4.2.1 合成
ベンゾホスホールのリン原子を修飾した4-7を合成した (Figure 4-2) 。2とdimethyl sulfide
borane を反応させることで 4 を、Lawesson 試薬を反応させることで 5 を得た。 また、1 と
chloro(dimethylsulfide)gold (I) を反応させることで6を、methyl trifluoromethanesulfonateを 反応させることで7を得た。5と6については、開環体を高分解能質量スペクトルで測定し、HPLC で単離した閉環体について1H NMRおよび31P NMR測定を行うことで目的物の生成を確認した。
7については、開環体の高分解能質量スペクトル測定により目的物の生成を確認した。4は合成直 後に行ったTLC及び31P NMR測定では1や2と異なる結果が得られ、4の生成が示唆された。
しかし、HPLCによる精製後に再度31P NMR測定を行ったところ、合成直後には見られなかっ た副生成物と思われるピークが確認された。また、このサンプルを4日後に再度測定したところ、
副生成物と思われるピークの強度が増加していることが確認された。これらの結果は、精製段階 および空気中において4が副反応を起こすことを示している。
Figure 4-2 4-7の合成経路
- 50 - 4.2.2 溶液中でのフォトクロミズム
5-7 の有機溶媒中でのフォトクロミズムについて紫外・可視吸収スペクトルにより検討した
(Figure 4-3) 。 5aおよび6aのアセトニトリル溶液は、無色であり紫外領域に吸収を示した。7a
のアセトニトリル溶液は薄黄色であり、400 nm 付近まで吸収が確認された。これらの極大吸収 波長は、5aで298 nm ( = 5.4×103 L mol−1 cm−1), 6aで299 nm ( = 5.0×103 L mol−1 cm−1), 7a
で316 nmであった。これらの溶液に紫外光 ( = 313 nm) を照射するといずれの溶液も赤色に
着色し、可視領域に閉環体に由来する新たな吸収帯の生成が確認された。これらの吸収帯の極大 吸収波長は、5bで515 nm, 6bで515 nm, 7bで514 nmであった。着色後の5-7の溶液は、可視 光 ( > 440 nm) の照射により完全に退色し、開環体と同様の吸収スペクトルに戻った。このよ うに、5-7は有機溶媒中において可逆的なフォトクロミズムを示した。
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Figure 4-3アセトニトリル中での5 (a), 6 (b), 7 (b) のフォトクロミズム 黒実線:開環体, 赤実線:紫外光照射後
a)
b)
c)
- 52 - 4.2.3 リン原子の修飾による水溶性への影響
リン原子の修飾によりイオン性を有する7について、水溶液中でのフォトクロミズムを紫外・
可視吸収スペクトルにより検討した (Figure 4-4) 。開環体7aは蒸留水中において薄黄色であり、
400 nm付近まで吸収が確認された。この吸収帯の極大吸収波長は318 nmであった。この溶液に
紫外光 ( = 313 nm) を照射すると赤色に着色し、可視領域に閉環体に由来する新たな吸収帯の 生成が確認された。この吸収帯の極大吸収波長は510 nmであった。また、この溶液は可視光 (
> 440 nm) の照射により退色した。このように、7はベンゾホスホール基のイオン性により水溶
性が向上し、水溶液中でも有機溶媒中と同様にフォトクロミズムを示した。ただし、可視光照射 後も完全には元の開環体の吸収スペクトルに戻らなかったことから、光照射による副反応の進行 が示唆された。
Figure 4-4 水中での7のフォトクロミズム
黒実線:開環体, 赤実線:紫外光照射後, 橙色実線:可視光照射後
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