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4-1 成長したCNT薄膜の評価

4-1-1 MWCNTのSEM観察による評価

3章で述べた方法により,Feを1 nm堆積したSiO2基板上に,図3-2-3に示 す CVD 条件に従って MWCNT を成長させた。CNT の熱伝導特性に対する

MWCNT膜厚依存性を測定するため,CVD時間を変化させて成長を行った。図

4-1-1 (a),(b),(c),(d)はそれぞれCVD時間1.5 min,2 min,5 min,10 min でSiO2基板上に成長したMWCNTのSEM断面像である。全てのMWCNTが 基板上に垂直配向している様子が確認できた。CVD 時間の変化に対して MWCNT膜厚をプロットしたグラフを図4-1-2に示す。CVD時間5分で僅かに 減少するが,CVD 時間に対してほぼ直線的に比例して MWCNT の成長量は増 加した。CVD時間1.5 min未満ではMWCNTは成長しなかった。

また,Si 基板上でも同様に Fe を 1 nm 堆積し,CVD 時間を変化させて MWCNT成長を行った。図4-1-3 (a),(b),(c),(d)にそれぞれCVD時間1 min,

2 min,5 min,10 min でSi 基板上に成長したMWCNT の SEM断面像を示 し,図4-1-4はMWCNT膜厚のCVD時間依存性を示す。SiO2基板と同様,全

ての MWCNT で垂直配向成長が確認できた。CVD 時間に対して,直線的に比

例してMWCNTの成長量は増加した。Si基板上でのMWCNT成長では,SiO2

基板上に成長した MWCNT よりも厚く成長した。CVD 時間 1 min 未満では

MWCNTは成長しなかった。

(a) (b)

(c) (d)

図4-1-1 SiO2基板上に成長したMWCNTのSEM像,

(a)CVD時間1.5 min,(b)CVD時間2 min,(c)CVD時間5 min,

(d)CVD時間10 min

図4-1-2 SiO2基板上に成長したMWCNTのCNT膜厚のCVD時間依存性

(a) (b)

(c) (d)

図4-1-3 Si基板上に成長したMWCNTのSEM像,(a)CVD時間1 min,

(b)CVD時間2 min,(c)CVD時間5 min, (d)CVD時間10 min

図4-1-4 Si基板上に成長したMWCNTのCNT膜厚のCVD時間依存

4-1-2 SWCNTのSEM観察による評価

3-3節で述べた実験方法により,SWCNTをSiO2基板上に成長させた。CVD 中のチャンバ内圧力を6.0×103 Paから10.0×103 Paまで変化させて成長した SWCNTの断面SEM像を図4-1-5に示す。成長したSWCNTはSiO2基板上に 垂直配向成長している様子が確認できた。圧力変化に対してSWCNT 膜厚をプ ロットしたグラフを図4-1-6 に示す。圧力の増加に伴い SWCNT 膜厚が増加し ており,10.0×103 Paで平均12.9 µmのSWCNTが成長した。

(a) (b)

(c) (d)

図4-1-5 SiO2基板上に成長したSWCNTのSEM像,

(a)CVD圧力6.5×103 Pa,(b)CVD圧力8.0×103 Pa,

(c)CVD圧力9.0×103 Pa, (d)CVD圧力10.0×103 Pa

図4-1-6 SiO2基板上に成長したSWCNTのCNT膜厚のCVD圧力依存性

4-1-3 CNTのTEM観察による評価

成長したMWCNTとSWCNTのTEM像を図4-1-7に示す。MWCNTは数 層のCNTから構成され,SWCNTは単層のCNTで構成されていることが観察 できた。MWCNTの直径は8.0 ± 2.0 nm,SWCNTの直径は3.0 ± 1.0 nm であった。

図4-1-7 CNTのTEM像,(a)MWCNT,(b)SWCNT

4-2 CNT薄膜の熱伝導特性評価

4-2-1 熱伝導のCNT薄膜による影響 SiO2基板に成長したCNT薄膜の熱伝導

熱CVD時の金属触媒としてFeを 1 nm堆積したSiO2基板上に,垂直配向

成長したMWCNT薄膜(膜厚 32 µm)の熱伝導特性を,前述で示した方法で

測定したときの,時間に対する温度変動を図4-2-1(a)に示す。T1,T2は金属棒,

T3はSiO2基板,T4は金属台の温度である。測定したそれぞれの温度から求め た熱流束qに対する温度差ΔT (=T1 –T3)をプロットしたものを図4-2-1(b)に示 す。グラフの傾きΔT/qは,CNT薄膜無しの SiO2基板では1.03[図 4-2-1(b)

