第2章 英熟語学習における学習インターフェースによる学習効果の検討(実験1)
第3節 結果と分析
第4項 実験手続き
① 準備:口頭で実験説明が行われ,その後,参加者が無作為に同数の2グループ(実験 群,統制群)に分けられた。それぞれに合致した実験説明書が配付され,参加者は説明書 を注意深く読むように促された。質問が受け付けられた。Test 1が両グループに配られた。
② セッション1(Test 1):統制群,実験群,同時にテストが開始された。
(7分)
③ 休憩:Test 1が回収され,学習教材が配付された。統制群には紙教材が配られ,実験群 は,説明書に記載されたURLをタイプして学習教材掲載のウェブサイトにアクセスし,学 習の準備をした。(3分)
④ セッション2(学習):統制群,実験群,同時に学習が開始された。(7分)
⑤ 休憩:統制群の紙教材が回収され,実験群はコンピュータ画面のスイッチを切った。
Test2が両グループに配られた。(3分)
⑥ セッション3(Test 2):統制群,実験群,同時にテストが開始された。
(7分)
⑦ 実験後調査:Test 2回収後,参加者は,両教材に対する自由記述のコメントを求められ た。紙教材で学習をした統制群は,コンピュータ教材を使ってみるよう指示された。
第3節 結果と分析
若干の違いがあるもののほぼ差がないことを示唆している。
Table 1. Mean of Test 1: humanities major
Group Mean SD N
Experimental 2.39 1.48 70
Control 2.17 1.46 70
t = -0.74
Table 2. Mean of Test 2
Group Mean SD N
Experimental 13.46 4.15 70 **
Control 11.64 4.47 70
t = 2.47 **p < .01
Figure 14. Mean of Test 1 and Test 2
Figure 15. Score distribution of Test 1
Figure 16. Score distribution of Test 2
第2項 自由記述によるコメント
自由記述による参加者のコメントには,紙教材を好む意見が多く,
1) 紙での学習に慣れているので紙教材の方がよい 2) 何かを覚える場合には書きながら学習したい 3) コンピュータ教材は目が疲れる
等があげられた。コンピュータ教材を好む理由としては,
1) ゲームをしているようで楽しい
2) クリックで1つの解答が現れるため,他の解答と混同しなくてよい,
3) コンピュータは紙教材より勉強の動機が高まる などがあった。
上述の事後テストの平均点とt検定の結果に反して,学習者はコンピュータ教材にはやや ネガティブな意見を持っていることが窺える。しかし,動機づけに関しては,コンピュー タ教材の方が有効だとしている。これは,第1章の実践研究で得られたものと一致してお り,コンピュータ教材には動機づけを高める何らかの要因が内在すると考えられる。また,
中学校などでは,英単語を覚える時は書いて覚えるように指導されていることから推測さ れるが,何かを覚えるときには書きながら学習したいという,書字学習を好む学習者が多 くいたことも,このコメントから得られる学習方略に対する一つの特徴であろう。書字学 習の効果に関しては,第8章と第9章で,紙教材と書字学習を組み合わせて学習した場合 と,コンピュータ教材を使って目視学習をした場合を比較し,検証する。
第3項 効果量
言語学習に関する研究論文誌Language Learningの投稿要領(Author Guidelines)では効果 量(Effect Sizes)の報告が必須であり,APA(American Psychological Association)の Publication Manual第5版(2001)では,“… it is almost always necessary to include some index of effect size or strength of relationship in your Results section.” (p.25) と,効果量の報告の必要性が強調され ている(レビューとして,水本&竹内,2008)。従来の検定方法においては,サンプルのデ ータから母集団の平均値差を推定する推測統計の考え方を利用しているため,サンプルサ イズ(実験参加者数)が多くなればなるほど,統計的に有意であるという結果になりやす い,という問題点がある。そこで,サンプルサイズによって変化することのない,標準化
された指標である効果量を用いることが推奨されている。
効果量を表す指標は大きく2種類に分けることができる。d familyと呼ばれる,グループ ごとの平均値の差を標準化した効果量と,r familyと呼ばれる,変数間の関係の強さを示す 効果量がある。本実験では,実験群と統制群のデータの平均値を比較しているので,d family の1つであるCohen’s dを使って効果量を求める。計算式は,
d X
1 X
2S
pであり,本実験での結果を計算すると,Test 1はd=.13で効果量なし,Test 2はd=.42で効果 量は小さい,と判定された。これは,標準偏差を単位として平均値がどれだけ離れている かを表しており,つまり,学習前の事前テストでは,実験群(コンピュータ教材)と統制 群(紙教材)の差はないが,実験後のテストではわずかな差が認められる,ということで ある。したがって,紙教材とコンピュータ教材の差は極めて小さいということになる。
尚,以下の実験では,(ES: d=xx)という形で効果量を記すこととする。