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結合構造の種類

ドキュメント内 岡 本 卓 (ページ 53-56)

第 2 章 非線形力学系モデルによる大域的最適化手法 6

3.2 結合構造の種類

離散時間結合系を考えるあたって,まず,連続時間結合振動子系ついて考える.一般に,

連続時間系のN 変数結合振動子系は dxp(t)

dt =fp(xp(t)) +cΓ({xj(t)},xp(t)), p= 1,· · ·, P (3.1) として定式化される.ここで,Γは結合構造を表し,p番目の振動子dxp(t)

dt =fp(xp(t)) は周期的1であるとする.また,以降特に記さない限り,結合振動子の数はPであり,p= 1,· · ·, Pは省略するものとする.Γで代表される結合構造とは,個体空間内における任意の 1つの個体に対して一定の「近傍」が定義できた上で,この近傍内の他の個体との「情報交 換」を行う構造として定義する.ここで,xpの近傍内の個体xqとの情報交換は,x∈RN 上のノルムを利用して

1この周期には,カオス軌道の無限周期も含まれる

順情報交換:特定の個体が近傍内のすべての個体の状態に近づく情報交換

minxp G(xp;xq) =d∥xpxq∥, d >0 (3.2)

逆情報交換:特定の個体が近傍内のすべての個体から状態から離れる情報交換 minxp G(xp;xq) =−d∥xpxq∥, d >0 (3.3)

中立情報交換:特定の個体が近傍内のすべての個体の状態と一定の距離hを保つ情 報交換

minxp G(xp;xq) =d(xpxq∥ −h)2, d >0, h >0 (3.4) と,最小化演算を用いて定義される[60].そして,これら情報交換が各振動子に対して与え る影響は,G(xp;xq)の逆勾配−∇G(xp;xq)として与えられる.本論文では,非線形振動 子の同調現象を利用した最適化モデルを構築することを目標とするので,これら情報交換 のうち,特定の個体が結合相手と近づく情報交換を行う「順情報交換」に対して主に重点 を置いて議論を進める.この情報交換の下で,結合構造は,近傍の定義の仕方により「ト ポロジーによる結合」「距離による結合」「序列による結合(エリート結合)」とに分類す ることができる.

3.2.1 トポロジーによる結合

トポロジーによる結合は,各個体を個体番号をもとにM次元位相空間に格子状に配置 し,近傍をこの位相空間上の隣り合う格子点と定義する結合である.ここで,M次元位相 空間は円環状,すなわち,それぞれの境界同士がつながっているものとする.たとえば,

M = 1とした場合は,個体xpに対する近傍はxp±1となり,M = 2とした場合,格子点 配置が









(1,1) · · · (1, p2) · · · (1, P2) ... . .. ... . .. ... (p1,1) · · · (p1, p2) · · · (p1, P2)

... . .. ... . .. ... (P1,1) · · · (P1, p2) · · · (P1, P2)









, whereP1+P2=P

となるから,個体xp=(p1,p2)に対する近傍はxq=(p1±1,p2±1)となる.さらに,これら近傍に 対して片側近傍を採用した場合を「対流結合」,両側近傍を採用した場合を「拡散結合」と よぶ.ここで,M = 1の下で,ノルムとしてxpxq=∑

(xpi −xqi)2をとり,d= 1/2 とする.このとき,対流結合によって順情報交換を行う結合構造は

Γ({ xj(t)}

,xp(t)) =−∇G(xp(t);xp+1(t)) =xp+1(t)xp(t) (3.5) となり,いわゆる「最近接対流結合構造」が得られる.また,d= 1/4として,拡散結合 によって順情報交換を行う結合構造は

Γ({ xj(t)}

,xp(t)) =−∇G(xp(t);xp+1(t),xp1) = xp+1(t)xp1(t)

2 xp(t) (3.6)

となり,いわゆる「最近接拡散結合構造」が得られる.なお,堀江らは文献[61]において,

反応拡散系とよばれる拡散型偏微分方程式

∂xi(r;t)

∂t =Fi(x(r;t)) +Di2xi(r;t), i= 1,· · · , N (3.7) において,反応項Fi(x(r;t))を勾配系に限定し,拡散係数Diを成分によらず一定にした モデル

∂xi(r;t)

∂t =−∂E(x(r;t))

∂xi

+D∇2xi(r;t) (3.8)

から,Turingの拡散近似を用いることで,(3.1)式のダイナミクスfp(xp(t))に勾配系モデ ルをとり,結合構造Γに最近接拡散結合構造をとったダイナミクス

dxpi(t)

dt =−∂E(xp(t))

∂xpi +c (

xp+1i (t)−xpi1(t) 2 −xpi

)

(3.9) を導出している.

3.2.2 距離による結合

距離による結合は,近傍個体を,各個体間の距離に基づいて決定する結合である.具体 的には,ある個体pに対する結合対象個体q

q = argmin

r

orargmax

r {∥xrxp∥ |r = 1,· · · , P} (3.10) によって決定する.このような近傍定義を用いる例としては,GAにおけるシェアリング 戦略[62]などをあげることができる.

3.2.3 序列による結合(エリート結合)

序列による結合は,近傍個体を,自身の過去の履歴,ないしは,個体群全体の現在・過 去の目的関数値の大小を考慮して決定する,最適化手法に特化した結合である.具体的に は,後述するPSOモデルに着想を得た

pbest (personal best)型個体:近傍個体を自身の過去の履歴を用いて定義 xppb(t) = argmin

xp(τ)

{E(xp(τ))|0≤τ ≤t} (3.11)

cbest (current best)型個体:近傍個体を個体群全体の現在時刻の状態を用いて定義

xcb(t) = argmin

xp(t)

{E(xp(t))|p= 1,· · · , P} (3.12)

gbest (global best)型個体:近傍個体を個体群全体の全時刻の状態を用いて定義

xgbpb(t) = argmin

xppb(t)

{

E(xppb(t))|p= 1,· · ·, P }

(3.13) をあげることができる.また,GAにおけるルーレット選択に着想を得た

ルーレット選択型個体:個体群全体の現在時刻の状態を用いて確率的に定義 近傍個体xq(t)を全個体からそれぞれ確率

pq(t) = Ewt(t)−E(xq(t))

P

r=1

{Ewt(t)−E(xr(t))} (3.14a)

wt= argmax

p {E(xp)|p= 1,· · ·, P} (3.14b) で決定する.

も考えることができる.これら序列による結合では,個体xpの結合対象となる個体は,他 の個体と結合することがないので,個体xpは,これら結合相手(エリート個体とよぶ)に 対して「移流結合」を形成することになる.3.2.1項と同様に,ノルムとしてxpxq=

∑(xpi −xqi)2をとり,d= 1/2とし,エリート個体xelと移流結合によって順情報交換を 行う結合構造は

Γ({ xj(t)}

,xp(t)) =−∇G(xp(t);xel(t)) =xel(t)xp(t) (3.15) となる.本論文では,この結合構造を「エリート型移流結合構造」とよぶ.

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