の”w/o CNT”]に対し,32 µmのMWCNTが垂直配向成長したSiO2基板では

0.35に減少している。ΔT/qの値は熱伝導率の逆数1/λに比例する値である熱 抵抗Rを反映した値を表すため,小さな値であるほど熱伝導特性が良いという ことを示す。従って,MWCNT薄膜を介することで熱伝導特性が向上するとい うことを表す。これはCNT薄膜を金属棒とSiO2基板の間に挿入したことによ り,接触界面の密着性の向上により接触熱抵抗が減少し,ヒーターからより多 くの熱流がSiO2基板へ伝わったためである。

図4-2-1 Feを1 nm堆積したSiO2基板上に垂直配向成長した膜厚32 µmの MWCNTの熱伝導特性評価,(a)時間に対する温度変動,(b)熱流束qに対する

温度差ΔT (=T1 –T3)のCNT薄膜無しのSiO2基板との比較

Si基板に成長したCNT薄膜の熱伝導

熱CVD 時の金属触媒としてFe を1 nm 堆積したSi 基板表面上に,垂直配 向成長したMWCNT薄膜(CNT膜厚 46 µm)の熱伝導特性を図4-2-2に示す。

図4-2-2(a)は時間に対する温度変動,図4-2-2(b)は熱流束qに対する温度差ΔT (=T1 –T3)のCNT薄膜無しのSi基板との比較を示す。ΔT/qの値はCNT薄膜無 しのSi基板では0.91[図4-2-2(b)の”w/o CNT”]に対し,MWCNTが成長した Si基板では0.59であった。SiO2基板での測定結果と同様,CNT薄膜無しの基 板と比べてMWCNTが成長した基板のΔT/qの値は小さい。MWCNT成長基板 の種類によらず,MWCNT薄膜を介することで金属棒-基板間の熱伝導が促進さ れることがわかった。

図4-2-2 Feを1 nm堆積したSi基板上に垂直配向成長した膜厚46 µmの MWCNTの熱伝導特性評価,(a)時間に対する温度変動,(b)熱流束qに対する

温度差ΔT (=T1 –T3)のCNT薄膜無しのSi基板との比較

4-2-2 CNT薄膜構造による熱伝導特性の比較

CNT 薄膜の構造が熱伝導に与える影響を調べるため,SiO2 基板上に成長し たMWCNT(膜厚8~32 µm),SWCNT(膜厚2~12 µm),Fe@CNT(膜厚9~12 µm)の熱伝導特性を測定した。MWCNT とFe@CNT は熱CVD の際の金属触 媒として,それぞれFeを1 nm,Feを2 nmを堆積したSiO2基板を用いて成 長した。測定したΔT/qの値をまとめたものを図4-2-3に示す。グラフにプロッ トした値は,MWCNTは4サンプル,SWCNTは5サンプル,Fe@CNTは2サ ンプルを測定した平均値である。また比較試料として,熱伝導率6 W/m-Kの放 熱グリス(Bullet 製,SG05)を SiO2基板上に薄く乗せ,金属棒で挟みこんで 測定した結果を示す。全てのCNT薄膜において,CNT薄膜無しのSiO2基板と 比較してΔT/qの値は小さく,すべてのCNT薄膜において,熱伝導が促進され ることが確認された。また CNT 構造の違いによる熱伝導の違いに注目すると,

Fe@CNT は僅かに小さな値を示すものの,その違いは顕著ではない。これら

CNT薄膜のΔT/q値は,熱伝導率の公称値6 W/m-Kの放熱グリスの測定値と近 い値を示すことから,CNT薄膜の熱伝導率は,この放熱グリスの熱伝導率と同 等の値であると考えられる。

図4-2-3 SiO2基板上に成長したMWCNT(膜厚8~32 µm), SWCNT(膜厚2~12 µm),Fe@CNT(膜厚9~12 µm)と CNT薄膜なし(w/o CNT),放熱グリス(6 W/m-K)の熱伝導特性の比較

4-2-3 MWCNT薄膜の熱伝導におけるCNT膜厚依存性 SiO2基板上に成長したCNTの熱伝導特性

様々な膜厚のMWCNTの熱伝導特性を測定し,CNT膜厚が熱伝導に与える 影響を調べた。測定試料として,触媒金属にFe を1 nm堆積したSiO2基板上 に垂直配向成長した,CNT膜厚8~551 µmのMWCNTを用いた。MWCNTの 膜厚に対するΔT/q の値をプロットしたものを図 4-2-4 に示す。膜厚 8 µm の MWCNTではΔT/qの値は0.37であるのに対し,膜厚551 µmのMWCNT で は0.83に増加した。CNT膜厚が増加するにつれて,ΔT/qの値は比例して増加 することがわかった。

