46

高群 0.82 0.32 0.65 0.39 0.42

平均選択比率について,顔文字の種類(4種類の顔文字と顔文字なしの5通り)×親しさ

(低群と高群の2群)の2元配置分散分析を行った。その結果,顔文字の種類の主効果(F(4, 328)=71.01, p < .01),顔文字の種類×親しさの交互作用が有意であったが(F(4, 328)=

2.73, p < .05),親しさの主効果は有意ではなかった(F(1, 82)= 1.70, n. s.)。顔文字の種 類については,両群とも「1.本当に感謝していると思う」の平均選択率が最も高い顔文字は 喜び顔文字であり,次いで悲しみ顔文字であった。交互作用について,Bonferroni法による 多重比較を行った結果,怒り顔文字においてのみ有意差が認められ(p < .01),親しさ高群 の方が親しさ低群に比べて,文末への怒り顔文字添付に対して,「1.本当に感謝していると 思う」という判断が多かった。

3.3.3 最も感謝が伝わると判断された顔文字

受信者役課題の質問2に関しては,各顔文字が「相手が本当に感謝していることが,最も わかる顔文字」として選択された回数が三つの場面のうちいくつあるかを,参加者ごとに 算出した。各群における各顔文字の平均選択比率をTable 3.3に示す。

顔文字の種類×親しさの2元配置分散分析を行った結果,顔文字の種類の主効果のみが有 意であり(F(4, 328)= 127.63, p < .01),親しさの主効果と交互作用は有意ではなかった(F

(4, 328)= 0, n. s. ; F(4, 328)= 0.23, n. s.)。両群とも,「最も感謝していることがわかる

二つの顔文字及び顔文字なしの選択はほとんどなされなかった。

Table 3.3 最も感謝を表すと判断された平均選択比率

親しさ 顔文字

喜び 怒り 悲しみ 驚き なし

低群 0.68 0 0.22 0.05 0.04

高群 0.67 0 0.26 0.03 0.04

3.3.4 最も感謝していないことが伝わると判断された顔文字

受信者役課題の質問3に関しては,各顔文字が「相手が本当は感謝していないことが,最 もわかる顔文字」として選択された回数が三つの場面のうちいくつであるかを,参加者ご とに算出した。各群における各顔文字の平均選択比率をTable 3.4に示す。

Table 3.4 最も感謝を表さないと判断された平均選択比率

親しさ 顔文字

喜び 怒り 悲しみ 驚き なし

低群 0.04 0.44 0.07 0.14 0.31

高群 0.07 0.28 0.04 0.24 0.39

顔文字の種類×親しさの2元配置分散分析を行った。その結果,顔文字の種類の主効果(F

(4, 328)= 23.34, p < .01),顔文字の種類×親しさの交互作用は有意であったが(F(4, 328)

=2.79, p < .05),親しさの主効果は有意ではなかった(F(1, 82)= 1.78, n. s.)。交互作用に

ついて, Bonferroni法を用いた多重比較を行った結果,怒り顔文字において有意差が認めら

れ(p<.05),親しさ低群の方が親しさ高群よりも,「最も感謝していないことがわかる顔 文字」に対する平均選択比率が高かった。

最も平均選択比率が高かったのは,親しさ低群では怒り顔文字であったが,親しさ高群 では顔文字なしであった。

3.3.5 送信者としての顔文字選択

送信者役課題の結果について,本音伝達,嘘隠蔽,皮肉伝達という三つの伝達目標ごと に顔文字の平均選択比率を算出した。平均選択比率についての親しさによる効果が認めら れなかったため,親しさの両群をまとめた結果をTable 3.5に示す。

本音伝達条件では喜び顔文字が半数以上の参加者で選択されており,次いで悲しみ顔文 字の選択比率が高かった。嘘隠蔽条件では,本音伝達条件と同様に,喜び顔文字が最も多

く選択されたが,次いで顔文字なし,驚き顔文字が選択された。怒り顔文字と悲しみ顔文 字はともに平均選択率が低かった。皮肉伝達条件では驚き顔文字が最も多く選択された。

他の3種類の顔文字及び顔文字なしの平均選択比率は,驚き顔文字に比べて低かった。

Table 3.5 伝達目標ごとの顔文字の平均選択比率

伝達目標 顔文字

喜び 怒り 悲しみ 驚き なし 本音伝達 0.70 0 0.24 0 0.06

嘘隠蔽 0.61 0.02 0.05 0.15 0.17

皮肉伝達 0.17 0.18 0.12 0.33 0.20