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各結合モデルの計算特性と同調現象

ドキュメント内 岡 本 卓 (ページ 59-63)

第 2 章 非線形力学系モデルによる大域的最適化手法 6

3.3 結合系の同調現象

3.3.3 各結合モデルの計算特性と同調現象

本項では,P対流結合型DGCM(3.23)式とPD対流結合型DGCM(3.29)式からの同調現 象発現について,数値シミュレーションと安定性解析を通して確認する.

簡単のために,P対流結合型DGCM(3.23)式とPD対流結合型モデル(3.29)式において P = 2とした場合を考える.このとき,(3.29)式において結合係数行列C

C1 = 1 1 + 2c

(

1 +c c c 1 +c

)

(3.30) と与えられる.P = 2としたP対流結合型DGCMと,(3.30)式を代入したPD対流結合型 モデルをベンチマーク問題Prob.7Original RastriginN = 1,付録A.2節を参照)へ適用 を通して,両結合モデル間の同調現象発現に対する効果の違いについて確認する.この適 用においては,離散化幅をカオス的探索軌道が発生する∆T = 0.02とし,これらモデルの 同調現象発現に対する結合係数依存性を示すために,結合係数cを,P対流結合型DGCM ではc∆T = 0.0 2.5,PD対流結合型DGCMではc= 0.02.5の間で変更しながらシ ミュレーションを行った.結果として,初期点をx1 = 3.9789, x2 =3.9789としたとき の1000∼1150ステップ間の各振動子の差x1−x2c∆T, cに対する分岐図をFig.3.1(a) とFig.3.1(b)に示す.Fig.3.1(a)をみると,cを大きい値に設定するとPD型結合モデルに よってカオス的同調現象が安定的に発現している様子がわかる.一方,Fig.3.1(b)をみる と,P型結合モデルのような不安定な結合モデルからは,カオス的同調現象が発現せず,c を大きくとるとむしろ両振動子間の距離の発散を引き起こしている.しかしながら,P型 結合モデルでもcを適当な値にとることができれば,振動子間の距離をある程度近づける ことには成功することがわかる.

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

0 0.5 1 1.5 2 2.5

21 xx

c

(a) PD–Convection Coupling Type DGCM – Eq.(3.29) (P = 2)

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

0 0.5 1 1.5 2 2.5

21 xx

c T

(b) P–Convection Coupling Type DGCM – Eq.(3.23) (P = 2)

Fig. 3.1 Bifurcation Diagrams of the Differences between Each Oscillator versusc∆T, c.

Objective funciton isProb.7(N = 1).

The initial point ofx1= 3.9789and the one ofx2=−3.9789.∆T = 0.02.

つぎに,同調現象発現のための結合係数cの条件について考える.まず,P対流結合型モデ ルについて考える.簡単のため,P型結合モデル(3.22)式においてP = 2, N = 1, c∆T →c として,結合構造Γとして最近接対流結合構造(3.5)式を採用した

x1(k+ 1) =g(x1(k)) +c(x2(k)−x1(k))

x2(k+ 1) =g(x2(k)) +c(x1(k)−x2(k)) (3.31) を考える2.任意のcに対して,同調状態x1(k) =x2(k)は,(3.31)式の特解になっており,

同調現象発現の条件を考えるにあたって重要なのは,その特解の安定性である.そこで,

同調状態をx(k) = x1(k) = x2(k)とおき,同調状態(特解)の安定性について考える.

x周りの点xp(k) =x(k) +δxp(k)を考え,同調状態においてxp(k+ 1) =g(x)になる ことを考慮してxp(k+ 1) =g(x(k)) +δxp(k+ 1)とすると

g(x(k))+δx1(k+1) =g(x(k)+δx1(k))+c{

x(k)+δx2(k)(x(k)+δx1(k))} g(x(k))+δx2(k+1) =g(x(k)+δx2(k))+c{

x(k)+δx1(k)(x(k)+δx2(k))} (3.32) が得られる.g(x(k) +δxp(k)) =g(x(k)) +dg(x(k))

dx δxp(k)であるから,結局,ずれの 運動方程式として

δx1(k+ 1) = dg(x(k))

dx δx1(k) +c(δx2(k)−δx1(k)) δx2(k+ 1) = dg(x(k))

dx δx2(k) +c(δx1(k)−δx2(k))

(3.33a)

から (

δx1(k+ 1) δx2(k+ 1)

)

=



dg(x(k))

dx −c c

c dg(x(k)) dx −c

 (

δx1(k) δx2(k)

)

(3.33b)

を得る.同調時刻からK時刻後の同調状態からのずれを考えるために,(3.33b)式の固有 値µ1, µ2と対応する固有ベクトルν1,ν2を求めると

µ1 = dg(x(k))

dx , µ2= dg(x(k))

dx 2c, ν1 = (

1 1

)