図4-2-4 SiO2基板上に垂直配向成長したMWCNTにおける ΔT/qのCNT膜厚依存性

Si基板上に成長したCNTの熱伝導特性

SiO2基板上に垂直配向成長した MWCNT における熱伝導の CNT 膜厚依存 性について前述したが,CNTを成長させる基板による影響を調べるため,同様 の測定を Si 基板上に成長した MWCNT でも行った。測定試料として,触媒金 属にFeを1 nm堆積したSi基板上に垂直配向成長した,CNT膜厚3~532 µm のMWCNTを用いた。MWCNTの膜厚に対するΔT/qの値をプロットしたもの を図4-2-5に示す。膜厚3 µmのMWCNTではΔT/qの値は0.53であるのに対 し,膜厚551 µmのMWCNTでは1.04に増加した。CNT膜厚が50 µm付近で 0.8 程度の高い値を示すサンプルがあるものが観られる。全体としては SiO2基 板上に成長した CNT 薄膜同様,CNT 膜厚が増加するにつれてΔT/q の値は増 加する傾向が観られるが,SiO2基板の場合のような,両者の間に明瞭な比例関 係は観られず,0〜200 µmにおいてはΔT/qがCNT膜厚によらずほぼ一定にな っている様子が確認される。100 µm以下の小さな膜厚において,ΔT/q値のば らつきが大きい。同程度の膜厚で比較すると SiO2基板上に成長した膜厚 8 µm のMWCNTではΔT/qは0.37であるのに対し,Si基板上に成長した膜厚3 µm のMWCNTでは0.53と高い値を示した。この結果から,Si基板上に成長した

MWCNT が SiO2基板上に成長したものと同程度の結晶性を有すると仮定する

ならば, CNT-SiO2界面と比べて CNT-Si 界面の接触熱抵抗が大きいというこ とが示唆される。

図4-2-5 Si基板上に垂直配向成長したMWCNTにおける ΔT/qのCNT膜厚依存性

4-3 CNT薄膜の熱伝導特性改善

4-3-1 MWCNT薄膜上に堆積した金属薄膜による熱伝導への影響

CNT薄膜の熱伝導において,CNT-金属棒間の接触熱抵抗改善のため,CNT 表面上に真空蒸着装置により金属薄膜を堆積し,熱伝導特性を測定した(図 4-3-1)。測定には,触媒金属としてFe を 1 nm 堆積したSiO2上に垂直配向成長 したMWCNTに,Fe,Al,Niをそれぞれ20 nm堆積した試料を用いた。Fe,

Al,Ni を堆積したMWCNTのCNT膜厚はそれぞれ,55±0 µm,25±7 µm,

59±14 µmである。図4-3-2に金属薄膜を堆積したMWCNT先端の断面SEM 像を示す。それぞれ測定したΔT/qの平均値を図4-3-3に示す。比較試料として,

金属薄膜を堆積していない様々な膜厚のMWCNTの測定結果を示す。同程度の 膜厚に対して比較すると,MWCNT に金属薄膜を堆積するとΔT/q の値は増加 し,熱伝導特性は悪化することがわかった。

図4-3-1 MWCNT薄膜上への真空蒸着装置による金属箔膜形成の模式図

(a) Fe on MWCNT (b) Al on MWCNT

(c) Ni on MWCNT

図4-3-2 金属薄膜を堆積したMWCNT先端のSEM像,

(a)Feを20 nm堆積したMWCNT(CNT膜厚55±0 µm), (b) Alを20 nm堆積したMWCNT(CNT膜厚25±7 µm), (c) Niを20 nm堆積したMWCNT(CNT膜厚59±14 µm)

図4-3-3 金属薄膜(Fe,Al,Ni;20 nm)を堆積したMWCNTのΔT/qの比較

4-3-2 CNT薄膜のバッファ層による熱伝導への影響

CNT薄膜の熱伝導における,CNT-CNT成長基板表面の間の接触熱抵抗改善 のために,熱CVDによるMWCNT成長時の,触媒金属の影響について調べた。

ここでは,Ti をバッファ層としてFe とSiO2基板の間に形成して MWCNT を 成長し,熱伝導特性を測定した。SiO2基板上にTiを5 nm堆積した後,Feを1 nm堆積し,熱CVDによりMWCNT成長を行った。成長したMWCNTの断面 SEM像を図4-3-4に示す。CNT膜厚は5.0±0.6 µmであった。2サンプルの熱 伝導特性を測定し,算出したΔT/qの平均値を図4-3-5に示す。比較試料として,

Feを1 nm堆積したSiO2基板に成長した様々な膜厚のMWCNT のΔT/qを示 す。同程度の膜厚での値を比較すると,バッファ層ありとなしには大きな違いは なく,バッファ層を堆積したことによる熱伝導への影響はほとんどないことが わかる。

図4-3-4 Fe 1 nm / Ti 5 nm / SiO2基板上に成長したMWCNTのSEM像

図4-3-5 SiO2基板上に垂直配向成長したMWCNTのΔT/qにおける 熱CVD時のバッファ層(Ti)の影響

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