, ν2 = (

1

1 )

(3.34)

となるから,ベクトル(δx1(k), δx2(k))T を非ゼロの係数d1, d2を用いてν1,ν2の線形結合 に置き換えると

(

δx1(k+ 1) δx2(k+ 1)

)

=d1dg(x(k))

dx ν1+d2

(dg(x(k)) dx 2c

)

ν2 (3.35)

となる.これを(3.33)式に代入すると

2なお,以下の議論に関して,DGCMwTを用いた場合については,探索点が十分内部にある場合,すなわ ち,(3.23c)式ないしは(3.29d)式において,pi<x´pi < qiが採用される場合について考えるものとする

(

δx1(k+ 2) δx2(k+ 2)

)

=



dg(x(k+ 1))

dx −c c

c dg(x(k+ 1))

dx −c



× {

d1dg(x(k))

dx ν1+d2

(dg(x(k)) dx 2c

) ν2

}

(3.36) となることからわかるように,結合係数cに対するずれの時間発展に関しては,固有方向 ν2に関するリアプノフ指数

λ2 = lim

K→∞

1 K

k+K

l=k

ln¯¯

¯¯dg(x(l)) dx 2c¯¯

¯¯ (3.37)

の大きさが問題となる.すなわち,λ2 >0の場合は,同調状態からのずれは拡大するので 同調状態は不安定になるが,λ2<0の場合は,同調状態からのずれはゼロへ縮退するので 同調状態は安定になる.(3.37)式からわかるように,結合係数cを適当な値まで大きくと れば,より安定な同調現象発現を期待することができるが,大きくとりすぎるとλ2 >0と なるので同調状態が不安定になってしまう.したがって,同調現象発現のためにP型結合 モデルを用いることは,結合係数cを適当な値に調整する必要があることから,パラメー タ設定の複雑さを増すという意味で問題がある.

つぎに,PD対流結合型モデルについて考える.同様に簡単のため,PD型結合モデル

(3.28)式においてP = 2, N = 1として,結合構造Γとして最近接対流結合構造を採用した

(

x1(k+ 1) x2(k+ 1)

)

=C1 (

g(x1(k)) g(x2(k)) )

(3.38a)

C1 = 1 1 + 2c

(

1 +c c c 1 +c

)

(3.38b) を考える.同様に,同調状態をx(k) =x1(k) =x2(k)とおき,同調状態の安定性につい て考える.x周りの点xp(k) =x(k) +δxp(k)を考えると

(

g(x(k)) +δx1(k+ 1) g(x(k)) +δx2(k+ 1)

)

=C1 (

g(x(k) +δx1(k)) g(x(k) +δx2(k))

)

(3.39)

を得るから,g(x(k) +δxp(k)) =g(x(k)) +dg(x(k))

dx δxp(k)であることを利用して,ず れの運動方程式として

(

δx1(k+ 1) δx2(k+ 1)

)

= dg(x) dx C1

( δx1(k) δx2(k)

)

(3.40) を得る.したがって,同調状態からK時刻後の同調状態のずれは

(

δx1(k+K) δx2(k+K)

)

=

K

l=k

{dg(x(l)) dx

} (C1)K

( δx1(k) δx2(k)

)

(3.41)

となる.C1の固有値をµ1, µ2,対応する固有ベクトルをν1,ν2とおき,(δx1(k), δx2(k))T を非ゼロの係数d1, d2を用いてν1,ν2の線形結合に置き換えると

(

δx1(k+K) δx2(k+K)

)

=

K

l=k

{dg(x(l)) dx

}

(d1µK1ν1+d2µK2ν2) (3.42)

となる.ここで,µ1 = 1

1 + 2c, µ2 = 1であるので,同調状態の安定性は,リアプノフ指数 λ= lim

K→∞

1 K

k+K

l=k

ln¯¯

¯¯dg(x(l)) dx

¯¯¯¯ (3.43)

を用いて

λ+ ln ( 1

1 + 2c )

<0 exp(λ)

1 + 2c <1 (3.44)

が条件となって決定される.(3.44)式からわかるように,結合係数cを大きくとるほど,よ り安定な同調現象発現を期待することができる.なお,P = 2, N >1の場合については,

同様の議論を行うことは容易ではない.しかしながら,(3.40)式を (

δx1i(k+ 1) δx2i(k+ 1)

)

=C1

N j=1

{

∂gi(x(k))

∂xj (

δx1j(k) δx2j(k)

)}

(3.45)

に置き換えられることを考えると,P = 2, N > 1の場合にもcは同様の因子となると考 えられ,同様にcを大きくとれば安定な同調現象が発現すると期待される.

ドキュメント内 岡 本 卓 (ページ 59-63)